【2025年参院選】参議院選挙の制度・投票方法・比例代表の仕組みを徹底解説
参議院選挙は3年ごとに行われ、私たちの代表者を決める大切な制度です。
しかし「よくわからない」「誰が出ているのか知らない」といった理由で、特に若年層の投票率が低い傾向が続いています。
本記事では、参院選の基本的な制度・仕組みをやさしく解説するとともに、2025年選挙の特徴や話題の立候補者についても触れます。
1. 参議院選挙とは?|制度の基本構造
参議院選挙は、日本の国会を構成する重要な選挙のひとつです。衆議院とともに国の政治を動かす参議院には、独自の役割や特徴的な制度設計があります。
基本的な仕組みを理解することで、参議院選挙がどのように機能しているのかが見えてくるでしょう。ここでは、その制度の基本構造をわかりやすく解説します。
二院制における参議院の役割
国会は、衆議院と参議院という2つの議院での構成です。この「二院制」には、多様な価値観を反映できること、一方の議院の判断をもう一方がチェックすることで慎重な審議が行えること、そして行き過ぎや偏りを抑制し合えるといったメリットがあります。
こうした中で参議院は、衆議院と同様に国会を構成する議院でありながら、6年という長期の任期と、3年ごとに半数ずつ改選される制度設計によって、より安定した視点で政治に関わる役割が求められています。
任期6年・3年ごとの半数改選というルール
参議院議員の任期は6年間で、3年ごとにその半分が改選される仕組みになっています。衆議院と異なり、参議院には解散がないため、当選すれば6年間は議員の職務を全うできるという安定性があります。
このような制度背景から、参議院は「熟慮の府」とも呼ばれ、じっくりと政策を見極めながら取り組む役割を担っているのです。また、参院選では複数人が選ばれる選挙区もあり、少数派や無所属の候補者も当選のチャンスがあるほか、比例代表では個人名による得票が重視され、候補者個人への評価が、より反映されやすい仕組みとなっています。
政党の影響力が大きく反映されがちな衆議院選挙と比べると、参議院選挙では一人ひとりの候補者をしっかりと見極めることがより大切だと言えるでしょう。
選挙区制と比例代表制の2本立て
参議院選挙は、「選挙区制」と「比例代表制」という2つの仕組みの構成です。選挙区制では、基本的に都道府県単位で区割りされており、人口に応じて1人から6人までの定数が設定されています。
たとえば、東京都は最多の6人、次いで埼玉・神奈川・愛知・大阪が4人などのように設定されており、地域ごとに「1人区」や「3人区」といった呼び方もされます。
しかし、すべての都道府県に必ず1議席を割り当てると、一票の重みに差が出てしまう「一票の格差」問題が生じるため、2016年からは人口の少ない県を1つの選挙区にまとめた「合区」制度が導入されました。
現在は鳥取・島根、徳島・高知の2つの合区があり、全国の選挙区の数は45です。一方、比例代表制では、有権者は政党名、またはその政党の候補者名を投票用紙に書いて投票します。
特徴的なのは「非拘束名簿式」という方式で、政党があらかじめ当選者の順位を決めておらず、投票された個人名の多さで当選者が決まる点です。議席は「ドント式」という方法で政党に配分され、候補者の個人名得票の多い順に当選が決定されます。
また、比例代表制では全国を一つの単位とするため、地域に関係なく、どの候補者にも投票でき、小さな政党でも議席を獲得しやすいという特徴があります。ただし、知名度の高い人物が有利になる傾向があり、タレントや組織票を狙った候補の影響力が大きく、制度ならではの課題も存在するのが実情です。
2. 比例代表制とは?|個人名と政党名の違い
参議院選挙の「比例代表制」では、少し複雑なルールが関係しています。ここでは、政党名と個人名、どちらで投票するべきか迷ったときなどに知っておきたい仕組みをわかりやすく解説します。
比例代表制の仕組みと「非拘束名簿式」
参議院の比例代表制では、「非拘束名簿式」という仕組みが採用されています。これは、政党が提出する候補者名簿にあらかじめ当選順位をつけない方式で、政党の当選議席の中で、より多くの票を集めた候補者から順に当選が決まる仕組みです。
つまり、有権者は「政党名」または「候補者名」のどちらかを書いて投票でき、個人名での票が多いほど、候補者本人の当選可能性が高まります。また、令和元年から導入された「特定枠」という制度では、政党があらかじめ優先順位をつけた候補者を設定できるようになりました。
この枠内の候補者は、個人の得票数に関係なく、政党の獲得議席に応じて優先的に当選する仕組みです。
政党名での投票と、個人名での票の扱い
比例代表では「政党名でも候補者名でも投票できる」という柔軟さがありますが、どちらにするかで結果への影響が異なります。政党名で投票すれば、その党全体の得票数が増え、比例での議席数が増えることになります。
反対に、候補者名で投票すれば、政党の議席数に加えて、党内での当選順位に影響を与えられるのです。このため、比例代表の候補者たちは選挙期間中、党名でなく、名前を書くよう強く求めています。
いくら政党に追い風が吹いて議席が伸びても、候補者がその議席に入れるとは限らないということです。
票が割れる?支持する人への影響の仕組み
政党の支持が高まっても、比例代表では「党内の順位争い」があるため、票が分散してしまうと、応援する候補者が当選できない場合もあります。
たとえば、政党名での投票ばかりで候補者本人の名前があまり書かれなければ、その候補者の党内順位は低くなり、議席を逃す可能性があります。だからこそ、「この人に活躍してほしい」と思う候補者がいる場合には、政党名ではなく、その候補者の名前を書くことが大切です。
その票が積み重なれば、候補者は党内での地位も上がり、希望する委員会に所属したり、重要な政策に関わったりできる可能性が高まるのです。個人名の1票が、その候補者の未来だけでなく、あなたが望む社会をつくる力にもなることでしょう。
3. なぜ若者の投票率は低いのか?
