【京都観光の予習】京野菜~京の食卓を支える地ものたち~
京野菜は都という大きな都市人口を支えてきた野菜でもあり、伝統的にまちの近郊で栽培されてきました。水に恵まれ、盆地で夏は暑くて冬は寒いという地理的条件も、野菜を育てるのに適していたようです。明治期以降に導入された西洋野菜がかけ合わされていないのが最大の特徴で、九条ねぎや鹿ヶ谷かぼちゃなど、本来の産地名がついているのも特徴のひとつです。
京野菜
京野菜は野菜としての味が濃いのが特徴です。実際に食べてみるとわかりますが、一般的な品種に比べると際立ってしっかりした味わいがあり、なかなかの個性派ぞろい。
現在、「京の伝統野菜」と「ブランド京野菜」という二つの認定があります。前者は京都府内で明治期以前に導入された歴史ある野菜が条件。後者は優れた品質で、安心・安全と環境に配慮した生産方法をとっている野菜が対象となっています。こうした野菜のブランド化が、京野菜ブームのきっかけになっています。
参考:京野菜(JA京都)
https://jakyoto.com/kyoyasai/#kyoyasai
京たけのこ
春の京都では「朝堀り」たけのこを手に入れるのが何よりのぜいたくです。掘ってからゆがくまでの時間が短いほど、あくが少なく美味。新鮮であれば、香りをそこねないために、水だけでゆがきます。
日本一の品質といわれる京都のたけのこは、色が白くてやわらかく、歯触りが良いのが特徴です。この品質を生みだしているのが、1年間かけて竹薮を手入れしている栽培法です。冬には「敷き藁(わら)」や「置き土」をしてふかふかの土壌を作り、収穫後は掘った穴に「お礼肥料」を入れるなど、必ず次の年に備えます。地表に出るまでに「ほり」という道具を使って掘りだすのも色白のたけのこを好む京都ならでは。ちなみに、最高級品は、「白子たけのこ」と呼ばれています。
伏見とうがらし
江戸時代の文献にも登場する伏見のとうがらし。京都市伏見区で古くから栽培されてきた、辛くないとうがらしです。ちりめんじゃこと一緒に炊いたり、そのまま焼いたりして食べますが、葉も木胡椒として佃煮にして食べることができます。同じ京の伝統野菜の中には、ほかに田中とうがらし、鷹ヶ峯とうがらしがあります。ブランド京野菜の万願寺とうがらしもよく流通していますが、これは大正期に伏見とうがらしと大型ピーマンとの交雑によって舞鶴で生まれたそうです。
賀茂なす
賀茂なすは、もともと京都市北区の上賀茂で栽培されていきました。旬は夏で、ころんと丸くて大きく、黒紫色が美しいナスです。食べ方は、炊くよりも、焼くか、油で揚げるかして、田楽などにするのが適しているようです。最近では上賀茂以外の地域でもたくさん栽培されていますが、やはり上賀茂産は、独特のおいしさがあるのだとか。
京都の伝統野菜の中にはほかにも、山科なす、漬物にされる小さなもぎなすがあります。
鹿ケ谷かぼちゃ
まるで瓢箪(ひょうたん)のような不思議な形のかぼちゃです。夏に収穫され、京都では7月25日に京都市左京区の安楽寺で行われる中風封じの「かぼちゃ供養」に使われることで有名です。寺に参拝した人々に炊いたかぼちゃを振る舞い、中風にならないように祈願する行事です。昔は寺に近い鹿ヶ谷近辺で栽培されていましたが、現在は宅地化が進んだため、ほとんど栽培されていません。甘みはエビスかぼちゃに劣りますが、昔ながらの味と形には独特な魅力があります。
松茸
今ではほとんど採れませんが、京都は昔から松茸の産地として知られ、北山、雲ヶ畑、金閣寺や仁和寺の裏山など、町の周辺でもよく育ちました。公家の日記には、松茸狩りの記録が多く残り、秋の行事として楽しんだ様子がうかがえます。江戸時代には、京都から江戸への貴重な贈答品にもなっていました。
聖護院だいこん
丸くて大きなカブのように見える聖護院だいこんは、京都の冬の食卓に欠かせない野菜です。おでんに入れれば柔らかいのに煮くずれせず、甘みもたっぷり。口に入れてほろりと溶けるような食感が何よりの魅力です。そのまま生でサラダなどにしてもおいしいのですが、とにかく煮込み料理に適した種類のだいこんです。丸だいこんの一種で、もともと鹿児島の桜島だいこんと同様に、愛知県の尾張地方から伝わったといわれています。名前の通り、昔は京都市左京区の聖護院で栽培されていましたが、現在は久御山や淀のあたりで多く栽培されています。
堀川ごぼう
現在の京都市上京区の正親小学校あたりには昔、豊臣秀吉が建てた聚楽第がありました。なんと、豊臣家滅亡後にはゴミ捨て場と化してしまうのですが、そこに植えて偶然大きく育ったのが、堀川ごぼうのルーツといわれています。
堀川ごぼうは、太くて中は空洞というユニークな形が特徴です。料理店では、空洞になった部分に鶏や鴨肉などを詰めたりして調理することが多いようですが、風味がよいので、きんぴらなどにするのもおすすめです。京都のおせち料理にも使われる食材です。
水菜
水菜は関西では古くから栽培されてきた野菜です。関東では京菜、関西では水菜と呼び、京都には水菜の自然交配でできたといわれる壬生菜もあります。
新鮮な水菜を食べると、口の中でハリハリという音がしますが、この食感にちなんで名づけられたのが、ハリハリ鍋です。水菜の産地である関西で生まれた鍋料理で、水菜と鯨肉の少し癖のある食材同士の組み合わせが絶妙な風味を出してくれます。世界的な捕鯨規制で鯨肉が高級化しているため、現在では庶民の味とはいかなくなってしまいましたが、昔は安くておいしい食べ物でした。
京都の一般家庭では安価な油揚げと一緒に炊いて食べることが多く、鍋ものには壬生菜の方を好む人もいます。おいしく味わうには、煮すぎないことがポイントのようです。
九条ねぎ
京都でねぎといえば、葉が青々とした九条ねぎを挙げずにはいられません。うどんやそばなどに添えられるのも、きまって九条ねぎです。
1年中出回っていますが、旬は冬。気温がぐっと下がって霜にあたると、ぬめりが出て甘みを増すのです。
ねぎは大きく分けると2種類に分かれ、関東では、白い部分を食べる根深ねぎが流通しています。関西では、九条ねぎのような青ねぎが好まれています。今でも京都市内の九条あたりには、ねぎ畑がたくさんあり、代表的な産地となっています。
壬生菜
壬生菜は江戸後期に、京都市の壬生地域で栽培されていた水菜の自然交配から生まれた野菜といわれています。葉がギザギザの水菜に比べると、葉が丸みを帯びているのが特徴で、味や風味も微妙に違います。
生で食べるよりも、漬物にしたり、鍋もので味わったり、昔は鯨のコロ(いりがら)と炊き合わせたりしたようです。
参考文献
「京都」×わカル - 京都の伝統・文化・暮らしのガイド 京都市産業観光局観光MICE推進室
記事を書いた人:京都観光Naviぷらす編集部
「京都観光Naviぷらす」は、京都市観光協会が運営する「京都旅をより快適により深く楽しむ」記事サイトです。旅のいろは、交通活用術、京文化の入門知識、京都人への取材記事などをお届けします。