【体験レポート】熟成古酒ルネッサンス2025
桜が舞う春の風の中、多くの古酒ファンが集まった「熟成古酒ルネッサンス2025」。王寺駅からほど近い赤煉瓦酒造工場は静かな熱気と芳醇な香りに包まれ、それぞれが思い思いの一杯を楽しんでいる様子が印象的でした。今回は、その模様をレポートいたします。
圧巻のラインナップと魅力的なペアリング
会場に一歩足を踏み入れると、まず目に飛び込んでくるのは各蔵自慢の古酒の数々。そのラインナップの豊富さには、思わず圧倒されました。銘柄ごとの違いはもちろん、同一銘柄でも醸造年度の違う熟成古酒が並べられ、一度にこれほど多彩な古酒を見られる機会はなかなかありません。
さらに各ブースには、それぞれの酒に合うナッツやチーズなどのおつまみも用意されており、蔵元おすすめのペアリングも楽しむことができました。五感で味わう日本酒体験に、会場全体が酔いしれていたように感じます。
印象に残ったお酒
各ブースを巡る中で、筆者が特に心を奪われた3つの酒をご紹介します。
一ノ蔵「Madena」(一ノ蔵酒造)
地元・大崎市の鳴子温泉の温泉熱を利用した加温熟成が特徴の「Madena」。カラメルのような香ばしい甘みと芳醇な味わいが見事に調和し、まるでスイーツのような一杯でした。ローストナッツとの相性も抜群で、バニラアイスにかけてデザートにしても美味しそう、と思わせる一品です。
玉川 純米吟醸 雄町 2018BY(木下酒造)
木下酒造のブースでは、熟成酒3種をひやとお燗で飲み比べできる趣向が用意されており、それぞれ異なる魅力を味わうことができました。中でも印象的だったのがこの純米吟醸。すっきりとした飲み口ながら、しっかりと熟成感を感じさせてくれる絶妙なバランス。日本酒初心者や若い世代にもおすすめできる、導入にぴったりの一本です。お燗にすることで香りと旨味が際立ち、また違った表情を見せてくれました。
麒麟「時醸酒」(下越酒造)
「麒麟」で知られる下越酒造のブースでは、時醸酒の2023年、2013年、2003年、2000年ヴィンテージがずらりと並び、飲み比べが楽しめました。とくに2003年のボトルは、それまでと一線を画す強い酸味が印象的。蔵の方に話を伺うと、熟成具合だけでなく、収穫された年の米の質や熟成容器の残酒量などによっても味が変化するとのことでした。
また、この時醸酒は酒蔵ブースだけでなく、一般の方が行った自家熟成コーナーにも登場。火入れと生、それぞれを冷蔵・常温・加温で管理した酒が並び、元の酒に個性豊かな変化が加わっていました。中でも、生酒の方は特有のなめらかさを残しつつ、どこかお茶のような香ばしさもあり、非常に興味深い味わいでした。
ほかにも多くの魅力的な熟成酒をいただきました!
↓ 龍力
↓菊御代・黒牛
↓玉乃光
↓岩の井
↓奥の松
「日本酒百年貯蔵プロジェクト」
会場となった赤煉瓦酒造工場(東京都北区滝野川)では、「日本酒百年貯蔵プロジェクト」も進行中です。2005年にスタートしたこの壮大な計画は、「日本酒を100年間熟成させる」という前代未聞の挑戦。10年ごとに成分分析と試飲が行われており、今年2025年はちょうど開始から20年の節目にあたります。
案内をしてくださったのは、龍力の本田さん。工場内を巡りながら地下保管庫へ向かうと、10年目の分析結果と、実際に保存されている瓶を見ることができました。開始当初と比べて酒色はやや黄みを帯び、吟醸香から熟成香へと香りの変化も見られるそうです。今年の分析結果も非常に楽しみです。
まとめ
「熟成古酒ルネッサンス2025」は、普段なかなか味わうことのできない、特別な日本酒との出会いに満ちた一日でした。時を経てなお魅力を増す古酒の世界。その奥深さと、多様な楽しみ方に改めて心を奪われる体験となりました。
古酒文化は今、世界に広がり始めています。その魅力を支えるのは、こだわりを持ち続ける造り手と、熱心なファンたち。熟成という“時の魔法”を感じられる古酒は、今後ますます注目を集めていくことでしょう。
出店蔵元
一ノ蔵(一ノ蔵) 木下酒造(玉川) 本田商店(龍力) 白木恒助商店(達磨正宗) 下越酒造(麒麟) 岩瀬酒造(岩の井) 玉乃光酒造(玉乃光) 名手酒造店(黒牛・菊御代) 稲見酒造株式会社(葵鶴) 奥の松酒造(奥の松)
イベント概要
【日時】
2025年4月5日(土)
・第1部:11:30〜13:30
・第2部:14:00〜16:00
【会場】
赤煉瓦酒造工場
〒114-0023 東京都北区滝野川2丁目6-30
【チケット種類】
入場券:¥3,000
1日券:¥5,000
※「1日券」は1部と2部にご入場可能です
酒蔵プレス編集部これほど多くの熟成酒・古酒に出会える機会が今までなかったので、とても勉強になる一日でした。筆者も沼にはまりそうです!https://www.sakagura-press.com/