【北海道の絶景】氷点下16度の世界で「アイスバブル」 必要な持ちものから「お化けキノコ」まで撮影レポ
数多くの「絶景」を持つ北海道。
観光情報にはなかなか載っていない、「日常の絶景」も多くあります。
今回は、HBC帯広放送局のカメラマン・大内孝哉さんが撮影した、十勝・糠平湖の「アイスバブル」をお届けします。
連載「テレビカメラマンがとらえた“一瞬”の北海道」
自然が作る絶景「アイスバブル」
1月下旬。ことしは暖冬と言われていますが、絶景を求めて、氷点下16度の世界に行ってきました。
向かった先は、上士幌町の糠平湖(ぬかびらこ)。
お目当ては「アイスバブル」です。
湖の底の植物から出たメタンガスの気泡が、湖の中で凍り、泡の形が見えます。
上士幌町は去年9月にも、ナイタイ高原の記事で紹介させていただきました。
この街は本当に自然豊かな絶景が広がっています。
ことしの糠平湖は暖冬の影響で、例年より約1か月早く、1月27日から立ち入り禁止となってしまいました。その直前に撮影した風景をお伝えしますので、写真で幻想的な景色を楽しんでいただければ幸いです。
道中から絶景に囲まれ、ワクワクが止まらない
糠平湖は、私が住む帯広からは車で下道1時間弱で着きます。
家を出発したのは早朝5時ごろ。日の出の時刻を目指して行きました。
まだ空は暗く、天気の状況はわかりませんでした。
前日の天気予報では「終日、晴れ」。いつも通り良い1日になると、意気揚々と出発しました。
ところが…移動している最中、だんだん薄明るくなってきて…見事なまでの「くもり」!
上士幌に近づくにつれて、雲は濃くなり、まさに曇天!!
早起きしたのに…と、テンションも下降気味です…。
が!しかし、上士幌の街中を抜け、ぬかびら源泉郷に近づくにつれて、雲がだんだん薄くなってきました。
トンネルを抜け温泉街に入ると…まさかの、晴天!
こんなことあるのですね。お天気に恵まれてしまいました!
そして晴天で放射冷却され、外の気温はとても低く、車の温度計では氷点下16度を示していました。
こうなると周りの景色もすごくきれいです。温泉街の木々たちは、真っ白な樹氷となっていました。
・撮影日:2025年1月
・場所:上士幌町 ぬかびら源泉郷
・シャッター速度 1/100
・絞り f/10
・ISO 2000
・カメラ:SONY a7Ⅳ
・Edit. Adobe Photoshop Lightroom
ここに留まってシャッターを切りたかったのですが、「アイスバブル」という目的を見失わないように…三国峠展望台に続く国道沿いにある「五の沢パーキング」へ向かいます。
向かう途中はもうワクワクして仕方ありません。
すでに周りはこの景色なのです。
・撮影日:2025年1月
・場所:上士幌町 三国峠
・シャッター速度 1/100
・絞り f/10
・ISO 1250
・カメラ:SONY a7Ⅳ
・Edit. Adobe Photoshop Lightroom
五の沢パーキングへ到着したら、もう先着の車が多く停まっていました。
僕も早く家を出たつもりでしたが、これ以上遅かったら車を停められなかったかもしれません。
もし来シーズン行きたい方がいましたら、なるべく早めがおすすめです!
