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注目の技術「MIRACORE®」で食課題を解決。本能的に食べたくなる植物性食品を体験する「オールパーパス・ビュッフェ・エキシビジョン」が開催

料理王国

注目の技術「MIRACORE®」で食課題を解決。本能的に食べたくなる植物性食品を体験する「オールパーパス・ビュッフェ・エキシビジョン」が開催

「MIRACORE®」は、植物性油脂とたん白を長年研究する「不二製油」が手がける技術プロジェクト。動物性素材不使用で、肉や魚を使った時のような満足感のある味を表現する。この技術を用いて提案する新しい食の概念「オールパーパス」なメニューを体験する試食セミナーが、去る2025年1月、大阪・中之島にて開催された。気になるその味わいや、食にまつわる課題解決の糸口を求め、ホテルや観光事業関係者など60名のゲストと各メディアが集まった。

「MIRACORE®」とは、動物性原料や香料を一切使っていないにもかかわらず、動物性食品特有の旨みや味の厚み、満足感のある味を叶える技術。不二製油が長年研究してきた「植物性油脂とたん白の加工技術の融合によって、さまざまな風味を表現する手法」を駆使し、本能的に食べたくなるプラントベースフードを目指したものだ。

その技術を用い、あらゆるジャンルの料理に欠かせない「だし」として使えるようにした希釈タイプの製品が「MIRA-Dashi®」。複数のフレーバーがあり、現在はチキンタイプ、ビーフタイプ、カツオタイプ、白湯タイプの4種類に加え、貝タイプやエビタイプを開発中だ。

一般的な調味料とは異なり、味を完成させずアレンジの余地を残しているため、さまざまな素材や酒、ハーブ、スパイスなどの要素を足すことで各料理人の目指す味に寄り添う特徴を持っている。

料理人から見たMIRACORE®の可能性

今回の「オールパーパス・ビュッフェ・エキシビジョン」は、前編のトークと、後編のシェフ4名による料理のビュッフェ試食という二段の構成で行われた。

ホテルの料理人や旅行業界関係者60名と各メディアが参加した。

前編のトークセッション第1部では、「食のオールパーパスとは何か、さまざまな視点から食の未来に迫る」をテーマに、フードコラムニストの門上武司さんをファシリテータに迎え、大阪・福島の日本料理店「楽心」の片山心太郎さん、東京・西麻布のレストラン「NO CODE」の米澤文雄さん、「MIRACORE®」を開発した不二製油株式会社 風味基材事業部 部長の齋藤努さんが登壇。

フードコラムニストの門上武司さん、不二製油株式会社の齋藤努さん

日頃から数多くの美食に触れ、中でも「動物性の油脂は魅力的」だと考えてきたと話す門上さんだが、初めてMIRA-Dashi®を用いた植物性のとんこつラーメンを食べた際にはその再現性や味わい、美味しさに驚き、「食のシーンが変わることを確信した」と話した。

松原 龍司さん(龍旗信)
2000年に「塩ラーメン専門店 龍旗信」を大阪・堺にて開業し、一斉を風靡。18年にはフランスに進出。「11年前から研究し、挫折したことのあるヴィーガンラーメンが、MIRA-Dashi®に出会い完成しました。輸出のハードルが低いため、パリ店でも使う予定です」

100%VEGAN&GLUTEN-FREE 完全野菜の塩ラーメン
塩ラーメン専門店のパイオニアであり、ムール貝を効かせた味わいで知られる「龍旗信」の代表作をヴィーガンにした一杯。スープはMIRA-Dashi®のチキンタイプとカツオタイプをベースに、貝タイプを配合。グルテンフリーにもこだわり、自家製米粉麺を使った。

100%VEGAN&GLUTEN-FREE 完全野菜のぶっかけ出汁ラーメン
MIRA-Dashi®のチキンタイプをベースにカツオタイプを効かせ、醤油を合わせたスープで自家製米粉麺を味わうぶっかけ冷やしラーメン。動物性のラーメンは冷えると油脂が固まることから「植物性にしかできない」一品。

