渋さと遊び心が光る!アニメ化された時代劇3本「まんが水戸黄門」「少年徳川家康」「鬼平犯科帳」
SBSラジオ「TOROアニメーション総研」のイチオシコーナー、人気アニメ評論家の藤津さんが語る『藤津亮太のアニメラボ』。今回は日本の時代劇アニメ3作品についてお話を伺いました。※以下語り、藤津亮太さん
SBSラジオ「TOROアニメーション総研」のイチオシコーナー、人気アニメ評論家の藤津さんが語る『藤津亮太のアニメラボ』。今回は日本の時代劇アニメ3作品についてお話を伺いました。※以下語り、藤津亮太さん
1. まんが水戸黄門
1本目は『まんが水戸黄門』。1981年に全46話が放送された作品です。水戸黄門というキャラクターは1950年代の実写映画などもありますが、本作の直接のインパイアもとは、TBS系列の月曜夜8時枠で人気だった時代劇『水戸黄門』になります。旅先で悪代官などを水戸黄門御一行がこらしめるのが基本のパターンで、最後に徳川将軍家のゆかりであることを表す葵の御紋の印籠を示すことで、悪人たちが観念するというというおなじみの展開で知られた作品です。
とはいえ本作はアニメ。例えば第1話のサブタイトルは「必殺・流星十文字斬り」、第2話は「悪魔の谷・大爆発」と、時代劇らしからぬテイスト。助さんは「葵三つ葉返し」という必殺技を使いますし、格さんは「力だすき」というお助けアイテムでパワーアップし、百人力になるという設定です。
また本作では黄門様ご一行には、捨丸という少年と鈍兵衛という犬もいますが、この鈍兵衛が人語を解し、捨丸とだけは会話できるなど、アニメでないとありえないようなシーンもあります。
脚本を担当した伊東恒久さんが、実写のイメージからどれだけ離れ、アニメとしてどのように盛り上げるかを工夫した結果というわけです。また劇伴も主題歌も、時代劇らしからぬ現代的な雰囲気です。
2. 少年徳川家康
2本目は『少年徳川家康』。1950年代に連載が始まり、大ベストセラーとなった山岡荘八の小説『徳川家康』の、家康の少年時代だけをアニメ化した作品です。数え年6歳で今川家の人質となった竹千代が、岡崎城へ戻るまでの物語で、全20話が制作されました。於大の方という母親と離れ、寂しさと複雑な戦国の情勢の中で、一生懸命頑張る少年の姿が描かれています。
実はこのアニメは『一休さん』の前番組で、どちらも「1人ぼっちの男の子が母を思いながら頑張る」という構図が共通しています。制作はいずれも東映アニメーションで、母親役の声優も両作とも増山江威子さんが務めており、強い連続性が感じられます。
3. 鬼平犯科帳
3本目は池波正太郎の小説を原作とした『鬼平』。火付盗賊改方長官・長谷川平蔵を主人公にした時代劇ドラマシリーズ『鬼平犯科帳』が、2017年にアニメ化されました。渋い題材ながら、堀内賢雄さん、浪川大輔さん、細谷佳正さんなど、キャスト陣は時代劇らしさを意識した演技で、非常に聞きごたえがあります。監督は、現在『怪獣8号』を手がけている宮繁之さんです。
また、池波正太郎の小説では料理の描写も大きなポイントですが、アニメでもその点が重視されています。メカデザイナーとしても知られる森木靖泰さんが、料理のデザインやそのシーンの作画監督を担当。江戸を感じさせるさまざまな食事が魅力的に描かれ、池波正太郎の世界をしっかり表現しました。
以上、『まんが水戸黄門』『少年徳川家康』『鬼平』という、時代劇アニメ3作品をご紹介しました。