ここでも最大限の防寒着を重ね、林道から糠平湖まで歩きました。湖畔までは15分ほど歩けば着きます。
湖畔にたどり着くと、白銀の世界が広がっていました。
・撮影日:2025年1月
・場所:上士幌町 糠平湖
・シャッター速度 1/100
・絞り f/10
・ISO 1250
・カメラ:SONY a7Ⅳ
・Edit. Adobe Photoshop Lightroom
湖面は凍って、うっすら雪で覆われています。
なので本来、湖がある場所は真っ白です。
この雪の下に、アイスバブルがあります。
夜通しの厳しい寒さで、湖面まで歩いて行く途中の植物たちも真っ白です。
・撮影日:2025年1月
・場所:上士幌町 糠平湖
・シャッター速度 1/100
・絞り f/16
・ISO 500
・カメラ:SONY a7Ⅳ
・Edit. Adobe Photoshop Lightroom
湖畔から少し歩いて、アイスバブルを見つける前に絶景を見つけてしまいました。
言葉を失う絶景
・撮影日:2025年1月
・場所:上士幌町 糠平湖
・カメラ:iPhone15plus
この光景を見つけたときは、言葉を失いました。
寒さの中から織りなす、幻想の風景。
いったいこのニョキニョキしてる霜の群集はなんなのか。
・撮影日:2025年1月
・場所:上士幌町 糠平湖
・シャッター速度 1/250
・絞り f/16
・ISO 500
・カメラ:SONY a7Ⅳ
・Edit. Adobe Photoshop Lightroom
取材で知り合った地元のガイドさんに聞いて見たところ、霧氷の一種で、枯れ草や枯れ枝に霜が付着した現象で、「樹霜」(じゅそう)というらしいです。
写真をよく見てみると、短い枝のような植物に霜がついているのがわかります。
「樹霜」という現象は、恥ずかしながら、今まで知りませんでした。教えていただいたガイドさんに感謝です。
自分が好きな景色の自然現象に、また一つ詳しくなることができました。
早朝の濃いオレンジと、夜を残した青色が交わる、この幻想的な時間は一瞬です。
撮影していると「この時間がもっと続けばいいのに!」と強く思うことが多々あります。
しかしこれは、自然がもたらす特別な時間であり、非日常な空間。限られているからこそ、感動があるのだなと感じます。
・撮影日:2025年1月
・場所:上士幌町 糠平湖
・シャッター速度 1/1600
・絞り f/7.1
・ISO 640
・カメラ:SONY a7Ⅳ
・Edit. Adobe Photoshop Lightroom
地面に付着している霜は「フロストフラワー」と言います。名前を聞いたことがある方もいらっしゃるかと思います。
霜の結晶が花のように見えることから「フロストフラワー」と呼ばれています。
フロストフラワーを見るには、地面に雪が積もっていないこと、氷点下15度以下であること、風がないこと、など条件があります。
先に述べた通り、この日は氷点下16度で風はなく、この時期としては記録的に雪が少なく地面が見えている部分があった、など条件は全てクリアしていました。
太陽が奥から出てきて、さらに小川の霧で幻想的に。
こんな光景は初めて見ました。とても感動しました。
そこから少し歩くと、いよいよお目当ての景色「アイスバブル」を発見です!
吸い込まれそう…自然が作る絶景「アイスバブル」
・撮影日:2025年1月
・場所:上士幌町 糠平湖
・カメラ:iPhone15 plus
・撮影日:2025年1月
・場所:上士幌町 糠平湖
・シャッター速度 1/200
・絞り f/8.0
・ISO 500
・カメラ:SONY a7Ⅳ
・Edit. Adobe Photoshop Lightroom
湖の底に堆積した、植物から発生したメタンガスの気泡が水面にたどり着く前に
凍って、湖の中に閉じ込められる…。
自然のイタズラでもあり、昔から住む地元の方は「泡氷」と呼んでいたそうです。
・撮影日:2025年1月
・場所:上士幌町 糠平湖
・シャッター速度 1/200
・絞り f/8.0
・ISO 500
・カメラ:SONY a7Ⅳ
・Edit. Adobe Photoshop Lightroom
よく見てみると、気泡もいろいろな形で凍結されていて、どんな形があるか探すのも楽しいです。
湖底の底が暗く見えないので、まるで宇宙空間のようで、吸い込まれていきそうな
不思議な気持ちにもなります。
こんな光景が自然の力によってできることが、本当に不思議ですよね。
アイスバブル撮影のために必要な持ちもの
アイスバブルは、僕が行った時期はうっすらと雪が積もっていて、手で雪をどかしながら見つけました。なので初めて行く方は、スコップまたは車のスノーブラシを持っていくのがおすすめです。
そして必要な物があります。それは「お湯」です!