100%VEGAN&GLUTEN-FREE 完全野菜の味噌ラーメン
MIRA-Dashi®のチキンタイプとカツオタイプをベースに、開発中のエビタイプを配合。味噌の濃い風味にも負けないエビ風味が香るスープに。MIRA-Dashi®入りの味噌だれを作る際に炒めることで、エビの香ばしさを表現。こちらも小麦粉不使用の味噌や醤油、麺にこだわったオール・グルテンフリー。

高山 仁志シェフ(風の沢 art & cuisine)
宮城県栗原市に建つ築200年の登録有形文化財の古民家でオーベルジュ「風の沢 art & cuisine」を2025年2月に開業。同店ではオールパーパスなメニューを考慮し、ストック類(スープ)は、全てMIRA-Dashi®を導入。「料理人には作り出せない魅力的な素材を生み出してくれて感謝しています」

エビ風味の植物性ビスクスープ
MIRA-Dashi®のエビタイプをベースに、まるでエビの殻から抽出したかのような香ばしさやざらつきのある喉越しを香味野菜の炒め方やスパイス、ハーブの配合で表現。香ばしく焼いた甘いナスを添え、MIRA-Dashi®のエビタイプをオリーブオイルと共に乳化させ、塩と合わせた「エビ塩」を添えた。

豚骨風味の植物性スープカレー
豚骨スープの濃厚な味わいをMIRA-Dashi®の白湯タイプとチキンタイプで表現し、クスクスにかけるスープ状のカレーに。「通常、肉の臭みを抑える目的で使うハーブやスパイスは、MIRA-Dashi®には不要」と香りの強い素材は控えめに。大豆ミートで食べ応えも出した。

同様に、初めてMIRA-Dashi®と出会った時の印象を尋ねられた片山さんは「個人的には、旨みはあるが、余韻や複雑味が不足している第一印象。何か足したいと感じたが、だからこそ、調理する上で料理人がフレキシブルに生かせると発見。多様な可能性がわかった」という。

片山 心太郎シェフ(日本料理 楽心)
「懐石料理 桝田」「とよなか桜会」で経験を積み、2013年大阪・福島で独立開業。今年2月、同エリアで移転・拡大。「研究者と料理人が関わることで、新しい和食の可能性が見えた気がします。近年、時折求められる精進料理にもMIRA-Dashi®を使ってみたいですね」

実際、「さまざまな味を足し算しやすい」と感じると同時に、「和食らしい引き算の考え方によるシンプルな使い方も可能」とのこと。例えば今回、MIRA-Dashi®のビーフタイプに酢を加えただけのタレを「けんちん包み」に添えた品をブッフェで提供したが、これは後者の一例だ。

けんちん包み ミラクルだれ添え
豆腐や玉子、野菜で作る「けんちん地」。これに「乳酸菌を入れることで複雑味を出そうと考えた」と、根菜や豆腐、MIRA-Dashi®のチキンタイプ入りの粕汁を作り、煮詰めたものをブッフェで食べやすいようシュウマイの皮で包んだ。MIRA-Dashi®のビーフタイプを酢でのばした「ミラクルだれ」と共に提供。

大根の風呂吹き チョコレート味噌
MIRA-Dashi®のチキンを煮含ませた風呂吹き大根の上には、不二製油の甘くないチョコレート「カカオエピス」と卵不使用のヴィーガンマヨネーズ、MIRA-Dashi®のビーフタイプ、赤味噌を加え混ぜた田楽味噌を。華やかなチョコがほのかに香り、赤味噌とマッチするまさに研究者と料理人が融合した1品。

蓮根のいとこ煮 コンソメ仕立て
ドライトマトと昆布を60℃で1時間煮込み、昆布を取り除いてからさらに煮ただしに、MIRA-Dashi®のビーフタイプを溶かし、すっきりとした味に。生トマトではなく、ドライトマトを使うことで味の安定性が高まる。具材にはほっこりするレンコンや蓮根饅頭、小豆、金針菜を。

