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大切な人の死が続き、たまらなく心細い…この世にひとりぼっちな気がして…【お悩み#87】

Sitakke

Sitakke

はーい皆さん、ごきげんよう!満島てる子です。

北海道もとうとう桜が散ってしまい、初夏に突入と相成ったようですが。

実はまだ、北の街のそこかしこに残っている花びらに、絶妙な余韻というか、人生の余白を感じる日々を送っているあたし。

ライター・満島てる子

この時期は、岡本かの子さんという方の、こんな短歌を思い出すんですよね。

さくらばな 花体を解きて人のふむ こまかき砂利に 交じりけるかも

かたちとしてはすでに失われ、ひとつの終わりを迎えていたとしても、誰かの歩みに実はそっと寄り添い、その一歩に溶け込んでいる。

これって桜に限った話ではなく、人間のいのちというのにも同様のことが言えるのかもしれない…。
知ったようなことを言っているかもしれないけれど、個人的には割と真剣に思っていたり。

今回は、そんな「いのちのあり方」について、改めて考えさせてくれるお手紙が届いていました。
ご紹介します。

読者のお悩み 大切な人たちの死が続き、生きている意味がわからなくなってしまいました…

飴さん。ようこそ、満島てる子のお悩み相談ルームへ。
いまの状況を率直に打ち明けてくださって、まずはありがとうございます。

「近しい人との別れは立て続けに起こるもの」とよく言いますし、あたしも実はここややしばらく、身をもってそれを感じたりしているのですが。

とはいえ、実際そうした別離と向き合い、その事実を受け止めるのは辛いもの。

飴さんの状況を思うと、その心細さたるやいかばかりかと、こころの内を案じざるを得ません。
まずは、ご両親や妹さまのこと、謹んでお悔やみ申し上げます。

実は以前にもこのお悩み相談ルームでは、誰かとの今生の別れについて、あたしの思いのたけを語らせていただいたことが二度ほどありました。

▼コロナ禍で大切なひとを亡くし、受け止めきれません。どうしたらいい?
▼大好きな人が亡くなり、心の整理がつきません。どうしたらいい?【お悩み#41】

この連載を続けるさなかで、実はあたし自身の祖母が亡くなるという出来事が。
こちらの2本についてはそんな自分の経験にも思いを馳せながら、相談者さんの気持ちをおのれのそれに重ね合わせつつ、筆を走らせたことをよく記憶しています。

別れの痛みは、とても心を削られる

お部屋にお迎えした桜の枝

切ないものです。
大切な人たちには、やっぱりずっと隣にいてほしい。

でも、そう願っていたとしても、なにかのきっかけで必ず別離は訪れます。
死はそんなきっかけのひとつ。

もしそんな避けられない別れ、そして、その別れからくる痛みと出会ってしまったのならば。
その痛みとともに、なんならその別れの記憶とともに、精一杯その先を生きていく。

それが遺された者にできる唯一のことなのではないかと、あたしはこれまで書いてきました。

でも、改めて考えてみると。

痛みってさ、文字通りきっちりしっかり「痛い」ものなんですよね。
ちくちくして、血(とも言えるこころの何か)が流れて、ときに悲哀や怒りまで連れてくる。

しかも、その感覚は否定したくても消せない。いつ痛むかも、どれぐらい痛むかもアンコントローラブル。
そのせいですごくこころが削られるから、そこから起因する「心細さ」を抱えたり、疲弊して「生きている意味がわからなく」なったりもする。

誰かの死をきっかけとして。
こうした、現在の飴さんと似た気持ち、あるいは痛みを抱え、苦しんだことがある人は決して少なくないはずだと、今回のお手紙をきっかけとして、あたしは気付かされたように思います。

そして、大切な人の喪失を乗り越えて、未来に向かって生きていこうとする前に。
痛みを和らげながら、その身に受けた傷の治癒に注力することも、生きている側の者たちには必要なことなのではと、そう考えることができるようになりました。

自分で自分を癒すこと

「グリーフケア」という単語が、世間にも徐々に広まってきています。

死による別れを体験した人たちの悲嘆に注目し、そこへの寄り添いや支援、そこからの立ち直りをサポートする取り組みを意味する言葉です。

周囲の人々によるケアはもちろんのこと、このグリーフケアの過程(グリーフワークと呼ばれています)自体は、悲嘆を抱えているまさにその人自身が、自ら取り組む領域も含まれています。

自分で自分を癒すことも、グリーフケアの大事な要素のひとつというわけです。

飴さんに今必要なのは、そんなグリーフケアへのアクセスなのかもしれない。

部外者ではありながら、お手紙を受け取ったあたしが今思うのは、そんなひとつの大きな方向性です。

この方向性を前提にしながら、後半は個人的な考えにはなりますが、「こうしてみたらどうかしら」というあたしなりの気持ちを、飴さんにお伝えさせていただこうと思います。


あたしなりのAnswer

さて、飴さん。
まず、いきなり驚かれるかもしれませんが。

あなたの抱えているその心細さ。
それが、もし生活を立ちゆかせることができなくなるほどに強くなってしまったとしたなら、その場合は、遠慮なくカウンセラーやグリーフケアの相談窓口にアクセスすることを強くおすすめします。

