平塚市 浅間町町内会が休会 自治会に初の「空白地帯」
平塚市の浅間町町内会が3月31日付で休会した。同地域の住民らは新たに自主防災組織を立ち上げて4月から活動しているが、平塚市内の自治会・町内会としては初めて「空白地帯」が発生したことになる。
浅間町町内会はJR平塚駅北口から徒歩圏、平塚市役所本庁舎の南西に位置する単位自治会。エリア内にある住居、事業所は270軒ほど(コンフォール平塚、チュリス平塚、藤和コーポ除く)で、町内会会員は90世帯ほどだった。
同町内会は活動の見直しや課題改善に取り組んできたが「活動の継続は無理」と休会を決定。昨年9月に崇善地区自治会連絡協議会(崇自連)の会議で3月末をもって休会することを伝えた。地域住民たちは自らが必要と考える「防災・防犯・美化」の活動に注力する自主防災会を組織し、4月から運営する。
自治会・町内会活動を所管する平塚市協働推進課によると、マンション自治会などが活動を休止することはあったが、地域の自治会が休会するのは市内初のこと。これまで存続困難な自治会があっても隣接する自治会と組織を合併するなどして「空白地帯」が生じることは回避してきたという。同課は「町内会は住民の自主組織。市が活動継続を強制することはできないので見守るしかない」と嘆息する。
自治会が休会することで、どのような影響があるのか。同課は「下水道工事のお知らせなど市の情報が地域住民に伝わりづらくなるのが心配だ」と話し、民生委員児童委員の選出への影響や住民の合意形成の場がなくなることも懸念する。
平塚市提供の資料によると、市内の単位自治会の数は2009年の236がピーク。そこから合併やマンション自治体の休止などで減少し24年は225だった。
役員の成り手不足深刻
22年から浅間町町内会の会長を務めた武田光比古さん(76)は、町内の課題対応などの参考にしようと、会員対象にアンケート調査を複数回実施した。初回は平塚市民活動センターに協力してもらい23年10月に実施。町民に防災の不安があることが分かると、防災ガイドを全世帯に配布した。
その一方で、武田さんは町内会運営に違和感を抱いていた。積極的に活動する会員は少なく、顔を揃えるのは役員ばかり。役員の成り手もなく、一部の住民に負担がしわ寄せされていた。
「町内会は必要なのか?」24年9月の調査で会員に問うた。43世帯から回答を得て、23世帯(53・5%)が不要と答えた。必要と答えたのは15人(34・9%)。役員として参加が可能と答えたのは、わずか3人だった。「町内会活動は続けられない」と判断せざるを得ない状況だった。
「充て職」多く疲弊
武田さんは市から依頼される市民活動団体への人材輩出も負担だったと吐露する。スポーツ振興や美化活動を目的とした各種団体だ。町内会役員が「充て職」として参加している慣例があった。
崇自連を介して浅間町町内には23年度は15団体から派遣依頼があり、役員総出で9団体に対応した。翌年は役員から「出向したくない」との声が多く5団体に減らした。頼まれると断るのが辛いが、担い手がいない。会長・役員が出席する会合も多く負担という。
武田さんは訴える。「問題を未来に先送りしたくなかった。私たちが投じた一石が平塚の自治会・町内会の在り方を考えるきっかけになれば」