黒米と韓国海苔おむすび 「貝」スプレー
MIRA-Dashi®の貝タイプは加熱しない方が風味のあと残りが強いことから、貝タイプ、チキンタイプ、カツオタイプを配合して炊いたご飯のおむすびに、MIRA-Dashi®の貝タイプを希釈したスプレーをシュッと吹きかけ、旨みの強い韓国産のプレーンの海苔をまぶした。「MIRA-Dashi®のスプレーは応用できると思います」。

これらMIRA-Dashi®の料理人から見た使い心地や使い勝手の他、議題に挙がったのは料理業界が抱える食課題だ。

著書「ヴィーガンレシピ」でも知られ、レストラン業界におけるヴィーガン料理の先駆者である米澤さんは「求めるヴィーガン料理のゴールとは、ヴィーガンではない人が食べてもおいしいこと。植物性素材を使った出汁に、動物性素材の出汁と同様の旨みを持たせるには、結構な手間と長時間の煮詰め時間が必要なことが多い。でもMIRA-Dashi®があることでこれらが解決し、ヴィーガンという世の流れに向き合うハードルがグッと下がる」と話した。

米澤 文雄シェフ(NO CODE)
NYの「ジャン・ジョルジュ」で日本人初のスーシェフに。19年「ヴィーガン・レシピ」発売。22年「NO CODE」開業。「今回は用途の提案や満足感のある濃いめの味を意識して料理を作りました。こうしたヴィーガンのコンディマンやソースを通常メニューに取り入れ、常に持っている状態にしておくと、いいと思います」

ジャガイモのポタージュ ピスタチオのデュカ添え
フレンチではブイヨンをベースにするスープを、香味野菜や不二製油の豆乳クリーム「濃久里夢(コクリーム)」、MIRA-Dashi®のチキンタイプで濃度と深味を出した。「冷製にしても香りが崩れないのが特徴。煮詰めてベシャメルソースとして使い、グラタンなどにもできます」。

大根のピカタ デミグラスソース
大きくカットして茹でた大根の周囲にオニオンやガーリックの粉末を加え混ぜた細切りの大根を衣のように纏わせ、カリッと焼いて咀嚼する1品に。ソースはMIRA-Dashi®のビーフタイプに、シェリー酒や15年熟成のバルサミコ酢、3年熟成の醤油、黒オリーブなどで力強い旨みと奥行きを加えた。

BBQカリフラワー
米国人にとって思い入れの強いBBQソースをヴィーガンに。現地では豚系の味がベースになることが多いが、MIRA-Dashi®のビーフタイプを使い、スモークパプリカパウダーやエスプレッソ、チリパウダーなどで深みをプラス。カリフラワーに塗りながらローストし、香ばしさを加えることで満足感につなげた。

おにぎりジャージャーミート
大豆ミートをMIRA-Dashi®のビーフタイプとタマネギ、ショウガ、シイタケ、ゴボウ、甜麺醤と共に炒め、おにぎりに重ねた。この「ジャージャーミートは常備すると便利」と米澤さん。他にも麺にかければジャージャー麺に、湯で溶いて留めればあんかけに応用可能。

食課題を解決し、選択肢を増やすオールパーパス

料理人らの声を受け、齋藤努さんは、MIRACORE®の開発の経緯を紹介。また同社が提案する新しい概念「オールパーパス」について解説した。以下が、その概要だ。

オールパーパスの世界では……

ビーガンやベジタリアン、ハラールといった菜食主義や宗教の有無に関わらず、誰もがおいしい料理を体験できる。増加するインバウンド対策や集客に効果が。手軽に使える希釈タイプのだしのため、人件費の削減や円滑なオペレーションにも効果的。通常ならフォンやブロード、スープといっただしを作る際は長時間加熱するが、手軽に使えるため光熱費の削減にも。食肉価格の高騰といった食料問題の中、原材料費の削減や枯渇する資源の対策にも。畜肉エキスを含む動物性原材料は、特に欧米において輸出制限があるが、植物性ゆえに非該当で海外ビジネスの可能性も広がる。

