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“やわらかさ”を持って接する病院訪問|アランマーレ秋田とあきた病院 筋ジストロフィー病棟の交流から考える女性スポーツの地域貢献

Sports

女子バスケットボール・Wリーグに所属する女子バスケットボールチーム、アランマーレ秋田。秋田に本拠地を置き、「地域とともに成長するチーム」、「女性活躍の応援のシンボルとなるチーム」を目指して、競技だけでなく、さまざまな地域貢献活動にも取り組んでいます。

地域の小中高生に向けて多くの選手が参加するバスケットボールクリニックだけでなく、ビーチクリーンなどのバスケットボール以外の活動にも積極的に取り組むチームの中で、今回取り上げるのは、国立病院機構あきた病院(以下、あきた病院)との交流です。県内唯一の筋ジストロフィー病棟を持つあきた病院とともに行う筋ジストロフィー患者とアランマーレの選手との交流は、アランマーレという女性スポーツチームだからこそできる、ただ元気を与えあうだけでないものになっています。

インタビュー対象

アランマーレ秋田 田口さん、石田さん国立病院機構あきた病院 筋ジストロフィー病棟自治会会長 土門 香菜(どもん かな)さん自治会副会長 千種 成(ちぐさ おさむ)さん児童指導員 髙橋 克広(たかはし かつひろ)さん

地域に愛され、ともに成長するチームを目指して

ーーアランマーレ秋田が取り組んでいる地域貢献活動について教えてください。

アランマーレ田口)アランマーレの行う地域貢献活動は、秋田県内の小中高生を対象としたバスケットボールクリニックや、幼児向けの運動教室など多岐にわたります。バスケットボール関連以外にも、あきた病院筋ジストロフィー病棟さんとの交流や、夏の期間にはビーチクリーン活動なども行っています。

私たちは「地域の皆様に愛され、ともに成長できるチーム」を目指して活動しています。そのため、バスケットボールを通じて県民の皆様に元気を与えるのはもちろんですが、交流の機会などを通じて、地域を活性化し一緒に成長していきたいという想いをもって活動に取り組んでいます。

ーー女性スポーツチームが地方の秋田で活動をすることにはどのような意義があるのでしょうか?

田口)地方では楽しみの選択肢が少ないこともあり、スポーツに対する関心度や地元チームへの愛着が非常に強いと感じています。また、アランマーレ秋田創立のコンセプトである「女性が活躍できる場を増やし、女性応援のシンボルとなるチーム」を実現する上で、女子チームの選手がバスケットボールの試合や地域で活躍することには、大きな価値があると感じています。

ーーこうした活動に取り組んでいて、良かったなと思う瞬間はありますか?

田口)活動を通して、選手が地域の方々と直接会って話すことで接点が生まれ、より熱心に応援していただけるようになると感じています。地域の方々から熱心に声をかけていただくことは選手にとって大きな励みになり、競技にもプラスの影響を与えるので非常にありがたいです。今後は、さらに多くの方と交流できる機会を増やし、活動の規模を大きくしていきたいと考えています。

Wリーグ昇格をきっかけに始まったオンライン交流

ーーあきた病院の高橋さんにもお話を伺いたいと思います。まずは、病院の特徴について教えてください。

あきた病院 高橋)あきた病院は、秋田県内唯一の筋ジストロフィー病棟を持つ国立病院機構の病院です。療養介護を利用している長期入院の患者が多く、その中には秋田県外からの患者も含まれます。療養介護では、適切な医療を受けながら、日中にはリハビリやレクリエーション活動なども行っています。
また、病院内には、筋ジストロフィー病棟に入院している患者さんの約半分となる37名が加入している『自治会』があります。自治会の方々が中心となって、患者さんの入院生活が楽しくなるようにクリスマス会などの企画をしてくれており、その一つとして毎年夏に行う『アランマーレ秋田との交流会』があります。自治会自体は昭和56年(1981年)からあり、歴史の長い組織です。

ーーすごい歴史ですね。アランマーレ秋田との交流会は3年前から始まったと聞きました。

あきた病院 土門)女子バスケの最高峰リーグであるWリーグに東北から初参戦されるというタイミングで、もともと繋がりのあったアランマーレ秋田の副部長と当時の自治会長が「何かおもしろいことができれば」という話になったことがきっかけです。

アランマーレの選手と交流する土門さん(写真左)

ーー初回・第2回はコロナ禍でオンラインでの実施となりましたが、大変なこともありましたか?

