稲垣吾郎が全身全霊で挑む、ベートーヴェンの半生 舞台『No.9 -不滅の旋律-』4度目の上演が決定
2024年12月~2025年2月、東京・福岡・大阪・静岡にて、稲垣吾郎主演、舞台『No.9 -不滅の旋律-』が上演されることが決定した。
音楽の進化&深化を数十年早めたといわれるドイツの音楽家ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン。ピアノソナタ「悲愴」「月光」や交響曲第3番「英雄」、第5番「運命」など、その楽曲は、後世の音楽家たちにも多大な影響を及ぼしている。
そんな “楽聖”ベートーヴェンの苦悩の人生と創作の深層に迫り、2015年の初演以来多くの観客を感動の渦に巻き込んできた舞台『No.9 -不滅の旋律-』が、4年ぶりの幕を開けることが決定。
タイトルの『No.9』とは、ベートーヴェンが作曲した9番目にして生涯最後の交響曲第9番 ニ短調(第九)のこと。豊かな才能に恵まれる一方で、持ち前の激情や孤独感から周囲の人々や社会とぶつかり続けた男が、自らの音楽のあり方を掴むドラマのクライマックスには、やはり第四楽章の合唱「歓喜の歌」が鳴り響く。
2018年、ベートーヴェン生誕250周年にあたる2020年と再演を重ねた本作。くしくも今回は「第九」初演から200年の節目にあたる年の上演となる。個性豊かな登場人物たちが織りなすドラマは、時を超え、聴き慣れたあの旋律をよりいっそう奥深く響かせ、その場に居合わせる人々の心を揺るがすだろう。
初演からベートーヴェンを演じ、回を重ねるたびに熱演を見せるのは稲垣吾郎。暴力的な父親による幼少期のトラウマに加え、複雑な性格がもたらすさまざまなトラブルに悩み、さらには創作に深刻な影を落とす病に冒された焦燥感、孤独感、その末にたどりついた境地を、持ち前の知性と繊細さをもって浮かび上がらせる。初演から9年あまり。本公演中には100ステージ目も迎える今、その人物造形はさらなる奥行き、深化を見せる。
彼を秘書として支えるマリア役は、2018年の再演から参加し、溌剌とした佇まいが強い印象を残す剛力彩芽が続投。ベートーヴェンと対等に渡り合い、インスピレーションを与えるピアノ製作者ナネッテ役には、近年は舞台でもその実力を存分に発揮する南沢奈央が初めて挑む。また、ベートーヴェンのふたりの弟ニコラウスとカスパールには、若手俳優として経験を重ねる崎山つばさ、中尾暢樹がそれぞれ初参加し、新たな息吹を吹き込む。
さらに片桐仁、岡田義徳、深水元基、奥貫薫、羽場裕一、長谷川初範ら実力派俳優たちの続投も得て、分厚い人間ドラマが紡がれる。
また、舞台上には2台のピアノが配され、末永匡と梅田智也のふたりのピアニストが、「悲愴」「熱情」をはじめとする20曲以上のベートーヴェンの楽曲を演奏するほか、オペラやミュージカルで活躍する実力派の声楽家20名がコーラスとして共演する。生演奏ならではのダイナミックな音楽表現にも注目したい。
演出は白井晃、脚本は中島かずき(劇団☆新感線座付作家)、音楽監督は三宅純が務め、3人が中心とするクリエイティブ・チームは、英仏の百年戦争を舞台に破格のスケールで、運命の奔流に飲み込まれていくヒロインを描き出した舞台『ジャンヌ・ダルク』(2014年初演)を皮切りに、本作『No.9』、フランス革命時の死刑執行人の苦悩を描いた『サンソン−ルイ 16世の首を刎ねた男−』(2020年初演)と、足掛け10年にわたり骨太なテーマとエンターテインメント性を併せ持つ時代スペクタクルを世に問い続けてきた。
史実や実在の人物を題材に、大胆な発想の飛躍を加え、一度聴けば脳裏に焼きつく心地よい台詞で劇世界を織り上げる中島は、天才音楽家の葛藤と新たな境地へ至る道程を丁寧に紐解く。音楽にも造詣の深い白井は、ベートーヴェンの楽曲が場面ごとに有機的に機能する演出プランを立案。そして楽曲に対する深い理解のもと、生演奏と環境音のコラージュなどを有機的に繋ぎ、作品世界を貫く「音」を生み出したのは、国内外のアーティストと数多のコラボレーションを行う三宅のマジカルな感性。
そんな出演者・スタッフによって創られた舞台『No.9』が奏でる物語は、多くの人の心を響き合わせ、生きる喜びを思い起こさせていく。どんな公演になるのか、4度目の上演となる『No.9 -不滅の旋律-』に期待しよう。
【STORY】
1800年、刻々と変化する政治情勢の影響を受けつつも、「音楽の都」として栄えるオーストリア、ウィーン。
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(稲垣吾郎)は、豊かな音楽の才能に恵まれながらも、複雑で偏屈な性格のため、行く先々で騒ぎを起こしていた。さらに以前から不調だった聴覚の障害が深刻さを増し、身体のうちに溢れる音楽と不幸な現実の間で、その心は荒んでいる。
だが、彼の才能を深く理解するピアノ職人のナネッテ(南沢奈央)とヨハン(岡田義徳)のシュトライヒャー夫妻、ナネットの妹で後にベートーヴェンの秘書となるマリア(剛力彩芽)、ふたりの弟ニコラウス(中尾暢樹)とカスパール(崎山つばさ)らとの交流が、徐々に彼の内面を変えていく。
病に身をすり減らしながら頭の中に鳴り響く音楽をひたすら楽譜に書き留めるベートーヴェン。全身全霊をかけて取り組んだ「交響曲第 9番」が、初演を迎えたその時、彼の心の内に響いたものは——。
演出 白井 晃 コメント
『No.9』の4度目の上演で、こうしてまた、皆さんとお会いできることを素直に嬉しく思っています。演劇作品というのは、常にコンテンポラリーなものであり、その折々の時勢によって作品の持つ意味も、受け取り方も変わるものです。ですが、この作品が、これだけ長い時間に渡り上演されるのは、作品の中で描かれている世界が、時間を超えてわたしたちに感動を与えてくれるからだと思います。世紀を超えた天才ベートーヴェンが残した楽曲の持つ力は計り知れません。その楽曲に宿った魂に迫るための冒険をわたしたちはこれまでも繰り返してきました。もちろん、この冒険の中心に常に存在したのは、稲垣吾郎という稀有の才能に他なりません。憑依という言葉を思い浮かべるほどに、稲垣さんはベートーヴェンの魂に肉薄し、冒険の先頭に立ち続けてくれました。この作品は、継続して上演する運命にあると思っています。今回の上演は、まだ通過点。この通過点を皆さんに見守っていただきたいと、心から願っております。
主演 稲垣吾郎 コメント
ベートーヴェンを演じていると、ふと自分と重なるような瞬間があり、もう一人の自分といるような感覚に陥ることがあります。回を重ねてもなお、掴みきれないところもまだまだあって、常にベートーヴェン像を追い求めている気がします。
4度目の上演となる今回も、ご一緒するキャストの方々と新たな『No.9』を作り上げていきたいと思っています。
そして、緊張感のある序盤から「歓喜の歌」が響く終盤まで、お客様と一体となってベートーヴェンという人物を動かし、物語を紡いでいくことを楽しみにしています。