つまりオールパーパスとは、食の多様性や効率性、持続可能性の実現であり、「選択肢が増えること」だという。今後においては「私ども原料メーカー主体というよりも、料理人の皆様や飲食を提供される方々が、独自の使い方や提供方法における答えを持っている。今後も皆様と共創したい」と呼びかけた。

複合体である“味覚”の組み立てを解説

続くトークセッション第2部では「アカデミックな視点から見る味の成り立ちとMIRACORE®」をテーマに、立命館大学 食マネジメント学部教授でMIRACORE®の食味評価にも携わった和田有史教授と宮城県栗原市のオーベルジュ「風の沢 art & cuisine」の高山仁志さんが登壇。

和田教授はまず味覚の感じ方を、

味を感じる「味覚受容体」香りを感じる「臭覚受容体」温度や食感を感じる「体性感覚」

から成る複合体であると解説。「組み立てが大切」と説く。

立命館大学食マネジメント学部の和田教授は多感覚・認知デザインを研究。その知見に皆が聞き入った。

MIRA-Dashi®もまた、例えばカツオタイプであればカツオの味を感じる「味覚受容体」「臭覚受容体」「体性感覚」を不二製油のテクノロジーで複合的に再現したものであり、「人間の知覚」を掘り下げて組み立て「人の心象に訴える新しい素材といえる」と評価した。

「味の組み立てが重要」という意見に賛同する高山さんは「料理を作る際は、MIRA-Dashi®に要素を足して肉付けしていく感覚。エビタイプ、チキンタイプなどさまざまなタイプがあるが、エビやチキンそのものではなく、少し別の素材と捉え改めて各MIRA-Dashi®に合う組み立てを行うと味が決まりやすく、かつ、MIRA-Dashi®でしか成し得ない味も生み出せる」と話した。

MIRA-Dashi®は、可能性を感じるプロダクト

後半の「ブッフェ・エキシビジョン」では4名の料理人によるプラントベースフード13品と、6種のMIRA-Dashi®の試飲が行われ、60名のゲストがそれぞれ堪能。

シェフたちが自ら料理を手渡しし、多くの質問に答えていた。

参加者の一人、「パークハイアット京都」総料理長の井料 剛さんは「全品食べてみて、可能性を広げることができるプロダクトだと感じた」とコメント。

現在、同ホテルのレストランはア・ラ・カルトのうち10%〜15%の料理をヴィーガンにしているが、MIRA-Dashi®を使うことでより多くのヴィーガンメニューを増やすか、またはヴィーガンメニューを持たずに言われたら対応できると感じ「オペレーションの幅も広がる」と感じたという。

「インバウンドのお客様が多いなかで一番困るのは、急に制限があることを伝えられ、準備が無い中で対応を迫られること。特にだしが一番困るため、MIRA-Dashi®を常備しておけばいいと思った」という。

さまざまな種類のMIRA-Dashi®の料理を食べ比べられる、貴重な機会に。

MIRACORE®が新たな食の価値を創造するきっかけに

閉会の挨拶において大森達司社長は「宗教や食の嗜好、動物愛護の観点など世界においていろいろある価値観の中で、植物性の素材が世界共通の素材なのでは。今回、紹介したオールパーパスな商品が、皆様の課題解決の一助となり、新しい食の価値を生み出すきっかけになれば」と締め括った。

「心の底からおいしくないと長続きしない、買ってもらえない。まずは味を重視した」と話す不二製油株式会社 大森 達司社長。

植物性素材を新しい視点で捉え直し、可能性を開いたMIRACORE®。おいしさを軸に、植物性料理の未来を広げた料理を、多くの食や観光に関わる事業者、メディアの人々が楽しんだ。

MIRA-Dashi®そのものの展示と、シンプルにお湯で割ったスープの試飲も実施。興味津々の様子で試し、現場での使用感をイメージする料理人も多数。

問い合わせ先
不二製油株式会社 風味基材事業部
https://www.miracore.jp

text: 佐藤良子, photo: 高嶋克郎

動物性の「満足感」を植物性で完全再現!?未来を変えるフードテクノロジーイベントに参加してみた | 不二製油 MIRACORE®|

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