立ち上がり介助|ボディメカニクスを活用した6つのポイントを解説します!
立ち上がり介助が上手くできない…
本日のお悩み
半身麻痺の男性利用者の立ち上がり介助が上手くいかなく、悩んでいます。
両脇に手を置いて「1、2、3」の「3」で体を持ち上げるのですが、私がやるときだけ立ち上がれず困っています。
最初は上手くやれていたのですが、最近失敗のほうが多く、そのことが頭から離れません。
立ち上がり介助がうまくいくポイントなどについてアドバイスをよろしくお願いします。
執筆者/専門家
後藤 晴紀
https://mynavi-kaigo.jp/media/users/9
ご質問ありがとうございます。
半身麻痺の方の立ち上がり介助の方法ですね!
頭の中でイメージするのと、実際に行うのとでは、分かっているつもりでも、なかなか上手にサポートできないですよね。初めはうまくいっていたとのことですが、力任せに持ち上げていただけかもしれませんので、基本を押さえたうえでご自身で行っていた方法を振り返ってみてください。
私も仕事を始めたころはうまくできずに、悩んだ経験がございます。
ポイントごとに分けて、説明させていただきますね。
ボディメカニクスを活用した立ち上がり介助を行いましょう!
立ち上がり介助が上手くいかず悩まれているとのこと。おそらく立ち上がらせようという気持ちも強くなり、質問者さんの身体に大きな負担がかかっているはずです。また、介助者が負担に感じているとき、実は介護される側も負担を感じている場合が多いのです。
双方の負担を減らすための方法として身体力学を活用したボディメカニクスという介助技術があります。
介護技術の移乗動作や立位動作など、様々な場面で活用しますので、それぞれの活用方法などを今一度ご確認いただきたいと思います。
今回ご質問頂いた立ち上がり介助の主な場面では、
・介助者やご利用者の支持基底面積を広くとる
・大きな筋肉を使用する
・介助者の重心を低く落とし、重心移動でサポートする
等がポイントとなりますが…言葉だけで表すには難しい表現ですよね。
もう少しわかりやすくご説明しますね。
立ち上がり介助のポイント6つ!
では、早速ですが立ち上がり介助のポイントを6つに分けて紹介します。
立ち上がり介助のポイントは以下の通りです。
1.立ち上がるための同意を得る
2.利用者さんに浅く座ってもらう
3.『こちらの足を引いていただけますか?』など声かけをする
4.手前に引きあげるイメージで、立位動作を補助する
5.麻痺がある場合、麻痺側の膝折れを支える
6.苦痛などがないか観察、確認する
■1.立ち上がるための同意を得る
これから何のために立ち上がっていただくのか、利用者さんに説明をしましょう。
うなずくことや言葉での返答で、利用者さんに伝わっているかどうか確認ができると思います。
ご本人がこれから立ち上がることを理解していないうちに、力任せに持ち上げようとしてしまった場合は、ご本人は立ち上がるばかりか、怖さを感じて体に力を入れてしまいます。
そこで、『私が支えていますから、立ち上がっていただいてもよろしいですか?』など、立ち上がるための声掛けは忘れないようにしましょう。
■2.利用者さんに浅く座ってもらう
車椅子等に深く座っている場合、そのままだと力が入らず、立ち上がるための動作が大変になってしまいます。
お尻の位置を座面の少し手前に引いていただき、立ち上がりの動作がスムーズになるようサポートしましょう。
■3.『こちらの足を引いていただけますか?』など声かけをする
健側※の足を膝に対して直角になるように、もしくは少し下げていただくよう『こちらの足を引いていただけますか?』など声かけをします。
この際、足底がきちんと床についているかが重要なポイントとなりますので、確認を行いましょう。
麻痺側の足は膝よりも前に来るよう場所を変えて差し上げてください。
両足が引かれている状態だと、立ち上がった際に前のめりに転んでしまうので要注意です。
