自主防結成後初 釜石東中が新年度スタートで防災オリエンテーション 校内の備えを確認
釜石東中(高橋晃一校長、生徒86人)は4月30日、年度初め恒例の防災オリエンテーションを行った。2011年の東日本大震災で受けた同校の被害、復興の歩みを知り、防災力を高めるための活動。本年1月に県内初の中学生による自主防災組織(自主防)を立ち上げた同校。“結成元年”の取り組みを深化させるべく、生徒らは各種災害への備えを再確認するなどし、発災時の適切な行動を考えた。
全学年を縦割りにした3つの組団ごとに6項目の活動を展開。2、3年生は初めて臨む新1年生(33人)にアドバイスしながら活動した。校内の災害への備えを確認する活動では、ウオークラリー形式で消火器・栓、担架、自動体外式除細動器(AED)が設置してある場所をチェック。校舎図に印を付けて全体の配置も頭に入れた。合わせて避難経路も確認した。
2階の防災備蓄倉庫では在庫の種類と数を確認し、リストに書き込んだ。同校が鵜住居小と共用する校庭と体育館はそれぞれ、地震津波、火災、洪水・土砂災害時の緊急避難場所、拠点避難所に指定されている(市指定)。発災が生徒たちの在校時間帯の場合、自らの命を守り、安全が確認された後には、自主防として避難所開設にあたることを目指している。生徒らはこの日、毛布や飲料水、炊き出し釜、暖房器具など必要な備品が倉庫内のどこにどれだけあるかを把握。災害用の簡易トイレや段ボールベッドの組み立てを体験し、避難者名簿の作成の仕方も教わった。
震災前から行われてきた同校の防災の取り組み、被災から復興までの歩みを知る活動も。2009年に当時の1年生が制作した津波防災の啓発DVD「てんでんこレンジャー」の視聴では、自分の命を守るために必要な、▽大きな地震がきたら高い所を目指してひたすら逃げる▽いつでも避難できるよう枕元に衣服や持ち物を置いておく▽避難場所や待ち合わせ場所を普段から家族で話し合っておく―ことを学んだ。
同校には14年前の震災被害や世界中から受けた多くの支援を一堂に見ることができるメモリアルルームが開設されている。津波で全壊した校舎を含む鵜住居地域の甚大な被害、数えきれない支援に力をもらい地域とともに歩んだ復興への道のり…。生徒らは先輩方が経験してきたことを写真や支援品などから感じ取り、学校や地域のためにこれからできることを考えた。
1年の川崎煌聖さんは「段ボールベッドの組み立てなど、避難してきた人たちへの対応の仕方が少し分かった。寝ている時とか、いつ災害があっても逃げられるよう準備していきたい」と知識を深めた様子。震災は生まれる前の出来事だが、親から話を聞き、幼稚園、小学校と避難訓練を重ねてきていて、「いざという時の行動は身に付いている」。中学生になったことで、「自分の命は自分で守ることはもちろん、周りに人がいる時は呼び掛けをしながら逃げたい」とステップアップを望んだ。
同校の自主防は全校生徒と教職員で組織する。本年度は教職員19人を含め105人体制。会長を務める千葉心菜さん(3年、生徒会長)は結成後初の本格的な活動を終え、「みんな真剣に協力し合って取り組めていた」と一安心。組織の立ち上げに携わり、本年度が実質1年目となるが、「災害時に誰もが自分の立場を理解し、的確な判断と行動ができるよう学年を超えて学んでいけたら。全校参加の地域を巻き込んだ訓練もやりたい。活動を浸透させるために回数も増やせれば」と願う。
同校が掲げる生徒像の一つが「助けられる人から助ける人へ―」。防災、命の学習に加え、各種地域貢献活動で「人を助ける」「誰かのために動く」ことができる人間を目指す。意欲的に取り組めるよう設けられているのが「EAST(イースト)レスキュー隊員」制度。各学習、地域活動への参加でポイントを集めると5~1級まで取得可能。普段から地域とのつながりを深めることで、災害時のスムーズな連携を図る狙いもある。オリエンテーションではその隊員証も配られた。
復興・防災教育担当の佐々木伊織教諭(28)は「防災に関してはやれることをやりたいという生徒も多い。自身で必要なことを判断し、地域のために動けるようになってほしい。いかに楽しく学んで力をつけていくかが大事。新しいことにもどんどんチャレンジを」と期待を寄せる。