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1歳半健診の問診で1つの「いいえ」。発達の遅れを相談するも「療育を受けなかった」理由

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1歳半健診の問診で1つの「いいえ」。発達の遅れを相談するも「療育を受けなかった」理由

監修:新美妙美

信州大学医学部子どものこころの発達医学教室 特任助教

平均的な成長をしていた乳幼児期。しかし発語が遅く、1歳半健診で様子見に

わが家の息子のトールは、小学1年生の時にASD(自閉スペクトラム症)とADHD(注意欠如多動症)の診断を受けています。生まれた時には特に異常はなく、おすわりや寝返り、身長・体重なども、ずっと平均的なスピードで成長していました。しかし、言葉に関しては通常の目安とされる時期になっても出てくる気配がなく、1歳半健診の頃にもまだ発語がありませんでした。1歳半健診の事前アンケートで、「わんわんなどの意味のある単語をしゃべりますか」という質問項目があったのですが、それだけ「いいえ」の回答になりました。1歳半健診で保健師さんと相談した結果、発語の遅れがあるので定期的に様子を見ましょうということになり、2〜3か月に1回のペースで自治体の保健師さんと面談を行うことになりました。

癇癪、多動、他害……言葉の発達以外にも気になる点が

その頃のトールは、自分のやりたいことへの欲求が強く、止められるとひどく癇癪を起こしたり、外に出掛けると私から離れてすぐに自分の行きたいところに走って行ってしまったりしていました。私はそんなトールと1日中2人きりで過ごしていたので、対応の仕方など悩みも多く、保健師さんとの面談ではいろいろな話を聞いてもらっていました。

発語に関しては、目安の時期からは遅れたものの、だんだんと出てくるようになりました。平均的な発達の子どもが2語文を発するようになる頃には、トールも意味のある単語をしゃべるようになっていました。保健師さんも、平均的な発達の時期から遅れてはいるけれど、トールなりのスピードで少しずつ成長が見られるということで、現時点ではまだ療育は考えず、このまま様子を見ていくことを勧められました。

わたし自身は、トールの発語が遅いことを、そんなに悩んでいませんでした。当時は、トールの他害や癇癪が激しかったこともあり、年齢の近い子どもとの交流がほとんどなかったので、周りの子どもとトールを比べることもありませんでした。

ただ、トールがほかの子よりも癇癪などが激しいということは、わたしも自覚していたので、何かしなければいけないという気持ちはありました。本などで発達障害のことも知っていたので、もしかしたら発達障害か、そうでないとしても同じような特徴を持っているかもしれないと思っていました。

発達の遅れや特性に気づきながら、療育を受けなかった理由

そこまで考えていてすぐに療育などにつながらなかった理由は、やっぱり保健師さんからの、まだそこまで考えなくてもいいんじゃないかという意見が大きかったです。しかし、それだけが理由ではなく、わたし自身も積極的に療育に連れて行こうという気持ちになれませんでした。療育のイメージが湧かなかったというのもありますが、療育に行くとどうしても年齢の近いほかの子どもたちとの交流があると思ったからです。癇癪が激しく、他害が出やすいトールを、同じ年代の子の輪の中に連れて行く気力が、その頃の私にはどうしても出てきませんでした。

そんなわけで、トールの発達の遅れや特性の強さには気がついていたものの、当時は療育機関には通いませんでした。その代わり、本などで発達障害のことを自分なりに勉強し、声かけの仕方などを工夫し、対応を変えていくようにしました。

当時の決断に後悔なし!小学6年生になった今感じること

もっと早く支援に繋げてあげるべきだったという意見もあるかもしれませんが、わたしはそういう後悔はしていません。
あの頃の自分にできることを、自分で選んでしていたと思うからです。

今、トールは特別支援学級に在籍していて、放課後等デイサービスに通っています。
私以外にも支援という点でトールに関わってくれる人がいることは、とてもありがたいことだと感じています。
周りの人の力も借りながら、これからもトールの成長を見守っていけたらと思っています。

執筆/メイ

(監修:新美先生より)
1歳半健診のときに発語の遅れがあったものの、実際に診断を受けたのは1年生のときだった経緯について詳しく教えていただきありがとうございます。

トールくんは1歳半で発語の遅れがあり、その時から保健師さんと面談をされてその都度の相談をされていたのですね。その後ことばは増えていったものの、メイさんとしては癇癪など発達特性の強さを感じて、本を読むなどして対応のしかたを工夫されていたのは素晴らしいですね。

発達障害の診断時期については、一般的に早期のほうがよいと言われることもあるのですが、実際にはケースバイケースです。発達障害の診断はあいまいなところも多く、生来の特性の強さだけでなく、環境との兼ね合いで本人や周りが困っているかという要素に左右される面もあります。発達障害は「治す」という性質のものでもないので、がんなど治療可能な病気とは、早期発見の必要度は全く異なるものです。一般的に早期発見、早期療育がよいと言われるのは、ご本人の特性に合った対応が早く分かったほうが、ご本人や保護者・周囲の方たちにとって困ったり、不安に思ったりすることが減るという意味合いが大きいです。

メイさんの場合、保健師さんに相談したり、ご自身で本を読んで工夫をしたりして十分対応できていた時期には、療育を求める必要性を感じていなかったのでしょう。その時期に、受診や検査を受けることを強く勧められても、かえって戸惑われたかもしれません。振り返っても、後悔なしと言い切れるのは、メイさんがトールくんの子育てをしっかり考えて必要なことをご自分で決めてきたからなのでしょう。素敵です。

診断は一概に何歳ぐらいがいい、いつまでにと決められるものでもなく、それぞれにちょうど良い時期やタイミングがあるので、地域の体制としては、検査や診断が受けたいというニーズがあった際にはできるだけ速やかに、しかるべき機関につながれる体制をつくっておけることが理想だとは思っています。

(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

ADHD(注意欠如多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。

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