フリーアナウンサー・内田恭子さんとはじめる「マインドフルネス」【瞑想?坐禅?いやいやこれ、現代人には不可欠です。】
内田恭子さんの「ここからはじめるマインドフルネス」
NHK『すてきにハンドメイド』テキスト2025年4月号では、フリーアナウンサーとして活躍を続ける内田恭子さんによる「マインドフルネス」に関する連載がスタート。
コロナ禍でマインドフルネスに出会い、その魅力を伝えたいと、2023年にマインドフルネストレーナーとしての活動をスタートした内田さん。暮らしにマインドフルネスを取り入れて、いつも頑張る頭や心、そして体を少し休めたい。そんな方たちに、連載を通じて、役立つ気軽なスキルをお届けします。
今回は連載第1回をWEB特別版として公開します。
#1 はじめるのはじまり
みなさん、突然ですが10年前、今の自分を想像できていましたか? 私自身の10年前を振り返ってみると、二人の幼児男子の育児真っ最中でした。10年後の自分がまさかマインドフルネストレーナーとして活動しているなんて夢にも思わず。それどころか「マインドフルネス」なんて言葉すら知りませんでした。なぜアナウンサーからマインドフルネス? とよく聞かれます。一見全く別分野の仕事。けれども実はそうとも言いきれないんです。
私は小学校高学年から高校までの6年間ほど、父の転勤でアメリカのシカゴで育ちました。oneからtenまで数えることもできなかった娘を、海外転勤慣れしていた両親は「英語なんてすぐ覚えるわよ」と、現地校にぽんと入れたのでした。通学始めの1週間は怖すぎて直立不動で固まったまま、顔を横にすら向けられなかったのを覚えています。そのときに私の支えとなったのがスクールカウンセラーの存在でした。日本と違って、学校に常駐していて、悩みがあるときだけではなく、定期的に生徒全員が順番にその先生に呼ばれる時間がありました。担任や友達に言えない悩みから成績、進学の相談まで、幅広くサポートしてくれたのです。映画やドラマでもよく見かけるシーンですが、海外ではカウンセリングやセラピーが一般的に浸透していて、家族間、友人、職場などでのトラブルがあると、「go see your shrink(shrinkに行っておいで)」という表現が出てきます。shrinkとは縮むという意味ですが、「精神科医」という意味のスラングとしても使われます。妄想によって大きくなった頭を小さく縮めてもらう、という意味からきているんですね。スラングで使われるくらい、日常的にshrinkに行くことは特別でもなく、第三者に話を聞いてもらうのは当たり前のことなんです。
大人になってからも、テレビ局でまだ働き方改革も何もない時代に働いていたため、メンタルの問題とは常に隣り合わせでした。鈍感力で生きてきた私は何となくスルーしていたつもりでしたが、近しい友人に言わせてみれば「あのときの恭子はどこかおかしかった」とのこと。当時、プライベートの約束はドタキャンの連発だったらしいです(笑)。周りにも心のバランスを崩す人が少なくなかったからこそ、心との向き合い方には常に興味がありました。そういったことや、昔のカウンセラーの存在もあり、いつしか臨床心理士になりたいという気持ちが芽生えていったのでした。
そしてコロナ禍。急に暇な時間ができてしまい、今やらなかったらいつやるんだと、臨床心理士を目指して、大学院に入るための受験勉強を始めました。そんなとき、近代心理学の中で初めて「マインドフルネス」という言葉に出会いました。気になって調べてみると、脳科学と結びついた瞑想法とのこと。メディテーション(瞑想)にも少し興味があったので、さらに深掘り。ならばいっそのことマインドフルネスの本場で授業取っちゃう? やりたいことが見つかれば、勢いだけは誰にも負けない私。大学院受験の通信講座をあっさりと打ち切り、気がつけばマサチューセッツ大学でのマインドフルネスプログラムを取っていたのでした。そして、その後ヨーロッパ最古のマインドフルネス機関で1年半学んで、MBSR(マインドフルネスストレス低減法)講師資格を取ったのです。
今思えば無我夢中の2年間でした。オンラインで行われる、時差と戦いながらの真夜中の授業。眠気には勝てずハッと気がつくと、もう授業も終わって、スクリーン上に一人寝起き顔の私がポツン、なんてこともしばしば。それでもなんとかやり遂げられたのは、マインドフルネスが知れば知るほど奥深く、人生で使えるスキルだと実感したからです。授業では瞑想を通して、今の自分の心や体、呼吸に意識を向けることを学んでいきます。そうすると、いつも過去や先のことばかり考えていて、今、目の前で起きている些細だけれども、愛おしい瞬間をたくさん見逃していたことに気がつきました。たとえば、今日の空がとても澄んでいたこと、手をつないだ子どもの手がまだ小さくて柔らかいこと、家族がそろってご飯を食べられること……。当たり前だけれども当たり前ではない。ずっとあり続けるものでもない。そのときにしか体験できない美しさが日常にはたくさんある。それをそのとき感じられるか感じられないかで、人生の質は変わってくるのではないでしょうか。
さらに、マインドフルネスというと瞑想のイメージが強いですが、それ以外に日常の生活でも使えるスキルがたくさんあるんです。たとえばストレスや人とのつきあい方から、仕事や育児、意思決定をする場面にまで広くマインドフルネスの考え方や見方などが役に立っていきます。今の活動をしているのも、一人でも多くの人にそのスキルのすばらしさを伝えたいと強く思ったからです。
さて、これからみなさんにも、日々の生活の中でヒントとなるマインドフルネスの楽しさや魅力をお伝えしていけるのを楽しみにしています。どうぞおつきあいくださいね。
(用語解説)
MBSR
1980年代、アメリカ・マサチューセッツ大学のジョン・カバットジン博士が開発したマインドフルネスストレス低減法(Mindfulness Based Stress Reduction)と呼ばれるプログラム。うつ病の再発防止への効果が実証されている。
◆トップ写真・プロフィール写真提供/内田恭子
◆バナーイラスト/山本祐布子
プロフィール
内田恭子(うちだ・きょうこ)
フリーアナウンサー、マインドフルネストレーナー。慶應義塾大学を卒業後、フジテレビアナウンス室に入社。退職後、フリーアナウンサーとして活躍するかたわら、マインドフルネスに出会う。ヨーロッパ最古のマインドフルネスセンターであり国際基準となっているIMA(Institute for Mindfulness-Based Approaches)認定MBSR・MBCT-L(Mindfulness-Based Cognitive Therapy for Life)講師。日本マインドフルネス学会正会員。
内田さんが主宰する「kikimindfulness」
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