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うどんだけじゃない! 武蔵村山さんぽのおすすめ7スポット。都内で唯一鉄道駅がない街へ

さんたつ

武蔵村山 砂川湯

都内で唯一、鉄道駅がない街。そしてうどんの街。本当にそれだけ? 自転車で周遊してみるとお宝がそこかしこにあった。

いい湯だな〜あははん〜♪がハマる『武蔵村山 砂川湯』

薪を使うから湯加減最高。
ゆっくり浸かって冷えた体がぽっかぽか。

市内唯一の銭湯で、地元民の憩いの場として愛され50年以上。脱衣所には畳が敷かれていたり、浴室の壁にはタイルで異国の風景が描かれていたりとまさに昭和の様相。低温、中温、高温に分かれた湯船の湯は井戸水を使用し、薪で沸かしているのもここならでは。日曜のみ朝風呂ができるのもいい。

15:00~22:30(日は8:00~11:00・15:00~22:30)、月休。
☎042-843-8878

地元で「中華」と言えばここ『中華料理 ぺきん』

アオジャン880円。
調理場を仕切るのは店主の睦さん。鉄鍋が似合う。
「父、母、娘の3人でお迎えしま〜す」。

開業から45年、親子3代にわたって訪れる客もいる中華料理店。店舗の老朽化に伴い、2022年に建替え。鍋を振るのは、今も変わらず店主の小川睦さん。ランチも単品メニューも、価格以上のボリュームなのは小川さんの心意気。ネギとニラ、豚ひき肉のあんかけが麺によく絡むアオジャンは常連さんに人気の一杯だ。

11:30~14:30・17:00~20:30LO、水・木休。
☎042-560-7798

地元の食材や作り手に寄り添って『WAKACHIAI PLACE cafe i share』

Apple pie 660円とSet drink 紅茶(Hot)330円。
「新鮮な旬のおいしさを味わってください」。
エントランスには小さな直売所も。

調理師と栄養士の資格、さらには飲食業界で長年培った経験を元にランチメニューもスイーツもすべて手作りする。地元の農家さんから直接仕入れる農薬不使用の武蔵村山産野菜や果物など、素材の持ち味がきちんと生かされ、しみじみと五味を感じる。「何か始めたい人の1歩目になれたら」と、個人で活動する人たちの手作り商品も取り扱う。

11:00~16:30LO、水・日・祝休。
☎042-569-6649

店内は店主の偏愛が炸裂(さくれつ)しまくり『黒猫亭』

マグカップが選べるコーヒー500円。
オリジナル・ギターピック各150円〜。

ミカン畑と住宅に囲まれたギターショップ店主の宮西義人さんは、コロナ禍を機に脱サラ。自身の“好き”を詰め込んだ、秘密基地のような店を営んでいる。ここにあるのは中古ギターやビンテージ雑貨、洋服、アクセサリーなど。店内の一角にはコーヒーが楽しめるスペースも。ギターを弾く人もそうでない人も、居心地のいい空間が広がっている。

11:00~19:00、月・火休。
☎090-9159-2799

多種多様な発酵食品でヘルシーに『パンとおやつに糀 ohana』

「発酵食品の良さをもっと広めたい!」。
鈴木さんの気まぐれで並ぶパンも。
味噌汁 おにぎり1つセット500円。
あんバター350円。

発酵に目覚めた鈴木学未さんによる、手作りの発酵メニューが並ぶ店。甘酒酵母を使った高加水の食事パン、焼き菓子、食べる醤油と称される醤などの具材を詰めたおにぎり、味噌汁、甘酒などラインアップは多岐にわたる。食べた翌日から体調や肌など、発酵パワーの凄みが感じられるかも。

11:00~16:00(売り切れ次第終了、イートインは11:30~14:30)、日~木休。
☎なし

地元の食材をお弁当で味わい尽くす『あいちゃんの台所』

「安心安全の手作りお弁当はいかがですか?」。
きまぐれ彩り弁当1000円。
元々はガス屋だった店舗を改装。

2024年オープンのお弁当屋。切り盛りするのは、生まれも育ちも武蔵村山という母・松田さんと娘の星茄さん、瑞月さん。米、野菜、肉など、使う食材は近隣で収穫されるものだったり、市内の個人商店だったり、地元にとことん密着している。6種類あるボリューム満点の手作り弁当のほかに、お総菜の盛り合わせやオードブル(要予約)も。