雪をかき分け、アイスバブルが眠る氷を見つけても、雪が付着していてきれいに見えない場合があります。
そこでお湯をかけると、一定時間ですが、透き通ったアイスバブルを撮影することができます!
水筒に多めのお湯を入れていくといいと思います!僕は750ミリリットルくらい持っていき、全て使いました。
周りを見ると、観光客もだんだんと集まってきました。
みなさんお目当ては様々ですが、糠平湖はワカサギ釣りの聖地です。
大きなソリの上にテントや釣り道具、中にはストーブなども積み込んで、ワカサギ釣りを楽しむ方が多く見受けられました。
・撮影日:2025年1月
・場所:上士幌町 糠平湖
・シャッター速度 1/500
・絞り f/9.0
・ISO 1000
・カメラ:SONY a7Ⅳ
・Edit. Adobe Photoshop Lightroom
僕が行った日は平日でしたが、土日はテントの数が100棟を超えることもあるそうです。
訪れた観光客の楽しむ声と、自然の音が重なり、この時期にしか味わえない賑かな雰囲気にとても惹かれました。
糠平湖の見どころはまだまだ…「お化けきのこ」
そして最後にお伝えすのは、糠平湖の見どころの一つでもある「お化けきのこ」。
お化けきのこという言葉だけでは何が何だかわかりませんが、写真を見ていただくと、なんとなく雰囲気が伝わるでしょうか?
・撮影日:2025年1月
・場所:上士幌町 糠平湖
・シャッター速度 1/800
・絞り f/16
・ISO 640
・カメラ:SONY a7Ⅳ
・Edit. Adobe Photoshop Lightroom
切り株の上に、湖の氷が乗っかってしまっているのです!
糠平湖は人口湖です。もともとは森が広がっていて、糠平ダムが開発されるときに伐採された木の切り株が、今でも残っています。
糠平ダムの稼働によって、糠平湖の水位は変化します。水位が減ったときに、切り株の上に氷が残り、このような現象が見られるそうです。
とてもユニークな形で、大きなキノコのように見えますよね!
一つ一つの氷の形が違って、太陽の光が当たると透き通って見えて、とてもきれいです。
・撮影日:2025年1月
・場所:上士幌町 糠平湖
・シャッター速度 1/800
・絞り f/14
・ISO 640
・カメラ:SONY a7Ⅳ
・Edit. Adobe Photoshop Lightroom
・撮影日:2025年1月
・場所:上士幌町 糠平湖
・シャッター速度 1/500
・絞り f/16
・ISO 500
・カメラ:SONY a7Ⅳ
・Edit. Adobe Photoshop Lightroom
寒さの中でしか見ることのできない、幻想的な風景。
今回は、冬の糠平湖の景色をお届けさせていただきました。
糠平湖には「今季初の氷点下更新」など、ニュースの取材でも訪れることがあります。
周りに遮るものがなく、壮大なパノラマが広がる場所です。
厳しい環境が作り出す、自然の芸術作品。
ぜひ来シーズン、足を運んでみてはいかがでしょうか?
※糠平湖は今シーズン、1月27日から立ち入り禁止となっています。湖の水位が低く、湖の底から発生するメタンガスによってできる「ガス穴」が多く出現したことや、暖冬の影響などで氷が薄い場所も多く、氷が割れる危険が高まってきたことが理由だということです。
連載「テレビカメラマンがとらえた“一瞬”の北海道」
撮影・文:HBC帯広放送局 大内孝哉
2015年からテレビカメラマンとして、主にニュースやドキュメンタリーを撮影。担当作品に映画/ドキュメンタリー「ヤジと民主主義」や、ドキュメンタリー「核と民主主義」「ベトナムのカミさん〜共生社会の行方〜」「101歳のことば ~生活図画事件 最後の生き証人~」「クマと民主主義」など。
2023年10月から帯広支局に異動。インスタグラム@takayasunset0921では、プライベートで撮影した北海道の写真を公開中。
編集:Sitakke編集部IKU
※掲載の内容は記事執筆時(2025年1月)の情報に基づきます。