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中目黒『アート喫茶フライ』でランチ。アート作品に囲まれて頬張る、懐かしさいっぱいのオムライス

さんたつ

中目黒 アート喫茶フライ

中目黒駅から山手通りを500mほど池尻大橋駅方面に歩いたところに、なんとも懐かしい食品サンプルが並べられたガラスケースが置かれている。ビルの2階にある喫茶店『アート喫茶フライ』のものだ。ナポリタンにオムライス、分厚いガラスの容器に入ったパフェや、手書きのメニュー名が並び、中目黒らしからぬレトロな雰囲気がたまらない。階段を上がって店に足を踏み入れると、広い店内にはアート作品が展示されている。

アート喫茶フライ(アートきっさフライ)

ワインレッドのソファで食べるオムライス

広々した店内。2階で外からの視線が気にならず、落ち着いて過ごせる。

この場所にこんなに広いお店があったのかと驚くほどの店内は、カウンターも入れて48席ある。カウンターのスツールやソファの濃いワインレッドのベロア生地はまさに、ザ・喫茶店の様相。椅子の背もたれのデザインや奥の部屋に使われている壁紙も、どことなく昭和の日本にあった洋風のデザインを思い出させる。しかも人気メニューは、オムライスにナポリタンだと聞くと、なんだかうれしい。

オムライスは1100円。ランチタイムはコーヒー(アイス・ホット)、紅茶のセルフサービス飲み放題が付く。

オムライスにナポリタン、どちらにすべきかと迷った末にオムライスを注文。しばらくすると、子供のころにお店で食べたものや、絵本で描かれているようなイメージと重なるオムライスがテーブルの上に置かれた。

フライパンで丸く焼いた卵にチキンライスをのせて包むオーソドックスなスタイルで、卵の表面はなめらか。スプーンを入れてしまうのがもったいないような気持ちさえ生まれるが、中からオレンジ色のチキンライスが見える瞬間にもワクワクがある。

自家製トマトソースは酸味が上品だ。

オレンジ色のチキンライスは、食べ応えのあるサイズの鶏もも肉とマッシュルームが存在感を主張。玉ねぎが影の立役者として旨味をアップさせているところにもニマニマしてしまう。トマトソースの酸味にはフレッシュ感もあって、やっぱりお店で食べるオムライスはおいしいなぁと思わされる。

カフェの店長だった店主が喫茶店を開いたわけ

今も週1回バスケットボールで汗を流すという店主の佐野翔(さのつばさ)さん。店内にはNBAのグッズも多い。

『アート喫茶フライ』は、2022年5月にオープン。店主の佐野翔さんは、中目黒にある人気のカフェで長く店長を務めていた人物だ。いずれは自分のお店を持ちたいと考えていたときに、コロナ禍が訪れ、次々と自分が親しんできた老舗喫茶店が閉店。そのことが『アート喫茶フライ』を開くことにつながったそうだ。

24時まで営業しているため、お酒も用意。ビアタップの中身はキリンラガー。

カフェの店長だった佐野さんが、どうしてカフェではなく喫茶店を開いたのかと聞いてみれば、「3世代で食事ができる喫茶店の文化を途絶えさせたくないという気持ちがあったからです」との答え。「レトロブームに乗っかったというわけではないんですよ」と付け加えた。

佐野さんはカフェで働いていた間も、プライベートで訪れるのは喫茶店ばかりだったという喫茶店好き。子供のころに喫茶店で過ごした光景が心に強く残っていて、訪れるたびにノスタルジックな気持ちが湧き起こるという。

奥のスペースは電子タバコのみ喫煙可能。

「デパートの上にあった喫茶店でしたね。祖父母や両親、3世代で食事をした記憶があります。そういう思い出は僕だけでなく、たくさんの人に共通していると思います」

長年この場所に設置されていたかのような風格あるサンプルに心奪われる。

そもそもカフェと喫茶店はなにが違うのか。その境目は曖昧だ。佐野さんは喫茶店としてお店を開こうと、カフェと喫茶店の違いについて、調べたり考えたりした。そして佐野さんが納得した答えは、カフェはアメリカやヨーロッパの文化をそのまま取り入れているが、喫茶店は日本発祥の和製洋食を提供するというものだ。そして佐野さんはオムライスやナポリタンといった、日本独自に発展した料理を看板商品に据えた。「ジャパニーズ・トラディショナルなんですよ」という言葉に少し力がこもる。

アート作品をきっかけに喫茶店の文化に触れてほしい

広い壁を利用して大きな作品も展示可能。ゆっくり眺められるようテーブルを離している。

喫茶店よりカフェになじみのある世代にもお店に来てもらいたい、という意図もあって、『アート喫茶フライ』ではアート作品の展示を行っている。写真やイラストなどの平面作品がほとんどだが、モチーフや技法はさまざま。

最初はアート作品を見るために訪れた人が、喫茶店の居心地の良さや日本で生まれた味わいに触れるようになってほしいと考えている。

壁のアートは、過去に展示した作家たちが残したもの。

『アート喫茶フライ』の名前は、佐野さんの名前「翔(つばさ)」から。とんでしまいそうなほどおいしいとか、展示したアーティストが羽ばたいていくようにという意味も加えて名付けたそう。

懐かしい雰囲気でゆっくり羽を休め、喫茶店のメニューでおなかも満足。帰るころには元気に羽ばたけそうだ。

アート喫茶フライ(アートきっさフライ)
住所:東京都目黒区東山1-3-6 クレール東山201/営業時間:11:30〜24:00(23:00LO)/定休日:無/アクセス:東急電鉄東横線・地下鉄日比谷線中目黒駅から徒歩7分

取材・撮影・文=野崎さおり

野崎さおり
ライター
2016 年よりライターとしての活動を開始し、複数のweb媒体で食べ物やお出かけネタを中心に執筆。おいしいものはもちろん、作る人とその背景に興味あり。都内をバスか徒歩で移動するのが好き。

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