10:00~14:00・16:00~18:00、日休。
☎080-3549-0141

圧巻の種類と見応えで目が眩む『P.D 熱帯魚センター』

1階は魚、2階はグッズを販売。
「おうちで過ごすひとときを癒やすぞ~」。

新青梅街道沿いで、ただならぬオーラを放つ一軒。店内で迎えてくれたのは、水槽でゆ~らゆらめく魚たち。500以上取り扱う熱帯魚のほか、淡水魚、海水魚、金魚など、圧巻の数と種類に圧倒される。「見て、育てて家で過ごす時間がより豊かになりますよ」と代表の諸喜田将博さん。初心者向けの魚も多くいるのでお気軽に。

13:00~20:00(土は12:00~、日・祝は10:00~)、火休。
☎042-563-1943

東京にいることをすっかり忘れさせてくれる

玉川上水駅からバスで市内へ。そこからシェアサイクルで巡ろう(写真は残堀川沿い。空気が澄んでいて気持ちいい)。
新青梅街道沿いにある、お伊勢の森 神明社。

電車が走っていない。行きたい場所から場所まで、マップで検索してみたものの歩くには遠い、遠すぎる……! それならば、と市内の主要スポットで見つけたシェアサイクルで自由気ままに市内を回ってみたら、武蔵村山の宝のようなスポットにたくさん出合った。

古めかしさが映える、地元民の買い物スポット。

どこに行ってものどかな景色が広がる武蔵村山は、東京にいることをすっかり忘れさせてくれる。

1966年、都内最大級の都営団地として入居が始まった「村山団地」の周辺にある商店街は、何から何までノスタルジック。ドラマや映画のロケ地として使われている老舗銭湯の『武蔵村山 砂川湯』は、風呂上がりの瓶牛乳がハマリすぎるロケーションで勝手に昭和女優を気取ってしまった。

チェーン店が点在する新青梅街道沿いに立つ、深海から浮上してきたような『P.D熱帯魚センター』では浦島太郎になりかける。店名にある「P.D」は「プリティ・デザイン」を意味するらしい。かわいいかはさておき、バイパス道よりも確かな存在感を放っている外観デザインということは間違いない。

ありふれた“もの”や“こと”はかけがえなくて、あったかい

懐かしさばかりに目が行きがちだが、開店して間もないお店も見つけた。

『あいちゃんの台所』は、2024年冬に母娘の3人で始めたお弁当屋さん。「アットホーム」という言葉はこの3人のためにあるのではないかと思うほど温かく、冬の寒さで冷え切った心と空腹を、実家に帰ったときのように優しく満たしてくれた。

2023年にオープンしたのが、ギターショップ『黒猫亭』と『パンとおやつに糀 ohana』。住宅地の一角にある『黒猫亭』は扉を開いてあんぐり。粋でかっこいい空間は、2年ほどかけて店主の宮西さんが手掛けたという。すごすぎやしないか? 『パンとおやつに糀 ohana』店主の鈴木さんは、発酵愛がものすごい。1つの質問に対していくつも答えてくれるので、ここに来れば自然と発酵食品の知識が深まりそうだ。

三ツ藤南公園中央に鎮座する山型遊具の「!!」が気になる。

地元の人たちが、安定の信頼を寄せる名店にも立ち寄ってみる。1軒目は『中華料理 ぺきん』へ。2022年に店舗を新しくしたものの「営業は長いから2世帯、3世帯で来てくれるお客さんも多いのよ」と店主の小川さん。その人柄も通いたくなる理由の一つだと確信する。

『WAKACHIAI PLACE cafe i share』では、人とのつながりを大切にしていることがうかがえた。例えば、店先に並ぶ野菜が仲良しのおじさんとおばさんが育てたものだったり、つながりのある作家さんのアイテムを委託販売していたり。店名どおりの店じゃないか。

武蔵村山で暮らす人たちに街のことを聞くと「何にもない」と言うが、身近だからこそ気づかないことってたくさんあると思う。自転車で回って見つけた場所や出会った人は、魅力的だし面白かった。そして、こんなハートウォーミングな街はそうそうない! 今も気持ちが温かい。

取材・文=新居鮎美 撮影=逢坂 聡
『散歩の達人』2025年2月号より

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