選挙のたびに話題になるのが「若者の投票率の低さ」です。
なぜ若い世代は選挙に行かないのか、その背景を見ていきましょう。
「生活に関係ない」と思ってしまう理由
若年層が選挙で棄権してしまう理由として、「仕事があったから」が挙げられており、この傾向は年齢が若いほど高い割合で見られることが、令和3年の衆議院議員総選挙に関する意識調査で明らかになっています。
若者にとっては、投票の時間を確保すること自体がハードルとなっているようです。また、「政党の政策や候補者の人物像など、違いがよくわからなかったから」といった理由も多く挙げられており、情報コストの高さが棄権につながっていると考えられます。
このように、若者が「政治が生活に関係ない」と感じてしまう背景には、投票に対する物理的なハードル、そして心理的ハードルの高さがあるようです。
制度の難しさと情報不足がハードルに
「政治がわからない」「誰を選べばいいのかわからない」といった声も多く、制度の複雑さや情報不足が、若者の投票離れにつながっています。また、政治家に対して「自分たちとは違う世界の人」というイメージを持っている人も多く、政治への心理的な距離が感じられます。
ただし、政治に関心を持ちたいという意欲自体はゼロではなく、学ぶ機会さえあれば参加してみたいという前向きな声も一定数存在するのです。若者が政治について正しく知識を得られる機会を増やせば、若者の投票率を上げ、政治参加を促すことにもつながるでしょう。
年齢別投票率の推移とその意味
年代別の投票率を見ると、年齢が上がるほど投票率も高くなる傾向にあります。令和3年の衆議院選挙では、20代の投票率が非常に低い一方で、70代では6割を超えていました。
このような傾向から、政治は高齢層の意見に偏りやすく、若者の声が届きにくい構造になりがちです。若年層の投票率向上のためには、SNSなどを活用した啓発や、政治をより身近に感じられる機会を設けることなどが求められています。
4. 話題になった立候補者と制度の“活用”例
近年の選挙では、個性的な立候補者が話題になることが増えています。こうした注目候補者の動きや、その背景にある選挙制度の仕組みを理解することで、私たちの一票の使い方も変わってくるでしょう。
ここでは、最近注目された立候補者の例と、選挙制度の活用について解説します。
立花孝志氏の兵庫選挙区出馬が注目された理由
今夏の参議院選挙で注目を集めている候補者の一人が、「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志氏です。立花氏は今回、兵庫選挙区(改選数3)から立候補を表明し、注目を集めました。
立花氏が兵庫での出馬を選んだ背景には、「兵庫でくすぶり続けている問題を訴えていきたい」という思いがあるといいます。立花氏は、昨年の兵庫県知事選でも立候補し、当時の現職・斎藤元彦氏を支援する2馬力選挙を展開した過去があります。
しかし、今回の参院選では「自身の当選を目的」とし、前回とは異なるスタンスで臨んでいるようです。立花氏は名誉毀損や脅迫などを巡って法的トラブルにも直面しており、兵庫県警からの取り調べを受けたことを会見で明らかにしました。
こうした背景もあり、立花氏の出馬は注目されているようです。
比例で注目される“知名度重視”の戦略
国政選挙では、いわゆる「タレント候補」と呼ばれる知名度の高い人物が多く擁立されます。これには、選挙制度に基づいた明確な戦略が背景にあるのです。
参院選比例区では、全国をひとつの選挙区とするため、候補者は全国的な知名度がないと有権者に名前を覚えてもらいにくくなります。さらに、立候補者が100人を超える中で票を得るというのは難しいことですが、タレントとして名前が知られていることで、すでに優位に立っていると考えられるのです。
また、比例代表では有権者が「政党名」または「候補者名」のどちらかを投票用紙に記入し、どちらに書かれていても政党の得票数に加算されます。つまり、知名度の高い候補者に多くの個人票が入れば、それがそのまま政党全体の得票アップにつながるのです。
さらに参院選では、候補者ごとの得票数で当落が決まる仕組みである「非拘束名簿式」が採用されています。したがって、個人としても当選を狙うには、より多くの票を集める必要があり、その点でも知名度は大きな武器になります。
このように、知名度の高い人物を擁立することは、政党にとって個人票と政党票の両方を稼げる、効率的な戦略であるといえるのです。
制度理解が“選び方”にも影響する
選挙で「誰に投票するか」を考えるうえでは、制度そのものの理解が大変重要です。参議院選挙の比例代表では、「非拘束名簿式」という仕組みが採用されており、有権者の投票行動が当選者の決定に直接的な影響を与えます。
この制度では、政党が提出する候補者名簿に当選順位はついていません。有権者は政党名だけでなく、候補者個人の名前を記載して投票できます。つまり、「この人を応援したい」と思えば、その人の名前を書いて直接支援できるのです。
このように、制度を正しく理解していれば、「この政党を応援したい」という理由で政党名を書くことも、「この人を国会に送りたい」という気持ちで候補者名を書くことも、どちらも意味のある行動となります。
選挙制度の仕組みを知ることは、私たちの一票をより有効に使うための第一歩なのです。
まとめ
参院選の制度は少し複雑に見えるかもしれませんが、選び方・仕組みを知ることは「選ばれ方」への理解にもつながります。特に2025年は、既存の枠組みに対する注目候補や、生活課題と密接に関わる政策が多く登場する可能性があります。
制度を知ることが投票への第一歩です。