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板橋駅西側エリアが変わる。再開発プロジェクトと駅前広場リニューアル

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板橋駅西側エリアでは市街地リニューアルが進行中

JR板橋駅東口(2025年4月上旬撮影)

現在、JR板橋駅(いたばしえき)の西口では、駅前広場の再整備を含む市街地再編が進められている。

板橋駅は、JR埼京線が通る駅で、1日平均約3万2,000人(2023年度。降車客を含まず)の利用があり、常に人通りが絶えない。駅から池袋駅まで約5分、新宿駅まで約10分という高い交通利便性を有しており、都心へのアクセスの良さが特徴である。

また、板橋駅から北側へ徒歩約5分の位置には都営三田線・新板橋駅があり、東京駅方面へのアクセスも良好である。

ちなみに、駅の改札口は板橋区内に位置しているが、東口側は北区滝野川、駅ホームの南側は豊島区上池袋および池袋本町にかかっている。このため、板橋駅は板橋区民のみならず、北区や豊島区の住民にも日常的に利用されている駅である。

これまでJR板橋駅では、2019年の東西自由通路の整備や、2020年の駅東口直結の「JR板橋東口ビル」の開業など、駅の機能更新と利便性の向上に向けた取り組みが段階的に行われてきた。そうした流れを受けて、現在は駅西側エリアにおいて、JR東日本や板橋区、周辺地権者などが中心となり、市街地再開発および駅前交通広場のリニューアル計画が進行している。

JR板橋駅東西自由通路(2025 年4月上旬撮影)
板橋駅周辺での市街地再開発プロジェクトの位置 ※出典:国土地理院地図を一部加工

本稿では、板橋駅西口で進行中の再開発プロジェクトについて、概要や特徴、完成時期を解説するとともに、再開発によってまちの風景や暮らしがどのように変化するのか解説する。

特に、板橋駅周辺で住まいを検討している方にとって、再開発による周辺環境や街の変化は、暮らしの質に直結する重要なポイントとなる。この記事では、その変化の内容と背景を分かりやすく紹介する。

市街地再開発事業が実施される背景など

板橋駅西口周辺地区まちづくりプランにおける「望ましい将来のまちの姿」※出典:板橋区、2015年3月、「板橋駅西口周辺地区まちづくり」p23

はじめに市街地再開発が行われるに至った背景について解説したい。板橋区では、2015年に「板橋区都市計画マスタープラン」に基づく「板橋駅西口周辺地区まちづくりプラン」を策定した。都市計画マスタープランとは、土地の利用方法に関して区や住民、事業者がルールを定めるための指針となるもので、都市づくりにおいては最も大切な計画となっている。

当該プランでは、板橋駅西側エリア(約18.5ha)において望ましいまちのあり方を示すことにあり、将来のまちの姿として、「板橋区の玄関にふさわしいまち」や「誰もが暮らしやすく、活気にあふれたまち」、「安全で安心なまち」を掲げている。

今回、事業が進められている市街地再開発や既に整備が完了している駅の東西自由通路などは、プランを具現化するための具体的な施策として位置付けられている。

また、このまちづくりプランの中では、地区の課題として、駅周辺への都心居住推進や、広域的環境課題(脱炭素)への対応、防災性の向上、日常生活を支える商業・サービス機能の充実をはじめとした課題に対応する方針が掲げられている。

JR板橋駅西側エリアの市街地(2025年4月上旬撮影)

次に、板橋駅西口周辺の現況や地域の特性を整理しておきたい。

板橋区は、区の主要駅である板橋駅が東南端に位置し、行政区域は当該駅から北西方向に広がっている。かつては旧中山道の宿場町として栄えた歴史を持ち、加賀藩下屋敷跡地を活用した土地利用の名残も色濃く残っている。駅西側エリアには、商店街のほか官公庁施設、教育・文化施設、医療施設などが集積し、生活利便性の高い地域であるといえる。

ただし、駅西側のエリア一部では古くからの市街地が広がっており、老朽化した建物が多く残る地域でもある。狭隘な道路や不燃化が進んでいない建物群は防災面でのリスクも抱えている。
また、板橋駅は人口約58万人を抱える板橋区の“玄関口”にあたるが、その役割に対して、駅前空間や都市機能の面において玄関口としての存在感に欠ける印象を持つ人が多いかもしれない。

このような背景を踏まえ、板橋区では都市づくりの方針として、板橋駅西口を「区の玄関(ゲート)にふさわしい個性と魅力ある市街地の実現を目指す」ことを掲げている。まちの魅力や情報を発信する機能、交流の場、景観形成ルールなどの整備を推進し、「東京で一番住みたくなるまち」という都市像の実現を目指している。

実際に駅西口に降り立ってみると、中小規模の商業施設が多く、日用品の買い物や飲食に困ることはない。しかし、来訪者や地域住民が滞在したくなるような「憩い」や「潤い」などを感じられる空間は十分とは言い難い。そのような観点からも、今回の市街地再開発と交通広場のリニューアルは、板橋駅の第一印象やまちの風景を大きく変える可能性を持っている。

