岩田剛典「Phone Number」インタビュー――新たな"岩田剛典"を感じさせる「Phone Number」で魅せる新たな挑戦
──髪、バッサリ切りましたね。
「はい。まだ自分でもちょっと慣れていなくて、鏡を見るたびに毎回ちょっとびっくりします(笑)。確か2010〜11年あたりもこんな髪型だったんですよ。だからファンの方がその頃の写真を掘り返して、SNSで“一緒だー!”って喜んでくれている様子を見るのも楽しいです」
──では気持ちも新たにということで、New Single「Phone Number」についてお話を聞かせてください。今作のリリースに際し“ユニバーサル ミュージックのレーベルVirgin Musicと力を合わせて新たな表現にチャレンジしていくことになりました”とコメントされていました。このタイミングで新たな表現にチャレンジしたいと思ったのはどうしてなのでしょうか?
「今までソロのアーティスト活動に関しては、やりたいことや目標などほとんどすべてが自分発信だったんです。活動もライブをメインで考えていましたし、何と言うか、ファンの皆さんに向けたような活動をしてきていて。でも音楽業界の中で、プロのアーティスト・岩田剛典としてやっていこうと思ったときに、客観的な意見を取り入れて見たらどんな化学反応が生まれるんだろう?と興味が湧いてきて…」
──新しいことをしなくても、アーティスト活動は十分に成立していたと思うんです。そこであえて新しい挑戦を選んだのはどうしてだったのでしょうか?
「“展開を変えたかった”と言うのが一番大きいです。僕はソロデビューするときに、アリーナツアーを目標に掲げていました。そして、活動を始めて3年経った去年、実際にアリーナツアーまでたどり着きました。でもその先を設定していなかったから、“この先どう構築していこう?”と考えていて。そんなときにVirgin Musicさんとお話しさせていただく機会があったんです。アリーナツアーも見ていただいていたので、今までの自分も知った上でプロデュースしてくれるチームとなら新しいことができそうだと思って、タッグを組むことにしました」
──これからはもっと広げていく、今まで届かなかったところにもさらに届けていくようなイメージですか?
「そうですね。今回のプロモーションの仕方にしても、これまでのLDH Recordsでやってきた3年間とは角度が違いますし。ちょっとビジネスライクな話になっちゃいますけど、これまではリリースにあたって、歌番組以外に出演する事ってあまり考えていなかったんです。でも今回は情報番組にも出ていきます。そういうアイデアをもらえるのが新鮮ですね。実際、僕のことをパフォーマーと俳優のイメージで見ている人って多いと思うんです。ソロで歌っているということを知らない人もまだまだたくさんいる…そういう人にも知ってもらえるように頑張りたいです」
──それこそencoreにご登場していただくのも今回が初めてですもんね。
「そうですね。お世話になります!」
──その第1弾としてリリースされるのがシングル「Phone Number」です。表題曲は“あの人の電話番号が消せない”という切なさを歌ったラブソングですが、この曲を制作するにあたって、岩田さんからは何か希望は出されたのでしょうか?
「最初にユニバーサルのチームの皆さんから“男の色気枠”みたいなところが合うんじゃないか?という話をされて…音楽面だけじゃなくて、ブランディングみたいなところも含めて。そう言われてみると、僕の中でもイメージが湧いたので、その路線で制作をお願いしました」
──では最初にこの曲を聴いたときはどう感じましたか?
「歌ものではあるんですけど、サウンド的には今までの僕の作品に入っていても違和感がないようなサウンド感ではあって。あとはカラオケで歌いたくなりますよね。僕としては、やっぱりカラオケで歌いたくなるというのは、J-POPの楽曲をリリースする上でかなり重要なポイントだと思っています。今はTikTokから流行りが生まれることも多いですが、そこからみんなカラオケに行くと思うんです。結局はどの世代でもカラオケが流行りを作っている。だから“いいな”と思いました。歌詞に関しては、最初は違う内容だったのですが、最終的にこうなって。これまでは自分の体験をもとにした歌詞を書いていたのですが、今回は僕とはまったく関係ない、しかも歌謡曲っぽい世界観。聴いてくれる人には新鮮に映ると思います」
──歌詞は当初この内容ではなかったということですが、この歌詞になって最初に受け取ったときはどう感じました?
「色気たっぷりだなと(笑)。でも情景が浮かぶ歌詞で、素敵だなと思いました。歌っていても新鮮です」
──実際に歌ってみていかがですか?
