マミタ先生は“おじさん愛”が強すぎる!? 「『40までにしたい10のこと』マミタ先生トークイベント〜田中慶司生誕祭〜」レポート|作家と編集の“ぶっちゃけ”トークに笑い溢れる
2025年4月12日(土)に、東京カルチャーカルチャーにて開催された「『40までにしたい10のこと』マミタ先生トークイベント〜田中慶司生誕祭〜」。
本作に登場するキャラクター・田中慶司のお誕生日である、4月12日にあわせて開催された本イベント。著者・マミタ先生と担当編集・稲石さんが登壇し、作品の誕生秘話や、質問コーナー、特別な景品が当たる抽選企画なども行われ、大きな盛り上がりを見せました。
マミタ先生が抱く“おじさん愛”とは。さらに『40までにしたい10のこと』の略称を巡るやりとりも!? 本稿では、トークイベントの模様をレポートとしてお届けします!
【写真】『40までにしたい10のこと』原作者・マミタ トークイベントレポート
マミタ先生は“おじさん愛”が強すぎる!?
雰囲気のあるバーカウンターや光るネオンの装飾など、どこかムーディーな空気が漂う「東京カルチャーカルチャー」。
卓上にはこの日のために用意されたポップや、可愛らしいデザインが施されたうちわが設置され、田中慶司のお誕生日を祝うのにふさわしい空間となっていました。
そんな“晴れの日”に、作品、そして先生のファンが集結。果たしてどのようなトークが繰り広げられるのか……マミタ先生の登場を、会場全体が今か今かと待ち構えていました。
司会者の呼び込みにより、マミタ先生と担当編集の稲石さんが登壇! 先生の「この企画は私がおしゃべりモンスターであるために企画されまして……」という笑いを交えた挨拶に、会場には温かな空気が広がります。先生の一言によって、会場の雰囲気はより和やかになり、穏やかな空気感の中でトークイベントの幕が開きました。
まず初めに「『40までにしたい10のこと』ができるまで」と題し、本作の制作秘話が語られました。会場内のファンも、コラボフードメニューであるクリームソーダやいちごミルク、たこ焼きなどを楽しみながら、先生のトークに聞き入ります。
「最初は、外国人風の淫魔おじさんが地球に降ってくる」という設定のSFストーリーの企画が練られており、本作とは全く異なる物語を構想していたと語るマミタ先生。「サキュバスのおっさんだから、“おじキュバス”という新しいジャンルを作ろうとしていたんですけど……」という先生の発言に、客席から「ふふっ」と笑い声が漏れる一幕も。どうやらマミタ先生の”おじさん愛”は筋金入りのようです。
制作に関する話題はさらに広がります。制作当初から”おじさん愛”を強く抱いていたマミタ先生。キャラクターの年齢設定を「39歳や40歳にしてしまうとボツになってしまうかもしれない……」という考えから、「37歳のサラリーマンが“40歳までにしたいこと”を部下と一緒に叶えていく」というストーリーを考えていたのだとか。
この年齢設定について稲石さんは「“39歳”で、とお話ししました」とコメント。もう少しで40歳というターニングポイントを迎える、その時期を描いていただけたらと思った、と当時を振り返ります。マミタ先生も、稲石さんのこの言葉をきっかけに、キャラクターの年齢設定を固めていったのだそうです。
また、現在の「40までにしたい10のこと」というタイトルに至るまでには、企画段階では「40までにしたい100のこと(仮)」というタイトルでプロットを作成していたという裏話も明かされました。
「雀」も「すず子」も、偶然から生まれた?
話題は、本作のキャラクターデザインに移ります。十条雀と田中慶司のビジュアルは同時に着想され、初期設定から変更することなく連載されているとのこと。
さらに先生は、雑誌のカラーによってキャラクターを考案することが好みであり、「リブレさんはBLの中でも非常に王道というイメージの雑誌なので、自分の好きな要素を盛り込んだ王道イケメンを描きたいと思っていました」と、キャラクターデザイン誕生秘話を明かしました。
また、先生はキャラクターの命名が苦手であり、友人や知人の名前を参考にしていると続けます。十条雀に関しては、「自分と同じ名前のものを愛でている」という設定が先にあったそうです。名前を検討していた際、すずめがたくさんいるカフェで鳴いていた雀を見かけたことがきっかけで、「雀」という名前に決定したというエピソードが語られると、客席からは「そうだったんだ……!」と、驚きの声が上がりました。
さらに、十条雀が大切にしている「すず子」についても言及がありました。先生の過去作である『ふれないでリトルスター』にも「とり」が登場しており、主に“萌え絵”を描いていた頃から「丸い鳥」が好きだったと語る先生。「無意識的にすず子の元になっていたかもしれない……」と語る場面もあり、本作を彩るマスコット的キャラクターの誕生秘話にも触れられました。
作品の略称が欲しい営業 vs 略称が恥ずかしいマミタ先生!
