初の車椅子スペース設置の舞台裏
8月24日に相模川で行われた第51回相模原納涼花火大会で、今年初めて車椅子利用者のための観覧スペースが設けられた。この画期的な取り組みは、障害者や難病患者とその家族からの切実な要望に応える形で実現した。
きっかけは7月16日、ALS(筋萎縮性側索硬化症)の患者を持つ家族からの問い合わせだった。当初、大会を主催する実行委員会は「大変申し訳ありませんが本大会では専用の駐車場・観覧席のご用意がございません」とバリアフリー整備が不十分として専用席の用意がないと回答した。
その後、市にも同様の要望が届き、実行委員会で議論が重ねられた。8月6日、実行委員長の決断で会場となる遊歩道のスロープ付近に駐車場を手配。近隣にあるトイレの修繕も行政に依頼し、急ピッチで受け入れ態勢を整えた。9日から19日まで、ホームページで10台程度の駐車スペースの申込を受け付けた。
その後、実行委員会は、会場までの道路状況やスロープの角度など、細部にわたって確認。特にALS患者家族の不安に配慮し、動画や写真で状況を共有した。医師の判断が必要なケースもあり、個別の状況に応じた対応を心がけたという。
当日は、5組の車椅子利用者とその家族・介助者、計17人ほどが観覧スペースで花火を楽しんだ。帰り際、多くの参加者から「楽しかった」という声が聞かれた。
また予定していたものの、やむを得ない事情で参加できなかった人からも感謝のメッセージが寄せられた。実行委員長は「皆さんの笑顔を見られて本当に嬉しかった」とコメント。この経験を来年以降の改善につなげたいとの意欲を示した。
初の試みゆえ、いくつかの課題も浮き彫りになった。障害の度合いや状況の事前把握の難しさ、スタッフ不足、連絡体制の改善などが挙げられる。また、申込者が増えた場合の対応も今後の検討事項だ。
実行委員会は「100%の満足を得るにはまだ課題が多いが、一つ一つ向き合うことで、相模原納涼花火大会を相模原市や地元水郷田名の誇れる夏の祭りとして継続させたい」と決意を新たにしている。