「ソロデビューするときに、いろいろな曲を歌って自分の曲のレンジ(音域)を決めていたんですが、この曲のキーはそことは違うんですよ。声を張って歌うんですが、声を張って歌う自分の声って、子供っぽく聴こえると思っていて、これまで外していました。でもこの曲はまさにそのキーで。だから最初はちょっと恥ずかしさがありました。でもそれって自分が思っているだけのことなんですよね。今はこの歌声も腑に落ちていて、これからはこういう曲もどんどん歌っていきたいです」
──この世界観を表現するために特に意識したことやこだわったことはありますか? 演じるように歌ったり。
「確かに演じるように歌っています。でも音源ではそこまで何かを意識しているということはないかもしれないです。ライブなどではこの登場人物の感情になって熱く歌い上げていますけど。僕はソロで歌うときも、“歌って踊る”ということは絶対的なアイデンティティとして持っておきたいと思っていて、どんな楽曲でもダンスは入れたいんです。だからこの曲もパフォーマンスが加わることで、よりセクシーさが表現できているんじゃないかな?」
──対してカップリング曲「Get Down」、「MVP」はいずれも岩田さんが作詞に参加されたヒップホップナンバーです。
「2曲とも去年のアリーナツアー(『Takanori Iwata LIVE TOUR 2024 "ARTLESS"』)でも披露していた曲で、今回初めてCDに収録されます。曲としては前回のアルバム『ARTLESS』制作時には既に候補曲としてあったんですが、『ARTLESS』に収録するのはちょっと違うかな?と思って除いていて。でも結局ライブではこういう曲が一番盛り上がるんですよね(笑)。ダンスパフォーマンス映えする2曲です」
──踊りながらこのラップをするんですよね?
「そうです。なんなら、ライブを意識して作っているので」
──素朴な意見で申し訳ないのですが、大変じゃないですか…?
「大変です(笑)。特に「Get Down」は詰め込みすぎちゃいました(笑)。曲を作っていたときに僕が、こういう詰め込むようなラップの曲をよく聴いていたので、自分でもやりたくなっちゃって。もともとのデモでは、ラップの部分が歌メロだったんです。でも僕が“畳み掛けるリズムで言葉を入れたい”と思って…やっちゃいました(笑)。ライブをしてみて初めて、“詰め込みすぎたな…”と思いました(笑)」
──「Get Down」では<過去の栄光すがらねぇ>、<好きなようにやる>、<実力でBeat up>、「MVP」で<嘲笑うHaters 無謀な夢>、<掌返し 不言実行するアリーナ>、<誰よりも重ねてきた>と、2曲とも、周囲の目に穿った目に対する怒りや、自身をさらに焚き付ける言葉が並んでいるのも印象的です。
「ちょうどその時期、そういう気分だったんでしょうね」
──ということは2曲とも同じような時期にできたのでしょうか?
「そうですね。「MVP」はアリーナツアーの初日に披露したいと思って、そこをめがけて作って、「Get Down」は同じツアーのスペシャル公演としてやった武道館公演(『Takanori Iwata LIVE TOUR 2024 "ARTLESS" FINAL in武道館』)で新曲を披露できたらと思って作っていました」
──“作った時期にそういう気分だった”とおっしゃっていましたが、作った際にどういうモードだったのか教えていただけますか?
「MVP」は最初に“「MVP」というタイトルの曲を作ろう”と思って作り始めました。“俺がMVPだ”と歌うようなイメージがあって。モードで言うと…アニマル浜口さん(笑)。それくらい気合いが入っている曲にしたくてリリックを書きました。というのも、トラックを聴いたときに、僕が好きだった90年代後半のニュースクールヒップホップの雰囲気を感じたんです。映画『ユー・ガット・サーブド』のサントラみたいな。だから聴いた瞬間に“サビではがっつり踊ろう”とか、“気合いの入ったラップにしよう”とアイデアが浮かんで。その結果、アルバムに収録していない曲なのに、アリーナツアーでは一番気合い入れて演出しちゃいました(笑)。でも本当に嘘偽りない僕の言葉ですし、僕にしか書けないリリックだと思っているので。<Paris, TV, radio, magazine>とか書けるの、僕だけですよ、多分」
──<Todayʼs a singer / And 明日はActor / 生粋のDancer / All the sold out shows!>あたりもまさにですよね。
「そうそう。そういう芯を食った、気持ちを赤裸々に書いたリリックって、聴いた人に刺さるじゃないですか。三代目J SOUL BROTHERSのドームツアーでもメンバーから“岩ちゃんは「MVP」で”って言われて、やることになりましたから」
──メンバーから見ても岩田さんらしい曲ということなんでしょうね。
「“パフォーマーがマイクを持ってやるならこういう曲だよね”っていう正解例みたいな曲なんだと思います」
──「Get Down」はいかがですか?
