ごみ拾い日本一 川口工業高校「掃除部」
毎週月曜日は東京新聞との紙面連動企画。今日は、私がちょっとびっくりした記事を取り上げます。それは、「TOKYO発」という、朝刊・最終面の特集記事。なんと、高校生の部活動で「掃除部」があり、ごみ拾いで日本一になった、というのです。
一般の生徒の掃除の後、残った落ちにくい汚れを掃除部が落とす!
でも、普通の生徒も掃除はしますよね。では、掃除部っていったい何をするの??埼玉県立川口工業高校「掃除部」部長、3年生の阿部一生さんのお話です。
埼玉県立川口工業高校 掃除部・部長 阿部一生さん
「一般の生徒たちも掃除をするんですが、ほうきで掃くだけなので、隅とか、頑固で落ちない汚れ、キズとかが残っているので、そういう所を掃除部が掃除してます。普段、生徒が触らないような掃除道具とかもいっぱい触ったりするので、知識が付く部活だと思います。技術も上がります。
今は、3年生が3人、2年生が5人で、計8人でやってます。卒業してしまった3年生の先輩方がすごく多くて、前は24人くらいいたんですけど、だいぶ少なくなってしまったので、1年生をいっぱい入れてもっと大規模な部活にしていきたいな、と思っています。
僕、実は昔、掃除がキライで先生とかにいっぱい怒られてたんですけど、掃除を好きになれたらな、っていう気持ちがあったので、掃除部に入りました。外掃除とかも行ったりするんですけど、近所の人からありがとう!とか感謝の気持ち、もらったりして、それが嬉しくて続けられてます。」
一般の生徒が掃除した後に、さらに綺麗にするんです!学校内だけではなく、近所のスーパーの周りや市営グランドなどの外掃除も。また、他の部活のように合宿もあります!
(この春休みの合宿で、掃除した部分と、まったく掃除されてない屋上へ続く階段!すごい違いですね~!)
私がお邪魔した日は、新入生に部活動を紹介して勧誘するという大事な日。掃除部の説明会の会場は、なかなかの集まり具合で、ポリッシャーという機械を実際に動かしながら部長が中心となって説明をしていました。
GWが終わるころには、新入生は部活を決めるそうですが、10人は入ってほしい!と阿部部長は話していました。
(これが、ポリッシャーです。黄色いつなぎは阿部部長。)
(部活説明会に来た新入生に、ポリッシャーを体験してもらって、掃除部の魅力を伝えます!)
この汚れは落ちます、必ず。あれも落ちますね。
実際に、校舎の長~い廊下を掃除していく阿部部長に同行しました。
「モップかけた後に、上履きとかで歩かれちゃうと、上履きの後が付いちゃったりするので、それを防ぐために後ろから乾拭きをしてもらってます。(あれが残った汚れ?)はい、そうですね、あれは落ちます、必ず。あ~落ちますね。
(どうして分かる?)いや、なんか分かっちゃうんですよね。触ってみると分かりやすいかもしれません。ここツルツルしてるんです、ここはザラザラって感じですよね、その感じで、分かる感じがします。キズがツルツルだと、その傷がワックスの中に入っちゃってるので、それは取れないんですけど、このザラザラっとしたのは、ワックスの上に付いている汚れなので落ちます、必ず!」
(それぞれ、掃除道具を持って、テキパキと。床がピカピカになっていきます!)
廊下の汚れを見ただけで、落とせるか分かるんですね。部長がこれは落ちますと言うと、部員みんなもウンウンと頷いていました。
部員が全員、色違いのつなぎを着て、テキパキ、隅から隅まできっちり磨き上げていく様子は、なかなかのもの。廊下は、ピカピカになりました。
「スポGOMI甲子園」3回優勝の強豪!!
そして、川口工業高校掃除部は、昨年の夏、ごみ拾い日本一に輝いています。「スポGOMI甲子園」という、全国の高校生がごみ拾いを競う全国大会なのですが、副部長の鈴木薫さんに、全国大会についてお話を聞きました。
埼玉県立川口工業高校 掃除部・副部長 鈴木薫さん
「燃えるゴミ、燃えないゴミ、ペットボトルなどをポイント化して、その合計点で競い合う大会になります。県大会ですと公園、全国大会ですと都市の街中でやったりしました。下見は禁止なんですけど、グーグルマップでこういうとこにゴミがありそうってとこを絞って、そこに行ってゴミを拾いました。
普段の部活で、外掃除でごみ拾いをするんですけども、ここら辺周辺は、条例でタバコが禁止されてる区画より、ちょっと出たところなので、けっこうタバコのゴミが多かったり、公園のところにゴミが多かったりとかで、あ、ここにあるんだなっていうのを培ってきて、コツなどを踏まえて全国大会でやれました。作戦成功です!」
県大会を勝ち抜き、全国大会で優勝!6年前から参加して、今回で優勝3回という強豪校です。
普段の掃除培った知識で、ゴミがありそうな場所を絞って集めました。普段から活動しているから、どんな場所にゴミが多いか分かるんですね。工業高校ならではの技を活かして、ゴミ拾い用の自作の道具も作っています。
(副部長の鈴木さんに教えてもらって、私もポリッシャー初体験させていただきました!)
掃除部!?何それ? いいね~!応援したい!!
こうした全国大会に参加する学校や生徒は年々増えては来ていますが、とはいえ、まだまだ、他の部活に比べると、珍しい「掃除部」。顧問の牧之瀬貴子先生は、その珍しさゆえの魅力や強みがあるとおっしゃいます。
埼玉県立川口工業高校 掃除部・顧問 牧之瀬貴子先生
「一生懸命掃除してる高校生のお手伝いをしてあげたいってご連絡をくださって、ポリッシャーの会社とかを作ってる会社はその物をくださったり、お掃除の会社は自分たちが使ってて使いやすいよっていうのを持って来て、その使い方を教えて下さったり、この間、春休みに合宿があった時にも、トイレ掃除の専門の人が来てくださったし、プロの人がわざわざ来て教えてくださったりしてます。
あとは、なんかやっぱり珍しいし、あんまり聞いたことがないので、会社の方も、何それってなるみたいで、学校の中の掃除してるんです、って言うと、人のイヤなことをやってくれるような、そういう子なら大丈夫みたいな感じで、だいたい合格してくるんですけど、就職が決まるっていうか。」
多くの会社からなにか手伝えることはないか?と連絡が来ているそうで、ユニフォームのつなぎが、夏は暑くて冬は寒くて、と言ったら、任せて!と言ってくれた会社も。
しかも、就職の面接で、このユニークな部活は大きな強みになるようで、先輩たちは面接で話すことに困らなかったとか。
こうした学校外の会社、社会とのつながりができていく、というのも、とても良いですよね。さて、ゴールデンウイーク明け、新入部員がたくさん入ってくれることを祈りつつ!
掃除部のみなさん、活動、がんばってください!!
(TBSラジオ『森本毅郎スタンバイ』取材・レポート:近堂かおり)