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やすのり先生のキーワード解説(4) おしるし/破水/陣痛<後編>

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やすのり先生のキーワード解説(4) おしるし/破水/陣痛<後編>

「陣痛」の苦しみは想像を絶すると言われることもしばしばあります。子どもは欲しいけれど、陣痛がイヤ……という女性もおられることでしょう。慶應義塾大学医学部名誉教授の吉村泰典先生に、そもそも陣痛はなぜ起こるのか、というところからこの現象について詳しくお聞きしました。

出産前に必ず訪れる子宮の収縮が「陣痛」

陣痛にはいくつかの種類があるのをご存知ですか?ふつうは分娩時、つまり出産直前にくる痛み「分娩陣痛」のことを指します。そのほか「妊娠陣痛」「前駆陣痛」「後産陣痛」「後陣痛」もあります。すべてに共通しているのは、子宮の収縮であるということ。痛みの有無や間隔は異なりますが、それらの子宮の収縮には意味があり、痛みがあることは正常なことです。

まずは、分娩陣痛についてご説明しましょう。

分娩が近づいてくると子宮口が大きく広がってきますが、子宮口が4~6cmになったときには陣痛の間隔は平均で3分になります。その後、子宮口が7~8cmのときは2分30秒、9~10cmのときには2分とどんどん痛みの間隔が狭くなってきます(図1※)。

痛みの持続は子宮口が4~8cmのときは平均で70秒、9cm以上になると60秒に(図2※)。つまり、痛さが1分続いて2分休み、また1分痛みが続いて……ということが繰り返されるのです。

初産の場合は、分娩台へは子宮口が10cmくらいになったら上がってもらいます。ここから分娩まではだいたい1時間はかかりますね。経産婦の場合は、もっと早く進むことが多いです。

昔は陣痛から分娩までに3日ぐらいかかる人もいましたが、今は赤ちゃんの健康のことを考えて早めに帝王切開にする人が圧倒的に多くなっています。48時間も分娩陣痛を味わうという人は少ないのではないでしょうか。そんなに長いとお母さんは疲労してしまいますから。通常は24時間以内にお産してもらえるよう医師の側は準備します。

陣痛の痛みが特徴的なのは、波があるということ。とても強い痛みが60秒続いたと思ったら、次の瞬間にはスーッと引いていきます。
お母さんのからだは、赤ちゃんを産み出すために、このプロセスを何度も繰り返すのです。

ただ、痛みの感じ方は人それぞれです。
妊婦さんによっては、波がなく、強い痛みを連続で感じる方もおられます。

赤ちゃんは産道で旋回している?

赤ちゃんをおなかの中から外の世界に出すためには、陣痛だけでは不十分です。「いきむ」ということが必要になります。少し難しい言葉でいうと「娩出(べんしゅつ)力」。腹圧をかけなくてはならないのです。

腹圧は、腹筋があるかどうかはあまり関係がありません。おなかの下のほうにいきまなくては、赤ちゃんは生まれてこないんですね。英語ではいきむことを“プッシュ”といいますが、赤ちゃんを下へ押し出すという感じです。

赤ちゃんは産道を通って生まれてきます。産道には骨産道と軟産道というものがあって、骨産道は骨盤の内側の骨の部分のことで、軟産道は子宮下部・子宮頸部・腟・外陰部の一部のことを指します。骨盤の形は生まれつきのものですが、お産が軽いかどうかに影響を及ぼします。また、軟産道は筋肉がやわらかく、伸展しやすい状態が理想的です。赤ちゃんが通りやすく安産につながりますから。

人間はほかの動物に比べて難産が起きやすくなっていますが、それは二足歩行するために骨盤が狭くなったことが原因です。
動物はみんな骨盤位、つまりお尻から生まれてきますよね。人間が頭から生まれてくるのはなぜだかわかりますか?人間の場合は頭が特に大きいからなのです。からだのいちばん大きい部分を使って、お母さんの子宮をどんどん開いて出てきます。赤ちゃんは産道でからだを旋回させて、誕生するのです。時にあごを引いたような状態に頭を下げたり、逆にあごを出して頭を上げたり。自然にそのような動きができるのが赤ちゃんなのです。とても神秘的だと思いませんか?

分娩陣痛以外の“陣痛”とは?

その他の陣痛についても説明しておきましょう。

妊娠陣痛は、妊娠の経過中に起こってくるもの。軽くて不規則な子宮収縮で、通常痛みは感じられません。

前駆陣痛は、分娩が起こる前に起こるので分娩陣痛と間違える方もいらっしゃいますが、不規則なのが特徴です。あるときは5分、あるときは20分、30分と間隔がまちまち。分娩陣痛に比べて痛みも弱いです。

後産陣痛は、分娩が終わり、胎盤を外に出させようとするときに、子宮の収縮が起こって表われるもの。長さにすると2~3分です。

後陣痛は、後産陣痛と似た名前ですが、胎盤が出たあとに起こるものです。痛みの強さや周期は不規則な場合が多いのですが、一般的に経産婦のほうが痛みの自覚が強いといわれています。

私は30年以上にわたりたくさんの赤ちゃんの誕生に立ち会ってきましたが、ご自分の産んだ赤ちゃんを見たときのお母さんの表情は、やさしさに満ち、幸せそうで、とても素晴らしいものです。
いつも感動します。

<参考資料>
※(図1・図2)これならわかる産科学 岡村州博編集. 南山堂 2003年

陣痛は赤ちゃんがこの世に誕生する直前の“合図”だともいえます。
陣痛とはどんなものなのか?を理解すると、出産への不安がやわらぐかもしれません。

最近は、自然分娩や帝王切開だけでなく、無痛分娩という選択肢も一般的になってきました。
痛みの感じ方は、人それぞれです。陣痛への向き合い方が時代とともに変化するのは当然のことだといえますね。

※本記事は、2015年4月15日に公開したものを、読者のみなさまに正しい情報をお届けし、特にはじめてのお産を迎えられる方に安心していただけるよう内容を見直し、2025年7月11日に記事内容を更新いたしました。

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やすのり先生のキーワード解説(3) おしるし/破水/陣痛<前編>

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