JR板橋駅西側エリアの市街地(2025年4月上旬撮影)

市街地再開発事業の概要(板橋口)

板橋口市街地再開発のイメージパース ※出典:野村不動産株式会社・東日本旅客鉄道株式会社『「板橋駅板橋口地区第一種市街地再開発事業」権利変換計画認可のお知らせ〜板橋駅前の新たな賑わい拠点となる駅直結複合開発〜』(2022年11月9日)。右写真:西口エリアより駅方面を撮影(2025年4月上旬撮影)

はじめに、JR東日本や野村不動産株式会社、板橋区が推進している「板橋駅板橋口地区市街地再開発事業」について取り上げる。

再開発では、JR東日本と板橋区が所有する土地約0.4ha内で駅直結の住宅・商業・公共機能を有する地上34階建て、高さ約126mの複合施設が建設される。土地の一部は、区が1992年に「国際交流」を目的に取得した土地となっている。2018年には、区が所有する土地に隣接するJR東日本所有の用地と一体開発のための協定を締結、同年には、共同事業者の公募を行い野村不動産株式会社を選定した。

板橋口の再開発の特徴として大きく三つある。

一つ目は、公共施設として、区民プラザ・ホールが入る点だ。公共部分は、施設コンセプトを「まちの編集ひろば」とし、区の取り組みの展示や地域活動、イベント・催事が可能な広場のような施設ができる予定となっている。

二つ目は、JR東日本管内では初となる板橋駅に直結する点にある。一般的に、駅に隣接した市街地再開発ではペデストリアンデッキ等を介して駅までアクセスする形態となることが多いが、今回の再開発では駅のコンコースに直接面しており、駅までのアクセスがしやすくなっている。

最後の三つ目は、商業施設部分の運営は、JR東日本グループが運営する株式会社アトレが行う予定となっている点だ。「アトレ」は、上野駅や恵比寿駅などをはじめ、JR東日本管内に32店舗あり、板橋駅では初出店となる。

公益エリアの概成と利用イメージ ※出典:板橋区、「板橋駅板橋口地区公益エリア整備計画」(2025年2月)

<計画建物の概要>
・建築敷地面積:約3,859m2
・建築面積:約2,461m2
・延べ面積:約51,159m2
・階数:地下3階、地上34階
・建蔽率:約 64%
・容積率:約950%
・用 途:商業施設、公益施設、住宅施設、駐車場
     B1〜3階:商業施設、4階:公益エリア、5階:子育て支援施設、6〜34階:分譲住宅
・構 造:鉄筋コンクリート造
・高 さ:約126m
・付帯施設:駐車場170台
・総事業費:約255億円

再開発ビルでは、分譲住宅として約388戸が予定されている。土地の所有者はJR東日本および板橋区であるため、定期借地権付きの分譲マンションとなる。定期借地権付きマンションであるため、何世代にもわたって所有し続けることはできないものの、土地所有権付きの分譲マンションと比較して価格が抑えられている。板橋駅という優れた立地性から、通勤・通学・子育ての利便性を最優先に考える層にとっては、競争率の高い物件となる可能性が高い。

なお、区が2022年11月に公表した野村不動産株式会社との一般定期借地権に締結概要によると、区との契約期間は2022年11月から2101年6月末までとされている。分譲マンションの販売時期に関しては、今後、野村不動産から正式なリリースが行われると考えられる。

この他、再開発では広場や空地が整備される予定となっており、板橋区が整備する駅前広場や西口地区市街地再開発事業と一体となった人中心の緑豊かな駅前空間に生まれ変わる予定だ。

▶︎参考情報:野村不動産株式会社・東日本旅客鉄道株式会社 、『「板橋駅板橋口地区第一種市街地再開発事業」権利変換計画認可のお知らせ~板橋駅前の新たな賑わい拠点となる駅直結複合開発~』の詳細情報はこちらをクリック。

公益エリアの施設構成とレイアウト方針(コンセプト模型)※出典:板橋区、「板橋駅板橋口地区公益エリア整備計画」(2025年2月)

市街地再開発事業の概要(西口)

西口地区市街地再開発のイメージパース ※出典:東京都、報道発表資料「板橋駅西口地区市街地再開発組合の設立を認可します」(2022年7月28日)

駅前広場の西側に位置する西口エリアでは、「板橋駅西口地区第一種市街地再開発事業」が行われる。

西口では、A街区とB街区に分かれており、A街区では、地上37階建て、高さ約140mの住宅・商業・業務の複合施設が建築され、B街区では、地上6階建て、高さ約25mの商業・業務施設が建築される。この他、歩道状の空地、広場などが整備される予定となっている。

総事業費は約349億円を予定している。

<計画建物の概要:A街区>
・建築敷地面積:約3,275m2
・建築面積:約1,995m2
・延べ面積:約44,380m2(容積率対象延べ面積:約31,040m2)
・階数:地下2階、地上37階
・建蔽率:約 60%
・容積率:約950%
・用 途:住宅、店舗、事務所、公益的施設、駐車場など
・構 造:鉄筋コンクリート造
・高 さ:約140m
・付帯施設:駐車場120台、駐輪場990台、自動二輪駐車場50台

