子どもなのに大人並みのいびき 勉強にも影響する子どものいびき【耳鼻咽喉科専門医が解説】
鼻をよくほじっている子は、鼻の病気の可能性が。大人並みのいびきをかく子は、のどの病気の可能性があります。子どもの困った癖から、耳鼻咽喉科専門医の工藤典代先生が耳・鼻・のどの病気を見つけるポイントと、対処法を解説します。
【耳鼻咽喉科専門医が解説】➡のどの構造を画像で見るいびきをかいている子どもの寝姿を見て、微笑ましく思っている親御さんはいるでしょう。しかし、毎日のように大人並みの大きないびきをかいているのであれば、少し注意が必要です。
子どもの耳・鼻・のどに見られる仕草や様子は、単なる癖としてとらえている親御さんが多いと話すのは、耳鼻咽喉科専門医の工藤典代(くどう ふみよ)先生です。
日常に埋もれている子どもの癖から、耳・鼻・のどの病気を見抜くポイントと対処法を工藤先生が解説します(全3回の3回目)。
【こんな鼻の症状に注意 ①】鼻をほじるのをやめない場合に考えられる病気
鼻をよくほじる、鼻をよくこするといった仕草は、鼻がかゆいから見られる動作です。これらは主にアレルギー性鼻炎の仕草といえるでしょう。
呼吸器である鼻に異常があると、スムーズに息ができないため、集中力が低下して勉強にも大きな影響を与えます。また、鼻をいじると鼻血も出やすくなります。
「鼻をいじっちゃダメ!」と頭ごなしに𠮟るよりも、子どもの様子を観察して、耳鼻咽喉科を受診してください。
鼻をよくほじる以外に見られる、子どもの様子
鼻をよくこする、頻繁に鼻血を出す、口で息をしている、鼻の下を引き伸ばす、顔を歪める(顔面の異常行動)など。
疑われる主な病気
アレルギー性鼻炎
対処法
アレルギー性鼻炎の鼻水は、サラサラです。対処法は、鼻腔に鼻汁が溜まっているので、ティッシュでかんで拭き取ることですが、アレルギー疾患を悪化させないようにペットの毛やホコリなどが飛び散らない住環境にも気をつけましょう。
鼻づまりがひどいときは、長距離走などの運動量が多い体育の授業は見学させたほうが無難です。プールの水も刺激になってアレルギー反応が出やすいので、耳鼻咽喉科で治療を受けつつ、相談してみましょう。
スギ花粉によるアレルギーの対処法
スギ花粉による花粉症の場合は、保険が適用されている舌下免疫療法(ぜっかめんえきりょうほう)を行うのも手です。舌の下に薬を入れて1分ほど経ったら飲み込むという方法で、5歳以上が治療の対象です。
治療のスタートは、夏休みがおすすめ。最初は定期的に通院しなければならないのと、次からの花粉シーズンのために行うので、子どもなら夏休みのタイミングがいいでしょう。
今のアレルギーテストは痛くない
アレルギーテストは、指先からとる1滴の血で検査することが可能です。
1滴の血から8つのアレルゲンが測定できるなど複数の結果がわかるので、アレルギーテストを受けたい場合は耳鼻咽喉科で相談するといいでしょう。
【こんな鼻の症状に注意 ②】いつも口が開いている場合に考えられる病気
口がいつも開いているということは、鼻で息ができないことが考えられます。これに加えて、ネバネバした鼻水が出ている場合は、副鼻腔炎を疑っていいでしょう。
口がいつも開いている以外に見られる、子どもの様子
口で息をしている、鼻水が止まらない、ネバネバの鼻水が出る、くしゃみを連発する、においを感じていないなど。
疑われる主な病気
急性副鼻腔炎や慢性副鼻腔炎
対処法
副鼻腔炎は、風邪やインフルエンザをきっかけとして、鼻にウイルスや細菌感染が生じると起こります。
鼻の症状が出始めて4週間以内のものを急性副鼻腔炎、その状態が長引く場合を慢性副鼻腔炎といいますが、いずれの場合も耳鼻咽喉科を受診しましょう。
急性副鼻腔炎は、発症のきっかけが風邪からのことが多いため、発熱や体がだるいなどの全身症状が見られます。熱があるときは、学校は休みましょう。また、熱が下がって通学できても、ネバネバの鼻水が出ている場合はプールは見学にしてください。
慢性副鼻腔炎も、鼻水が出ていたり、鼻づまりがひどい場合は、体育やプールは見学したほうが無難です。対処法はティッシュでかんで拭き取ることが第一の方法ですが、頭痛や湿性のせきが出ている場合は、耳鼻咽喉科で定期的に治療を受けましょう。
【こんなのどの症状に注意 ①】いびきが大人並みに大きい場合に考えられる病気