以前も別の方に、同様のアドバイスをしたことがあるのですが、メンタルに関する様々なトラブルは、素人判断が1番危険。

少しでも「つらい」と思うのならば、そのつらさを分析し、和らげるための諸法に詳しい専門家のことは、遠慮なく頼るべきです。

そのことはいの一番に、飴さんに伝えておかねばと考えておりました。

その上で。
他者へのアクセス以外にも、飴さんが自分自身を癒すために、自分でできること。
それについても今日は書いておきたいの。

もしよかったら読んで、今後の参考にしていただければ嬉しいです。

自分自身でできること

では、じゃあ何が「自分自身でできること」なのかというと。

あたしが思うに、それは「旅立っていった人たちとの思い出を大切にし、おのれのこころの中に彼らの存在をしっかりと根付かせること」なんじゃないかしら。

…あまりにも月並みな、と拍子抜けしたかもしれないわね。

でも、あたしとしてはこれ、割と本気。

それに、実際「故人との思い出を愛でる」というのは、グリーフワークのひとつの事例として挙げられている取り組みなんです。

誰かに楽しかった頃のエピソードを語るもよし、何かに書いて載せてみるもよし。
心細さがどうしようもなく募ったときに、大切な人たちの写真を見ながら、彼らに語りかけるでもいいでしょう。

そこで少し泣いてしまっても、それはきっと、必要な涙。

気にすることなく、切なくもあたたかい思い出を存分になぞりながら…飴さん、どうかあなたには、ご両親や妹さんとの記憶のなかでの出会いを楽しんでいただきたい。


散る花びらが歩む道を作りだすように

散りゆく桜のこんな残り方がすき

ここで、冒頭で紹介した岡本かの子さんの短歌を、もう一度あえて載せさせてください。

「さくらばな花体を解きて人のふむこまかき砂利に交じりけるかも」

さくらの花がその身をほどき、無に還ってしまう切なさを詠いながらも。
その花びらが砂利とともになることで、今を生き、現実を踏み進んでいかなければならないのであろう人々の、歩んでいく道を作り出していく。

そんな諸行無常ながらも、それに支えられたこの世の「生」がいかにビビッドなのか。
この歌は、その様子を描き出しているのでしょう。

あたしね、思うんだけれど。
この世を去った人たちとの思い出って、この桜の花びらのような役割をきっと担っているんじゃないかしら。

散るときの儚さ。
それは、誰かがこの世を去るときの悲しみによく似ています。

でもその誰かは単に、完全な無となってしまうわけではない。花が花びらという名残を残していくように、人間はは誰かのこころに、思い出という跡を遺していく。

その思い出をしっかりと受け止め、愛し、おのれの歩みに生かすことで。
この世を生きる我々は、喪失の悲しみを乗り越えて、前に進んでいくことができるのではないでしょうか。

だからね、飴さん。

今抱いているその心細さを、思い出のなかでの故人との邂逅を通じて、しっかり癒してみてください。

今でもあなたはひとりぼっちじゃないことが、それによってきっと見えてくるはず。

そして、そのケアを経たうえで、あなたにはやっぱり可能な限り、今を精一杯生き、元気に未来へと歩んでいってほしいの。

それが大事で大好きな、かつてともに生きていた人たちへの、最大にして最高の弔いになるはずだから。

グリーフケアという取り組みとの出会い。

それが少しでも、飴さんにとって有意義なものとなってくれればいいなぁ。

あなたの魂に、明るい方へと向かっていくためのエネルギーが宿ることを、あたしはこれからも、こころから祈っています。

ま・と・め♡

というわけで、今回は「大切な人との別れ」について、かつて書いたコラムの内容も一種反省的に鑑みながら、改めてじっくりと考えてみました。

今回は、すでに旅立っていった人たちについて、あれやこれやつづってみたけれど。

思えば現在一緒にいる、愛する友や家族、パートナーとの別れだって、いつどのように訪れるかわからないものなのよねぇ。

そう、だからこそ。
そんな日がいつきても、決して不思議じゃないからこそ。

あたしたちは、今目の前にいる人たちとの思い出作りというか、楽しく充実したときを過ごそうとすることも、忘れずにいる必要があるんだと思います。

今日も明日も、大好きな人たちとともにいられる瞬間を、しっかりと大事にしていきたいなぁ。

皆さんも、どうか素敵なときを、大切な方と過ごしてくださいね。

ではではまた次回。Sitakkeね〜!

***

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文:満島てる子
イラスト制作:VES
編集:Sitakke編集部あい
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満島てる子:オープンリーゲイの女装子。北海道大学文学研究科修了後、「7丁目のパウダールーム」の店長に。 2021年7月よりWEBマガジン「Sitakke」にて読者参加型のお悩み相談コラム【てる子のお悩み相談ルーム】を連載中。お悩みは随時募集しています。

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