※健側:ケガや麻痺による障害を受けておらず、通常どおりに動かせる側の下肢や上肢のこと
■4.手前に引きあげるイメージで、立位動作を補助する
前かがみになりながらこれから立ち上がることを利用者さん本人に伝え、健側に体重が乗るように、手前に引きあげるイメージで立位動作を補助します。
足底に体重が乗ると、太ももの前方(大腿四頭筋)やお尻(大殿筋)の大きな筋肉に力が加わり立ち上がりやすくなります。
■5.麻痺がある場合、麻痺側の膝折れを支える
立ち上がる際に麻痺側の膝折れが発生する場合は、膝が折れないように支えます。
膝折れを防止する方法はいくつかありますが、私が行っている方法は、膝が外側に向かって開いてしまう場合であれば、自分の膝を利用者さんの膝の外側に合わせるように置くことで、外側に開いてしまうことを防ぐ方法です。
前方に膝折れがある場合には、利用者さんの足の外側に自分の足を付け、自分の脛骨とご利用者の脛骨をクロスするように添えておきます。押し付けることのないよう注意してください。
■6.苦痛などがないか観察、確認する
立ち上がり動作から立ち上がるまで、ご本人の表情を観察し、苦痛などがないか観察してください。
立ち上がった際には起立性の低血圧などを起こされていないか確認する意味でも、『ご気分悪くありませんか?』などとお声掛けするのが良いと思います。
※介助時の注意点※
1.「リフト」と「シフト」の違いを覚えておこう
2.立ち上がる際は急かさず「ゆっくり」と
3.軽介助の場合は利用者さんとの「スペース」を大切に
ー1.「リフト」と「シフト」の違いを覚えておこう
立ち上がり介助において持ち上げる(リフト)はNGです。正しいイメージとしては手前に引き上げる(シフト)です。
持ち上げる(リフト)は 2人介助などで頭部と足をそれぞれ持ちながら移乗する際などに活用します。「リフト」と「シフト」の違いは必ず覚えておきましょう。
ー2.立ち上がる際は急かさず「ゆっくり」と
そして立ち上がる際は、ゆっくりと立ち上がれるようサポートしましょう。
急に力任せにシフトしても、びっくりされてしまい、利用者さんの体に余計な力が入ってしまいます。利用者さんご自身の力を発揮できるように支持して差し上げてください。
ー3.軽介助の場合は利用者さんとの「スペース」を大切に
全介助ではなく、軽介助で立位していただく際、腋下を両手で支えてしまいがちですが、利用者さんとの間にスペースがないと、立ち上がり動作の妨げになってしまうので、ご注意ください。
利用者さんの立ち上がる力が弱いときには、腋下ではなく、肩甲骨まで手を差し入れて立位動作の補助を行うとスムーズかと思います。
立ち上がり介助の練習はどのように行う?
ー利用者さんの状態を自分で再現してみましょう
私がよく行っていた練習方法は、利用者さんの状態を自分で再現して、椅子に座り、どうすれば立ち上がりやすいのかを実際にやってみることです。これを行うことで、どのように支えてもらえると立ち上がりやすいのかイメージできると思います。
【立ち上がりやすい姿勢】
・浅く座る
・足を引く
・床に足底をつける
・前傾になる
→これらのような姿勢だと、太腿の筋肉に力が入ることを感じることができるはずです。
【立ち上がりにくい姿勢】
・深く座る
・足を投げ出す
・頭を前に倒さずに立ち上がろうとする
→このようなときはどう頑張っても絶対に立ち上がれないと思います。
最後に:マンガで立ち上がり介助のポイントを確認!
ポイントをおさえたうえで、実際の利用者さんの立場が理解できると、立ち上がり介助への苦手意識がなくなると思います。
正しい動作を繰り返し反復することで、よりスムーズになり質問者さんの力となります!
慣れるまでは大変だと思いますが、応援しています!頑張ってください!
最後にマンガで立ち上がり介助のポイントを復習しましょう。
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