末期がんの牛、安楽死直前に群れの仲間が集まる 最後の別れの挨拶(米)
“誰かを慰める”という感情や行動は、人間に限らないようだ。安楽死を目前にした牛を群れの仲間が取り囲み、慰める様子を収めた動画がSNSに投稿され、人々の感動を呼んでいる。群れの牛たちは、死を目前にした仲間にまるで最後の別れを告げているようだった。米ニュースメディア『Newsweek』などが伝えた。
安楽死を目前にした牛を群れの仲間が取り囲む様子。人々の感動を呼んだ動画はこちら
米ニューヨークとロサンゼルスに拠点を置く非営利団体「ファーム・サンクチュアリ(Farm Sanctuary)」が10月22日、オスの牛“カーリー(Curly)”の動画をFacebookに投稿し、多くの人の心に深い感動を与えた。
同団体は、農場などで悲惨な扱いを受けた家畜を保護・救助し、自ら管理する農場での世話や譲渡活動を行っている。カーリーもその1頭で、6年前に末期がんで生涯を終えた。今回の投稿は、6年前のカーリーの最後の姿を撮影した動画で、歩くことも困難な状態のカーリーが草の上に横たわる姿が映っていた。
するとそんなカーリーのもとに茶色の牛が寄ってきて、カーリーに優しく鼻を寄せた。さらに、もう1頭がカーリーの顔のそばまで頭を下げ、まるで彼の状態を気にしているようだった。その後も群れの仲間が次々とやってきて、カーリーの周りを囲んで頭を優しく擦り付けたり、鼻を寄せるなどした。
それは、牛たちがカーリーの死期を感じ取り、最後の別れを告げているかのように見えた。そして、カーリーは仲間に看取られながら安楽死し、安らかに息を引き取った。Facebookの投稿には、以下のように綴られている。
「カーリーが手術不可能な位置にあるがんを発症した時、群れの仲間は彼に別れを告げる時が来たことを悟りました。牛は非常に社会性の高い動物です。群れで生活するためにお互いを慰め合って支え合い、病気の牛に寄り添うことがよくあります。」
「牛に感受性があることは知られていますが、人々は牛にも親友がいることを知ると驚きます。牛たちは最も親しい仲間から離されるとストレスの兆候が表れます。それは人間と同じ感情を抱くことを示しているのです。私たちは6年前にカーリーを亡くしましたが、他にも農場の動物たちが最後の時を迎えた仲間を慰める姿を私たちは何度も見てきました。彼らはただの“何か”ではなく“誰か”として尊重されるべき存在なのです。」
この感動的な動画には、「動物は無邪気で純粋な愛に満ちている」「とても愛情深いね。きっとまた一緒になれるよ」といった声が寄せられた。また、米ニュースメディア『Newsweek』の取材に対して、同団体の動物保護責任者シエラ・ベッシーさん(Sierra Bessey)はカーリーについてこのように語った。
「私たちはカーリーが餌を食べなくなった時、異変を感じました。カーリーは餌を食べたそうにするものの、数口ほどしか口にしなかったのです。この行動は過去にカーリーが潰瘍を患っている時と同じだったため、再び潰瘍かと思いました。」
当初は潰瘍だと思われていたカーリーだったが、獣医の診察の結果、カーリーの肺の近くに大きな悪性腫瘍が見つかった。腫瘍は手術が困難な位置にあり、そのまま牛たちに囲まれ、安らかに見送ることにした。
シエラさんによると、カーリーを安楽死させるために呼ばれた獣医のトラックを追い払おうとする牛もいたが、カーリーと最も仲がよかった黒い牛“ロージー(Rosy)”は、落ち着いて別れを告げたそうだ。
画像は『Farm Sanctuary Facebook「When Curly developed inoperable cancer, his herd knew it was time to say goodbye.」』より
(TechinsightJapan編集部 MasumiMaher)