次に、『40までにしたい10のこと』から、担当編集の稲石さんが“お気に入りのシーン”を紹介。2巻の「慶司くんが涙を流すシーン」や、1巻の「雀が傷つき、慶司くんと一緒にやっていた10の項目を消してしまうシーン」について、担当編集ならではの視点から魅力を熱弁します。
慶司が涙を流すシーンは、これからの2人を示唆する大事なシーンであり、「スパダリが弱る部分に良さを感じている」と“年下攻め”の醍醐味を語るマミタ先生。本作における深い人間模様へのこだわりが垣間見えます。
そして注目が集まったのが、あまりにも解像度が高い「リアルなサラリーマン像の源泉」について。
司会者からその点を問われた先生は、サラリーマンの生態についての描写の細かさは、“おじさんによるビジネス系YouTube”を見ながら作業していることや、推しのおじさんカップリングをスマホの待ち受けにしていることなどが背景にあると明かしました。意外なアイデアの源に、会場からは笑いと驚嘆の声が上がります。
また、イベント内では先生の仕事部屋の写真やネームも公開され、日常の制作風景にも触れられる一幕が。
「絶対に描き直しはしたくない」という強いこだわりから、最初に絵コンテに近いものを作ってコマ割りやページ数を確認している、というネーム制作のスタイルについても語られました。
さらに、制作の裏側にまつわるやりとりとして、「編集担当稲石がマミタ先生に困っていること…!」というトークテーマからお話が展開。
その中で稲石さんは、「(作品の)略称を作らせてくれない」と、担当編集ならではの“困りごと”を明かす一幕もあり、会場には笑いが広がりました。
先生は、ご自身の作品に“略称”ができることを恥ずかしく感じているそう。「あえて略称がつけにくいタイトルを考えている」と語る場面もありました。
とはいえ、「読者の皆さんが望むのなら大歓迎です」とのこと。この“略称問題”については、どんな略称がいいのか、あるいは本当につくのか……後日、X(Twitter)にてアンケートが実施されました。
ハラハラドキドキの抽選会。先生が目の前に……!?
本イベントもいよいよ後半戦に突入。“田中慶司生誕祭”であるこの日は、事前購入申込者を対象に特別なバースデーケーキが用意されました。ケーキの甘い香りに包まれる中、客席の熱気はさらに高まっていきます。
ここからは「マミタ先生への質問タイム」と「大大大!抽選会」という目玉企画が立て続けに行われ、会場は笑顔と驚きに包まれました。
まず始まったのは、先生の素顔や創作スタイルが垣間見える「マミタ先生への質問タイム」。
漫画家を生業とする上で大切にしていることについて問われると、「人をよく観察すること」という答えが返され、客席からは深く頷く姿も。
リフレッシュ方法として「良いホテルで漫画を読んだり、お酒を飲んだりしています」と明かしたほか、愛用している道具については「タチカワペンがなくなったら漫画家を辞めます」とキッパリ。ペンへの深い愛着が伝わってくるひと言に、会場は笑いと驚きに包まれました。
また、「集中力を高めるためのルール」として、作業前には必ず部屋を片付け、コーヒーを一杯。そして作業中にはおじさんのビジネス系YouTubeをBGM代わりに流すなど、こだわりを語ります。
また、原稿を失敗せずに描き上げる意識づけのために、タイムラプスの録画をONにして、作業工程を記録しているというマミタ先生。創作の裏側を感じられる貴重なエピソードも続々と飛び出しました。
最後に繰り出された、「人生の黒歴史」を問う質問に対して、「今までのバイトは全部クビになっている」というエピソードで返答したマミタ先生。その理由を「こだわりの強さ」と自己分析する先生に対し、納得したような表情を見せたのは稲石さん。「さっきの略称問題、そこに尽きるかもしれません……」と絶妙なツッコミを入れ、あたたかくもテンポの良い掛け合いに、今日一番の爆笑が巻き起こりました。
そしていよいよ、会場がざわつき始める「大大大!抽選会」が開催! 今回用意された景品は、「サイン入りポスター」や「サイン入りポストカード+ミニポスターセット」、「サイン入り1巻表紙(刷り出し見本)」、先生が実際に使用されていた「つけペン」、さらには世界に2枚だけしか存在しない「受賞記念Tシャツ」など、ファン垂涎のグッズがラインナップ!
マミタ先生が抽選BOXから次々と番号を引くたびに、客席からは歓声やどよめきが起こり、当選者は満面の笑みで景品を受け取っていきます。
「もしかして自分かも……!」と期待と緊張が入り混じる空気に、会場は一体感に包まれていました。
そしてここで、まさかのサプライズが。「受賞記念Tシャツ」「つけペン」が当たった方には、なんとマミタ先生が直々に客席まで降壇し、その場でサインをしてからプレゼントするとのこと。
壇上から降りて、先生がぐっと近づくその距離感に、会場の視線は一点集中。目の前に先生が来てくれる、そんな夢のような瞬間に、思わず涙ぐむ方の姿もありました。
楽しい時間はあっという間に過ぎ、イベントもお開きの時間に。最後に改めて、マミタ先生と稲石さんから、来場したファンへ向けて、感謝の気持ちが丁寧に語られます。温かい拍手の中でイベントは幕を下ろしました。
最後の最後まで、笑顔が絶えなかった「『40までにしたい10のこと』マミタ先生トークイベント〜田中慶司生誕祭〜」。作品を愛する気持ち、キャラクターへの想い、そしてマミタ先生の言葉にじっくりと耳を傾ける姿。そのすべてが、この日だけの特別な時間を作っていました。
一つひとつの会話、笑い声、サプライズ、そして先生との距離感まで。鮮やかに心に刻まれるこの日の出来事を、一生忘れることはないでしょう。
【取材・文:笹本千尋 編集・撮影:西澤駿太郎】