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【松田聖子と財津和夫メロディ】その源流はチューリップ、いや、ザ・ビートルズにあり!

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2025年10月15日 松田聖子の作曲家別企画アルバム「Seiko Invitation -Kazuo Zaitsu works-」発売日

松田聖子に24曲を提供した財津和夫


松田聖子のデビュー45周年を記念して、財津和夫・大瀧詠一・細野晴臣・呉田軽穂が提供した楽曲を収録した、松田聖子 × 作曲家別企画アルバム “Seiko Matsuda Composer Series” 4タイトルが10月15日にリリースされた。松田聖子の代表的な作詞家といえば松本隆だが、作曲家といえば、この4人を思い浮かべるリスナーも多いはず。しかも4人は、作曲家というよりビッグネームのアーティストたちだ。

そう、これらのアルバムを聴けば、1980年代のポップスを松田聖子がリードしていたことがよくわかる。そして、この4人の中で最も多い24曲を提供し、今回の企画で2枚組としてリリースされた作曲家が、チューリップの財津和夫である。このコラムでは財津が提供した楽曲を集めた『Seiko Invitation -Kazuo Zaitsu Works-』から数曲をピックアップし、そのメロディーに着目して語ってみたい。

レコーディングの際に松田聖子が曲に難色を示した「チェリー・ブラッサム」


まずは、松田聖子のディスコグラフィーに財津和夫が初めて名を連ねた4枚目のシングル「チェリー・ブラッサム」から始めたい。この曲は、新しい自分と恋の始まりを歌った躍動感のある作品。曲調も、セカンドシングル「青い珊瑚礁」やサードシングル「風は秋色」のアメリカンポップス風で丸みのあるメロディーから、ロック風で同一音程が続く直線的なメロディーへと変化した。

これについては、松田聖子をプロデュースしたCBS・ソニー(当時)のディレクター・若松宗雄も著書『松田聖子の誕生』の中で述べており、レコーディングの際に松田聖子が曲に難色を示したエピソードを紹介している。だが、この直線的で同音が続くメロディーこそが財津和夫が作る曲の魅力だ。サビの「♪つばめが飛ぶ 青い空は」から断続的に表れる同音進行は、曲中で最高潮に盛り上がる部分。歌詞に描かれた女性が抱く未来への期待が伝わり、聴いていてワクワクする。

同音が効果的に使われた「夏の扉」と「未来の花嫁」


この同音メロディーは、続く5枚目のシングル「夏の扉」でも聴くことができる。歌詞でいうと、Aメロの「♪前を歩いてく」「♪ベールの向こうよ」といった部分に同音が使われ、段階的に音程がジャンプする「♪フレッシュ!フレッシュ!フレッシュ!」3連発をお膳立てしている。

また、同音進行が最も効果的に使われているのが、アルバム『Candy』に収録された「未来の花嫁」のサビだ。歌詞の女性が男性に最も言いたかった言葉「♪プロポーズはまだなの ねえ その気はあるの」が同音に乗ることで、リスナーの心にズバッと刺さってくる。2番のサビでは「♪ねえ 未来の花嫁 隣にいることを」と、満を持してタイトルワードが登場し、同音進行によって強調されてリスナーの心に刻まれる。

同音メロディーの源流は、ザ・ビートルズ


こうした財津和夫の同音メロディーは、チューリップの代表曲にも見られる。イントロなしで同音のサビから始まる「心の旅」、同音を繰り返すサビが特徴的な「虹とスニーカーの頃」、同音メロディーが連続する「夏色のおもいで」などで、いずれも同音が曲の効果を高めている。

そして、同音メロディーが特徴の曲は、財津和夫が多大な影響を受けたザ・ビートルズに多い。その代表はAメロがひたすら同音の「ヘルプ!」だが、他にも「カム・トゥゲザー」、「イエロー・サブマリン」などがすぐに思い浮かぶ。また、アルバム『ラバー・ソウル』に収録されている「ドライヴ・マイ・カー」も出だしからひたすら同音が続くが、財津が松田聖子に提供した「星空のドライブ」(アルバム『Candy』収録)も出だしから同音が続く。しかも、両曲のテーマはドライブ。そう、財津和夫が作る曲の特徴である同音メロディーの源流はザ・ビートルズにあり、それが松田聖子の楽曲にも流れていると思うと感慨深い。

「サボテンの花」を彷彿させる「水色の朝」


ということで、チューリップやザ・ビートルズにも言及しつつ、財津和夫が松田聖子に提供した楽曲に見られる同音メロディーについて紹介してみた。もちろん、同音だけが財津和夫の持ち味ではない。ミディアムテンポで始まりサビで一気に盛り上がる楽曲も魅力だ。

その代表は、6枚目のシングル「白いパラソル」だ。ゆったりした曲調で始まり、サビで一気に高音へジャンプする。このギャップがリスナーの心をときめかせ、いつまでも耳に残るエバーグリーンな曲となる。筆者が特に好きな曲は、アルバム『Pineapple』に収録された「水色の朝」だ。チューリップ「サボテンの花」を彷彿させるドラマチックなサビが魅力で、松田聖子の甘いボーカルと大村雅朗の洗練されたアレンジも素晴らしい。何度聴いても心が洗われる。

こうして振り返れば、松田聖子の作曲家として若松ディレクターが財津和夫を選んだことは、1980年代に全盛を迎える質の高いアイドルポップスの出発点になったことは間違いないだろう。財津和夫が提供した曲は若い世代にも支持され、今も色あせずに聴かれ続けているのは必然なのだ。

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