田口)最初の2年間は、オンラインでハンドリングやバスケのスキルをお見せして、皆様からいただいた質問に選手がお答えするということを試行錯誤しながら行っていました。
オンラインの交流であっても、選手たちにはあきた病院の筋ジストロフィー病棟がどういう場所であり、どういうことを大切にしてるのかということを理解してもらうことを大切にして取り組みました。現地でスポーツ観戦をしていただくことは難しい方々なのですが、その中にもこうしてアランマーレ秋田を応援してくださっている方がいるということを、私自身も改めて実感した交流になり、とても印象に残っています。

ーー昨年からは対面の交流にもなりました。オンラインと対面の違いはやはり感じるものだったのでしょうか?

高橋)もしかしたら、画面越しだと選手との距離感を感じてしまって、現実味があまりない印象を持つ患者さんもいたかもしれません。ですが、昨年から実現した対面の交流では、画面越しでは伝わらない本物のスポーツ選手の大きさに驚いたり、選手と直接会話したりすることができて、より身近に感じることができていると思います。

アランマーレ秋田の選手だからこその‟柔らかい雰囲気”

ーー今年7月に開催された交流会は4回目となりました。

アランマーレ石田)当日の交流会の内容は、選手にやりたいことをヒアリングし、あきた病院の高橋さんとも相談して決めました。「この選手は誰だろうクイズ」など、活動の中では皆さんの笑い声が絶えず、当初予定していた時間を超えてしまうほどの盛り上がりになりました。
選手たちも病院訪問に非常に前向きで、企画や準備の段階から主体的に交流会に参加してくれています。病院の皆さんが熱心に応援してくださることに対して、選手たちも「その気持ちに応えたい」という声をよく聞きます。

あきた病院 千種)アランマーレの選手が参加するイベントは、自治会の皆さんにとって他のイベントとは違う特別なものになっていると感じています。今年は、事前に選手のリサーチをしてお気に入りのグッズを持参する方もいらっしゃるほど、選手たちのファンになっていますね。

高橋)アランマーレの選手たちは、患者さんと和やかな雰囲気でお話しされており、その姿がとても印象的でした。女性特有の“柔らかさ”も影響しているのか、普段は外部の方と話す機会が少ない患者さんも、アランマーレの選手たちとは緊張せずに会話を楽しんでいました。

ーー初めてお会いする人、プロ選手に緊張してしまう人もいる中、そこを和やかにできる“柔らかさ”をアランマーレ秋田の選手たちは持っているということですね。

田口)そう言っていただけるのはとても嬉しいですね。もちろん、私たちが特別に指導しているわけではなく、選手たちがもともと持っている“柔らかさ”が患者さんとの会話のしやすさに繋がっているという点は、アランマーレ秋田が地域との関わる上での特徴の1つと言えるのではないかと思います。

ーー病院訪問以外での繋がりもあるのですか?

土門)今年1月に発生した能登半島沖地震の義援金を、アランマーレさんにお渡しさせていただきました。能登半島沖地震に対し、自治会の方々が「何か支援をしたほうが良いのではないか」と思い立ち、自治会が中心となって動きました。その際、アランマーレ秋田に所属する石川県出身の野田遥選手と佐藤千裕選手が募金活動をされていることを知り、連絡を取らせていただき、そちらに協力させていただくこととなりました。これは、チームと選手を本当に応援しているからこそできた、ただ元気をもらうだけではない、深い交流を象徴するエピソードだったと感じています。

身近な存在の特別なパフォーマンスを

ーー対面での交流も実現したなかで、あきた病院が今後行いたいアランマーレとの交流はありますか?

千種)選手の皆さんのパフォーマンスを、患者さんがもっと直接感じられる機会を企画したいと考えています。現地での観戦はハードルが高いのですが、ライブ中継でなくても、週末の試合を選手と一緒に観て楽しんだりすることも楽しそうですよね。
選手のハンドリングやスキルのパフォーマンスも患者さんたちが観れるような環境を作れたら嬉しいです。

ーーアランマーレ秋田としてはいかがでしょうか?

石田)我々としても、実際に会場でプレーを観ていただきたいという想いがありますが、パブリックビューイングのような形であきた病院さんと一緒に開催できると楽しいイベントになると考えています。選手のオフの姿だけでなく、プレーヤーとしてのオンの姿も観ていただくことができれば、より喜んでもらえるのではないかと思いますし、今回の能登半島地震の募金活動のように一緒にできることはどんどんやっていきたいです。

ーーただ、元気を与えるだけでなく、本当にお互いが近い存在になっていることを感じます。

石田)そうですね。元気を与え合うだけの関係ではなく、私たちも一体となって地域貢献に取り組ませていただいていますし、私たちの掲げる目標を達成するために、これまでに多くのサポートを受けてきました。これからも継続的に交流を深めながら、一緒に秋田県を盛り上げていければと思っています。

ーーありがとうございました。

写真提供:アランマーレ

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