いづも巳之助の一株コラム:フジ・メディアHDの株主総会 勝ったのは実はダルトンだ
アクティビストファンドのダルトン社。一昨年からフジテレビにアージャコージャ言っていたが、最近の中居事件でとうとう神風が吹いた。放送法で外資比率が20%超えられない向かい風を完全に追い風に変えてしまったんだ。
もともと彼らは、世間に対して「企業価値を高めるため様々な提案をする」と、それなりの大義を述べるが、簡単に言えば、「株価を物凄く上げて、一気に売り抜けてサヨナラしたい」というわかりやすい仕事だ。
今回の条件は、「年寄りが多いから経営陣を総取っ換えしろ」「運営がひどいから、みんなにプロセスがわかるようにしろ」「金が余り過ぎているから、もっと効果的に投資しろ」「最終的には、株を自社株買いしながら、株主還元をしっかり意識して、株価をドーンと上げてくれ!」という事だ。
でもね、最近のアクティビストの皆さんは、至極真っ当な要求をするところも多いんだな。株主が言いたかったことをしっかり「モノ言う株主」として成り代わってくれそうな雰囲気もある。資生堂やワコールなんかいい例だ。
フジの株価は、2年前は1500円程度だったが、最近ではもう3000円以上に。今回、ダルトンの提案が株主総会でことごとく否決されたとか、会社側が勝ったとか騒いでいる論調もあるが、勝ったのは実はダルトンだ。株を上げる筋道をつけたからね。取締役の数も減り、「何でも最初から株主提案を反対しない」と経営陣が公言した事は大きい。
これからフジ側は、ダルトンに様々なキャンペーンを張られないよう、要求を一つずつ飲んでいくだろう。ROE、PBR、配当利回りなどの指標も真面目に考えることになれば、遊休資産の売却もやらざるを得ないかな。まあダルトンじゃなくても他の投資家も要求してくるはずだ。そして、他の放送局も影響を受けることに....。
でもこの話、フジテレビ側にとってはマイナスなことなんですかねー。旧態依然としたメディアのビジネスモデルを変えるには絶好のチャンスだと思うけど。
演者(タレント)ファーストの番組作りなんて、早くやめた方がいいよ。
■プロフィール:いづも巳之助
プライム上場企業元役員として、マーケ、デジタル事業、株式担当などを歴任。現在は、中小企業の営業部門取締役。15年前から分散投資を手がけ、まもなく保有株式評価額1億円。流通株を得意としている。たまに神社仏閣への祈祷、お祓い、占い、風水などスピリチュアルな方法で、売買を決定する時がある。