【クマとの事故を防ぐには・対策2選】ポイントは「知る」こと、「楽しむ」こと/北海道札幌・知床
北海道内ではクマの出没が相次ぎ、住宅地での死亡事故も起きました。
前回の記事では、「すべてのクマ事故は防げる」という専門家の言葉をもとに、国や都道府県単位で必要な対策について書きましたが、クマ対策を担うのは、行政や専門家だけではありません。
住民や観光客が「楽しみながら」参加できるクマ対策を企画している人たちがいます。
札幌と知床、2カ所でのクマ対策イベントをご紹介します。
連載「クマさん、ここまでよ」
クマ対策①草刈り(札幌)
まずは、高校の授業をきっかけに生まれたクマ対策グループ「困ったくま」による、草刈りイベントです。
クマは背の高い草に身を隠して移動するため、川沿いの草を刈って見晴らしをよくすることは、クマにばったり会って事故にあうことを防ぐ対策になります。
「困ったくま」の5人は、札幌藻岩高校の2年生の頃に、「ヒグマとの共生」をテーマにした授業を受けました。座学だけでなく、札幌市円山動物園でフィールドワークをしたり、自分たちで啓発パンフレットを作って発信にも取り組んだりと、積極的に学びを深めました。
その後も自ら対策を続けたいと考え、課外活動として主体的に取り組んできました。
草刈りイベントは4年前からスタート。大切にしてきたのは「楽しさ」です。
休憩時間にゲームを用意したり、クマクイズ大会を実施したりと、いつも和やかな雰囲気で開催してきました。
「高校生が企画することで、若い人や地域の人がクマ対策に関わるきっかけを作りたい」と話していました。
卒業してからも活動を続けてきましたが、来年からは就職などそれぞれの進路に進むため、今回で一区切りです。
困ったくまは、「今年で一旦ラストの草刈りなので、ぜひ皆さんと一緒に楽しく草刈りしたいです!困ったくま全員でお待ちしております!」と話しています。札幌市が協力していて、道具の用意などもされているので、やったことがないという方も気軽に参加できます。
高校時代から地域の安全を守ってきた5人への応援を兼ねて、そしてこれからはどう受け継いでいくのかを考えるためにも、この機に参加してみてはいかがでしょうか。
・日程:2025年7月26日(土)午前9時~正午
・場所:札幌市南区真駒内(南区役所前に集合)
・参加費:無料
・主催:困ったくま
・協力:札幌市
雨天時は中止になるため、最新の情報は困ったくまのインスタグラムなどでご確認ください。
クマ対策②ゴミ拾い(知床)
対策の2つ目はゴミ拾いです。
クマは本来、人に出会いたくないと思っていますが、ゴミなどで人の食べものの味を覚えると執着し、人や住宅地に近づく原因になってしまいます。
その課題に向き合うのが、知床のホテル「北こぶしリゾート」です。
「北こぶしリゾート」では2020年から、「クマ活」と題して、草刈りなどのクマ対策イベントを継続してきました。これまでに25回実施し、地域住民や観光客、学生などのべ700人以上が参加したといいます。
ことしで、知床は世界自然遺産登録20周年。新たな挑戦として、さんぽしながらゴミ拾いを行う“まち歩き型”のヒグマ共存体験プログラム「クマ活さんぽ」が始まります。
地域の有志団体「知床ゴミ拾いプロジェクト」とのコラボレーションで企画されたもので、ゴミを拾って知床のまちを歩きながら、地元の人や景色と出会い、「ヒグマと人がともに生きる地域のあり方」を体感してほしいという思いが込められています。
8月上旬から、系列ホテルの宿泊者を対象に行われる予定ですが、8月2日(土)にはキックオフイベントが開催されます。クマの生態にくわしい酪農学園大学の佐藤喜和教授を迎えた、特別レクチャーもあります。
・日時:2025年8月2日(土)午前9時~正午
・場所:知床ウトロエリア
・内容:知床ゴミ拾いプロジェクトプレゼンツ みんなで町を歩きながら、楽しくゴミ拾い!+佐藤教授による特別レクチャー
申し込み方法など詳細は北こぶしリゾートのイベントページでご確認ください。
なぜ、ホテルがクマ対策にかかわるのか。
北こぶしリゾートは、「ヒグマと人とがともに暮らすことは、簡単なことではありません。しかし、『関わり続けること』『知ろうとすること』『一緒に手を動かすこと』には、たしかな力があります。『クマ活さんぽ』は、そんな“持続可能な関係性の第一歩”として、私たち北こぶしリゾートが地域とともに育てていくプロジェクトです」としています。
高校生とホテルが始めたクマ対策。
少し意外な担い手かもしれませんが、100%がないのがクマ対策です。
ゴミのマナーなどたった少しの不注意で、人もクマも命を失う事態になります。だからこそ人任せにせず、自分たちの地域は自分たちでできることを、日常的に取り組むことが大切です。
せっかくなら、気軽に、楽しみながら参加できるようにしたい…
そう考えて、自分たちにできるイベントを継続的に実施し、クマ対策の輪を広げようとしている人たちをご紹介しました。
楽しみながら、クマ対策の担い手に仲間入りしてみてはいかがでしょうか?
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取材協力:困ったくま、北こぶしリゾート
知床のヒグマの写真は、北海道に生きる動物たちについての普及啓発を行っている「ノノオト」にご提供いただきました。
文:Sitakke編集部IKU
※掲載の内容は取材時(2025年7月23日)の情報に基づきます