【横浜市栄区】単身高齢者見守り事業 対象を80歳以上に 民生委員の負担軽減へ
栄区は例年10月から行われる「ひとり暮らし高齢者『地域で見守り』推進事業」について、訪問対象となる年齢を現在の75歳以上から80歳以上に引き上げる。訪問を担う民生委員の負担軽減などが目的。
横浜市は2012年から、同事業として一人暮らし高齢者の孤立防止や民生委員が地域情報を得ることを目的に、民生委員による75歳以上の一人暮らし高齢者宅の訪問を行っている。
現在、栄区の民生委員は141人。これに対し、75歳以上の対象者は5665人と見込まれている。例年通りであれば一人あたり40・2人を訪問する。しかし対象を80歳以上に引き上げることで対象者が3818人になり、一人当たり27・1人を担当。32%の減少になる。
民生委員の負担減を行うため、区福祉保健は7月に行われた区連会定例会で連合町内会自治会長に向けて、引き上げの理解を求めた。
訪問10年で3倍
事業開始から10年以上が経過したことで、高齢化など社会状況は変化。同事業に関しても複数の課題が指摘されている。
制度開始以来、75歳以上の単身者は市全体で約3倍になった。しかし、民生委員の数は1・19倍と微増で、民生委員一人あたりの担当人数が増加している。
また、「75歳以上でも元気な人が多い」との声もある。一人暮らしでも、さまざまな活動に参加している人は多く、訪問しても「見守りや支援相談は必要ない」との回答をする人の割合が多いという。
さらに、今年12月の民生委員改選では再任に限り75歳以上でも推薦できる「年齢要件の特例」が新設される。これにより訪問する民生委員が訪問される側の年齢を超える可能性がある。
こうした問題を踏まえ、市は年齢の引き上げを検討。区ごとの判断で試行的に引き上げを実施できるようになった。昨年は青葉区が実施し、訪問対象者数は約3分の2になったという。栄区では栄区民生委員児童委員協議会からの要請もあり、今年の引き上げ実施が決まった。
なお、75歳以上の人の名簿は民生委員に配布されるため、民生委員の個別判断で訪問するケースはある。また、訪問を希望する人には80歳未満であってもこれまで通り実施されるという。
区担当者は「民生委員の負担を減らしつつ、一番の目的である『高齢者と民生委員がゆるやかにつながる』状態を作りたい。民生委員には声なき、声を拾い必要な支援につなぐ役割を担ってほしい」と話した。