心の健康 対話で回復を 県内初のリカバリーカレッジ
うつ病などの精神疾患を抱えた当事者や支援者が豊かに暮らしていくため、互いに学び合う「リカバリーカレッジ」の取り組みが横須賀市で始まった。汐入町のNPO法人あかり(森田佳重(よしえ)理事長)が4月の本格稼働に向けて準備を重ねており、開設されれば県内初。日本人の4人に1人が生涯を通じて何らかの精神疾患にかかると言われており、同NPOはセミナーなどを通して、心の健康回復を後押ししていく考えだ。
リカバリーカレッジは2009年頃にイギリスで発祥した精神保健福祉サービスの1つ。生きづらさを抱える当事者や家族、支援者などが集まり、自分を受け入れ充実した人生を送る「リカバリー」という考え方を他人と共有し、学び合うことで心の健康回復を目指す。現在日本では約20カ所で実践されているという。
同法人は今年2月から事業の試行に着手。セミナーでは精神保健福祉士や保健師、看護師などが在籍し、その日の内容に合った講師が出席する。4回目となった3月2日には市内外から6人が参加し、約3時間にわたって対話を重ねた。人の発言を互いに尊重する原則のもと、「仕事に関しては言及しないでほしい」「休憩を多めにとってほしい」など、参加者が事前に設定したルールに従うのが特徴だ。
この日行われたのは「アロマテラピー」(芳香療法)と、開かれた対話という意味を持つ「オープンダイアローグ」の2つ。オープンダイアローグでは2人1組に分かれ、話し手はテーマに沿って5分間自らの体験談や考えを語り、聞き手は黙って耳を傾けた。そうすることで「自分の話を聞いてもらえる」という安心感が醸成されるといい、祖母の介護や家族との関係からうつ病を患ったという市内在住の30代女性は「日々の生活の中で自分を後回しにしがちだったが、対話を通して自分を大切にする大切さが分かった」と振り返った。
市民相談を受け
森田理事長(63)は定年退職するまで横須賀市の健康部長を務めた。コロナ禍の最中、心の疲弊を訴える市民からの相談を多く受けており、「ポストコロナのメンタルヘルスがより重要になる。少しでも元気になってもらうためにできることを」と昨年5月に法人を設立した。
法人後見にも着手
同法人では今後、精神障害や知的障害の人をサポートしている親が亡くなった際の「親亡き後問題」にも対応していく予定。1対1の成年後見ではなく、看護師や保健師など複数人でサポートする法人後見の体制を整え、社会福祉協議会などと連携しながら当事者や支援者をバックアップしていきたい考えだ。
セミナーは6回がセットで季節ごとに年3回実施する。市内在住・在勤・在学の16歳以上が対象。精神科医療機関を受診中の人も受講できる。料金は1回500円。詳細は同法人【携帯電話】050・8881・0022。