<計画建物の概要:B街区>
・建築敷地面積:約540m2
・建築面積:約325m2
・延べ面積:約1,500m2(容積率対象延べ面積:約1,390m2)
・階数:地下2階、地上6階
・建蔽率:約 60%
・容積率:約260%
・用 途:店舗・事務所等
・構 造:鉄骨造
・高 さ:約25m
・付帯施設:駐車場1台、駐輪場5台

西口地区市街地再開発事業の配置図を一部加工 ※出典:事業計画書(2024年10月、板橋駅西口市街地再開発組合)

また、A街区については、地上6〜37階に部分に分譲住宅が予定されており、総戸数は約390戸が計画されている。事業計画書(2024年10月、板橋駅西口市街地再開発組合)によると、それぞれの住宅の間取りと予定戸数等は次のとおりとなっている。
・〜1LDK 計画戸数 50戸(戸当たり床面積: 40m2)
・ 2LDK 計画戸数154戸(戸当たり床面積: 55m2)
・ 3LDK 計画戸数185戸(戸当たり床面積: 75m2)
・ 4LDK〜計画戸数 2戸(戸当たり床面積:110m2)

▶︎参考情報:東京都、報道発表資料「板橋駅西口地区市街地再開発組合の設立を認可します」(2022年7月28日)はこちらをクリック。

西口地区エリアの現況(2025年4月上旬撮影)

スケジュール

再開発事業の全体スケジュール ※出典:板橋区「板橋駅西口駅前広場整備計画(進捗版)Ver.01、ennomori」

事業計画書(2024年10月)等によると、建築物の竣工予定は、板橋口地区は2027年6月、西口地区は2029年9月が予定されている。また、それぞれのスケジュールは、板橋口地区(公益エリアを含む)が2027年度中にオープンし、その後、西口地区の2029年度竣工にあわせて、西口駅前広場再整備も同年度に完了する予定となっている。

再開発によって板橋区での暮らしはどう変わる?

新しい駅前広場のデザイン案 ※出典:板橋区「板橋駅西口駅前広場整備計画(進捗版)Ver.01、ennomori」

あなたは板橋駅に対しどのような印象を抱くだろうか。区の主要駅でありながらも山手線の駅ではないため、他の主要駅と比較すると見劣りすると感じる人もいるかもしれない。もちろん、まちの価値は見る人によって異なるものであり、そのあり方に唯一の正解があるわけではないが、隣の池袋駅と比較されやすいのも事実である。

一方、板橋駅では、大規模な市街地再編がこれまで行われてこなかったことが、逆に「板橋らしさ」を保つ要因となってきたとも言える。駅北西側の旧中山道沿いには、長年続く商店街が残り、今も人通りが絶えず賑わいを見せている。大きな再整備が行われてこなかったからこそ、こうした地域の暮らしの風景が維持されてきた。

今回の再開発では、駅前広場の再整備に加え、2ヶ所で超高層建築物が建てられる予定である。これにより、駅前の街並みは一新され、洗練された都市空間として生まれ変わる。今後、このプロジェクトを契機として、周辺のさらなる街区整備が加速する可能性もある。

ただし、今回の再開発は、かつてのような均質的な再開発ビルではない。駅前広場には、緑を取り入れた滞留空間の創出が図られており、通過する駅前から、人が立ち止まる空間の転換が目指されている。こうしたデザインには、脱炭素や人中心のまちづくりといった社会的要請への応答という背景がある。板橋駅前で進められている公共投資は、他の地域で進められてきたような従来型の再開発とは異なり、まちの質を高める視点が重視されている点に特徴がある。

板橋駅西口はこれから大きく姿を変えることになるが、その根底には、人を中心とした都市空間への転換という意図がある。長年、抜本的な再整備が行われなかったことが、結果的に「まちの個性」を残すことにつながり、板橋区が掲げる「東京で一番住みたいまち」という都市像にも一歩近づく可能性が高い。

おわりに

板橋の由来となった「石神井川」に架かる「板橋」(2025年4月上旬撮影)

板橋駅を下車し、旧中山道沿いを歩いて「板橋」の由来となった石神井川に架かる橋へ足を延ばしてみると、途中、旧板橋宿を通ることになる。商店街には当時の名残はないものの、平日にもかかわらず多くの人で賑わっており、普段から地域住民の生活を支える空間として機能している様子がうかがえる。

確かに、商店街沿いの一部にはマンションやアパートが点在し、建物によっては街並みとのアンバランスさが感じられる場所もあるが、そうした変化が賑わいを奪っているわけではない。むしろ、そこに住む若い世代の家族層が、商店街を日常的に利用することで、新たな活気が生まれている点は、板橋というまちの大きな特徴と言える。

板橋駅は、新宿・渋谷方面、東京方面のいずれにもアクセスが良好であり、都心に近すぎず遠すぎない距離感を求める層にとっては、暮らしやすさと利便性のバランスがとれたまちといえる。再開発後における板橋駅西側地域は、今後の都市デザインやライフスタイルを考える上で、一つのヒントになるかもしれない。

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