「ゴリっとしたヒップホップがやりたくて、そういうデモをいくつか集めていたんです。その中から、ちょうどそのときの自分が“やりたいな”と思った雰囲気のものを見つけて曲にしていきました。歌詞はちょっと…赤裸々を通り越して大胆なことを言っていますよね。熱くてちょっと恥ずかしいですが…」
──これもまさに岩田さんにしか書けないリリックですよね。
「そうだと思います」
──そんな雰囲気の異なる3曲が収録されたシングル『Phone Number』ですが、どのような1作になったとご自身で思いますか?
「まずは「Phone Number」を聴いてもらいたいシングルです。あとの2曲は去年の僕の活動を代表する2曲という気持ちなので。新曲「Phone Number」で、歌い方も音楽性もガラッと変わった自分を見てほしいです。あと、今作は映像コンテンツがすごく充実していて。MATE限定の完全受注生産デラックスBOX盤では、Blu-ray/DVDで武道館公演がフルで入っているのと、2023年末くらいからアリーナツアー終わるまで密着してもらったドキュメンタリーが付くんです」
──いずれも2時間ほどの長さだそうで。大ボリュームですね。
「はい。ドキュメンタリーは、僕にとって“業務”にならないように、友達のような存在のカメラマンに密着してもらいました。だから敬語じゃない瞬間もたくさんあると思います。友達と旅行に行ったくらいの感覚でしゃべっているので、見ている人にとっては新鮮なんじゃないかな? 内容としてもかなり赤裸々に語っています。エンタメについての僕の向き合い方とか、地上波のメディアでは話せないようなこともいっぱい話しています」
──そのドキュメンタリーを見た上で、「Get Down」や「MVP」を聴くとさらに説得力が増しそうですね。
「そうですね。ダンスを始めた頃から遡っているんですよ。ダンスと出会って、グループに入って…っていう転換期を全て遡っています。あとツアーの初日、ファンの人が泣いているのを見て僕ももらい泣きしてしまって…その映像も入っているのでファンの皆さんにとっては永久保存版かも(笑)。今はツアーが終わって平穏ですけど、ツアー中は“舐めんじゃねぇ!”、“見返してやる!”みたいな感覚になっていたので、その感じも出ていると思います」
──ツアー中は“舐めんじゃねぇ!”、“見返してやる!”みたいな感覚になっていたとおっしゃっていましたし、それこそ「Get Down」や「MVP」のリリックにもそういった内容の言葉が綴られていますが、はたからみると、岩田さんはこんなに色々なことが出来て、たくさんのものを手に入れているのに、悔しさが湧いてくるのはどうしてなんだろう?と思ってしまうのですが…どうしてなのでしょうか?
「僕、弱みをあまり見せたくないんですよ、世間にもメンバーにも。だから何でも淡々とやっているように見えると思うんです。実際にテレビで“何でもできる人”と紹介されたりしますし…。でも実際は散々辛酸を舐めてきていますし、挫折もしているんですよ。まさに、ツアーでは、そういう話…“誰々にこういうことを言われて、何くそと思って頑張ってきた”っていう話をMCでしてから「MVP」に入っていました。本当はそこでバラードとかを歌うと思いますが、こういう曲になっちゃうのが僕なんですけど(笑)。でも、“ライブでそういう話をして曲に入る”と言うところまで考えて「MVP」を作ったので。例えばそういう話って、こういう活字のインタビューとかテレビのインタビューとかですると、角が立ちまくっちゃうと思うんです。でも音楽にすると、角は立たない。だから音楽って最高だなと思います」
──音楽の可能性にも改めて気づけたんですね。
「はい。ただこの先、もうこんな熱量では曲を作れないかもしれないとも思っていて。今回、アリーナツアーも回ることができて、武道館にも立ったので、きっとこの先出てくる言葉は違います。でもその時はその時に出てきた嘘偽りない自分の言葉を歌っていきたいです。この先も、そういうアーティストとしての変換を、ファンの皆さんにも楽しんでもらいたいです」
──今回、新しい環境からご自身にとっては挑戦とも言えるシングルをリリースしましたが、ソロアーティストとしての今後の展望はどのように考えていますか?
「まずは今年1年かけて、ファンの皆さんだけではなく、お茶の間にも“岩田剛典は歌います”ということをしっかりPRしていきたいです。それと、やっぱりステージには立ちたいです。それはもちろんソロのコンサートでもいいんですけど、フェスなどにもトライしていきたいなと。とにかく今までしてこなかった経験を増やしていきたいです。あとは『MAMA AWARDS』とかにも出たいです! 呼んでくれないかな〜(笑)」
(おわり)
取材・文/小林千絵
写真/中村功
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2025年2月12日(水)発売
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岩田剛典「Phone Number」
2025年2月12日(水)発売
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岩田剛典「Phone Number」