ぽっちゃり体型の子は気道周辺にも脂肪がついているので、いびきが大きくなりがちですが、 毎夜、大人並みの大きないびきをかいて寝る、痩せ型なのにいびきが大きい場合などは、口蓋扁桃肥大(こうがいへんとうひだい)やアデノイドが考えられます。
口蓋扁桃は口を開けて、のどの両側に小指から親指くらいの大きさで見える塊で、口蓋扁桃肥大はここが大きくなっていることを指します。アデノイドは口の奥にあるので見ることができません。
いびきがあるとよく眠れず、睡眠不足の影響で集中できなくて勉強に身が入らないことがあるので、耳鼻咽喉科を受診して対応を相談しましょう。
いびきが大人並みに大きい以外に見られる、子どもの様子
毎日、大きないびきをかく、口を開けて息をしている、授業中にボーッとしていることが多い、食べるのが遅い、体格が痩せ型、食が細いなど。
疑われる主な病気
口蓋扁桃肥大、アデノイド
対処法
口蓋扁桃の大きさは人によってさまざまなので、簡単に病気かどうか判断できません。アデノイドも目視できない位置にあるので、子どもに前述のような様子が見られたら、耳鼻咽喉科を受診して病気がないか診てもらいましょう。診断次第では、手術が必要な場合もあります。
口呼吸しかできない子は、水泳の授業は難しいのですが、遊び程度なら問題ありません。また、鼻水が長く続く、鼻水が出やすい子で鼻がかめない場合は、無理にかまず拭き取るようにしてください。
【こんなのどの症状に注意 ②】声がかれている場合に考えられる病気
いつも声がかれているのであれば、声帯にイボができる小児声帯結節の可能性があります。
大きな声で騒ぎがちな男の子に多く見られますが、スポーツクラブに所属して大声を出す機会が多い子は男女問わず、注意するといいでしょう。
声がかれている以外に見られる、子どもの様子
声がかすれている、大きな声を出すことが多いなど。
疑われる主な病気
小児声帯結節
対処法
小児声帯結節は、体が成長するとともに声帯も大きくなるので改善する場合が多いのですが、今現在の生活に子どもが不自由を抱えている場合は、耳鼻咽喉科で適切な指導と治療を受けましょう。
普段の生活では大きな声を出さない、力を入れて話さない、離れたところから大声を出して話さない、うるさいところで話さないといった、4つの「声の衛生」を意識することが大切です。
スポーツクラブなどで声を出す機会がある場合は、コーチに声帯に問題があることを伝えて、配慮してもらえるようにお願いしましょう。
耳鼻咽喉科と上手に付き合う方法
小児科と耳鼻咽喉科をどう使い分けたらいいのかわからない方は多いものですが、工藤先生はある目安を教えてくれました。
「咳がゴホゴホと胸から湧き上がるなど、首から下(のどぼとけのあたりにある声帯から下)に症状がある場合は小児科へ。
首から上なら耳鼻咽喉科へ行くと考えると、上手に使い分けられるでしょう。特に鼻水が出ている場合は、耳鼻咽喉科でとってあげることができるので、呼吸が楽になるはずです。
また、耳鼻咽喉科にそもそも馴染みがないのであれば、耳掃除が病院の雰囲気や相性を測るいい機会になります。インフルエンザやコロナの検査も、耳鼻咽喉科ではしっかりと子どもも検査できるので、お子さんの体調管理に役に立ちます」(工藤先生)
耳・鼻・のどに見られる仕草や癖は、子どもが生活できているのであれば、いつものこととして処理されがちです。
しかし、声が大きかったり、鼻をよく触っていたり、子どもなのに大人並みのいびきをかいたりしている場合は、病気が隠れているかもしれません。
学校健診の結果も参考にしつつ、子どもの普段の様子を観察して、我が子が生活しやすい体調に整えてあげましょう。
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◆工藤 典代(くどう ふみよ)
耳鼻咽喉科専門医、気管食道科専門医、医学博士
大阪大学医学部卒業後、千葉大学医学部耳鼻咽喉科に入局。千葉労災病院、国立千葉病院、千葉県がんセンターなどで研修する。その後、国保成東病院耳鼻咽喉科初代医長や千葉県こども病院初代部長、千葉県立衛生短期大学(教授)、千葉県立保健医療大学健康科学部(教授)を経て、現在はアリス耳鼻咽喉科の院長。千葉市立中学校や小学校の学校医も務めている。著書に『子どもがかかる耳・鼻・のどの病気百科』(少年写真新聞社)など。
取材・文/梶原知恵