高性能住宅ってなに?活用できる制度も解説!
家に求める機能やデザインは人それぞれですが、「安心で快適な暮らしがしたい」という思いは多くの人に共通するのではないでしょうか。
今回は「夏は涼しく冬は暖かい」「災害に強い」など、安心・快適に暮らせる高性能住宅についてご紹介。高性能住宅のポイントから補助金制度まで解説していきます。
高性能住宅とは
たびたび耳にする高性能住宅とは、どのような住宅を指すのでしょうか。ここでは高性能住宅の概要についてご紹介します。
高性能住宅に明確な基準はない
高性能住宅とは、断熱性・気密性・耐震性・耐久性・省エネ性など快適に暮らすための性能がそろっている住宅のことを指しますが、明確な定義や基準はありません。
一方国が認定制度を設けている長期優良住宅やZEH住宅には、明確な定義や基準が設けられています。
高性能住宅ってなに?4つのポイントと指標を解説
四季があり、地震や台風などの災害が頻発する日本。そんな日本での暮らしを安全・快適にするために、高性能住宅の「夏は涼しく冬は暖かい」、「災害に強い」といった特徴は、必要不可欠です。
ここでは「高性能住宅」といわれる住宅に必要なポイントを4つ、指標とともに解説します。
気密性
気密性の高い家とは、住宅の隙間をなくし、室内の空気が外に逃げにくく、室外の空気が入らないようにした家のこと。防湿シートや気密テープを使ってより密閉された状態を作ることで、室内の温度を管理しやすくしています。
気密性能を比較する指標にC値があります。C値とは「相当隙間面積」のことで、家にどれくらい隙間があるかを数値で示したもの。C値が低いほど隙間が少なく、高気密な家であることを指します。
気密性はなぜ必要?
高性能住宅を建てるポイントのひとつとなる気密性。住宅に気密性が必要な理由として、①省エネルギー性を高める、②壁の中の結露を防ぐの2点が挙げられます。
①の省エネルギー性を高めるというのは、高性能住宅の条件である断熱性にも関わってきます。家に隙間があるとそこから外気が入り込んでくるため、部屋の温度を保てないだけでなく断熱性能も低下してしまうのです。
高性能住宅に省エネルギー性は必要不可欠。よって、高い気密性が求められます。
②の壁の中の結露を防ぐというのは、家の中の腐敗を防ぐということ。冬場は家の中で湿気が大量に発生するため、壁に穴が開いていると湿気が床下や壁の中に入り込み、壁の中で結露(壁体内結露)していきます。
壁体内結露が進むと住宅が傷んでしまうため、気密性は高性能住宅において非常に重要な要素となります。
断熱性
断熱とは、文字通り熱を断つこと。暖房器具で室内を暖めても、屋根・外壁・開口部・換気口などから熱は逃げます。住宅の断熱性能は壁や屋根、床に断熱材を入れる、断熱性の高い窓を導入するなどの対策によって高めることが可能です。室内の熱が逃げにくく、外からの熱の影響を受けにくくなり、冬は暖かく、夏は涼しい家が実現できます。
断熱性能を比較する指標の代表格であるUa値は「外皮平均熱貫流率」のこと。住宅の内部から床(基礎)、外壁、屋根や開口部などを通して外部へ逃げる熱量を、外皮全体で平均した値です。Ua値が小さいほど熱が逃げにくく、断熱性能や省エネルギー性能が高い家であるといえます。
断熱性はなぜ必要?
高性能住宅において欠かせない断熱性は、「夏涼しく、冬暖かい」住宅をつくるための要素です。夏は外の熱気が室内に侵入するのを防ぎ、冬は暖かい空気が外へ逃げるのを防ぎます。
断熱性を高めるには、家の壁や床、天井などに断熱材を張ります。断熱材には、細かな繊維の間に空気を閉じ込めるという繊維系断熱材と、自然素材を活用した天然素材系断熱材の2種類があります。
一言で断熱材といっても価格や性能、特徴などが異なるため、高性能住宅を建てる際はそれぞれどのような断熱材があるのか調べておくとよいでしょう。
耐震性
地震に耐える強さも、高性能住宅の重要なポイントです。
地震の揺れにどれくらい耐えられるかは「耐震等級」という3段階の指標で測ることができます。
・耐震等級1:建築基準法の基準を満たす
・耐震等級2:建築基準法の1.25倍の耐震性能を持つ
・耐震等級3:建築基準法の1.5倍の耐震性能を持つ
※建築基準法の基準とは、震度6強から7程度の大地震で倒壊・崩壊せず、震度5程度の中地震で損傷しないレベルのことをいいます。
耐震性はなぜ必要?
(一社)日本耐震診断協会によると、阪神淡路大震災で亡くなった方は6433人。そのうち約86%が自宅の倒壊によって窒息死もしくは圧死したといわれています。
地震大国と呼ばれる日本では、耐震性はなくてはならない性能。耐震性能を高めることで、自分の命や家族を守ることにつながるのです。
耐久性
耐久性の高さは、長く安心して暮らせる家に欠かせないポイントです。長期にわたって良好な状態で使えるように建てられた住宅は、自治体から「長期優良住宅」として認定を受けることができます。
長期優良住宅の認定基準は、住宅が一定の耐久性を持っていること。認定項目には耐震性や省エネ性、定期的な点検などがあり、基準を満たせば税金面での優遇などメリットも得られます。
耐久性はなぜ必要?
高性能住宅において、耐久性は家を長持ちさせるために大切な要素になります。
日本は木造住宅が主流であるため家が長持ちしにくいといわれており、家を建ててから30年~40年ほどで建て替えるといわれています。しかし、建て替え費用やリフォーム費用には大きな金額がかかることを考えると、耐久性にもこだわった家を建てることが大切です。
国が認定する「長期優良住宅」の耐久性認定基準は、構造躯体に比べて耐用年数が低い住宅設備に関して、維持や管理が簡単に行える状況をつくること。このように具体的な基準を設けることで、住宅の耐久性をより高めることができるのです。
高性能住宅を建てるメリット
高性能住宅には、気密性・断熱性・耐震性・耐久性の4点が大切だとわかりました。では、4つのポイントをクリアした高性能な家を建てると、具体的にはどのようなメリットがあるのでしょうか。
ヒートショックのリスクを減らせる
ヒートショックとは、住環境の中で急激な気温変化によって、血圧が上がったり下がったりする状態のこと。暖かい部屋から寒いトイレや浴室に移動すると、急激な血管の収縮が起こり心臓に負担がかかります。その結果、心筋梗塞や脳卒中を引き起こし、命を落とす危険もあるのです。
高気密・高断熱の高性能住宅は室内の温度差が少ないため、ヒートショックのような健康被害を減らせます。
光熱費を抑えられる
高気密・高断熱の高性能住宅は空気を外に逃がさないため、一般の住宅では冷暖房がききにくい吹き抜けリビングやリビング階段といった開放感がある間取りでも、エアコン一台で快適な温度を保てます。
高性能住宅では冷暖房の効率がよいため、光熱費などのランニングコストを抑えられます。初期コストはかかりますが、トータルで考えるとお得です。
防音効果が高い
隙間をなくして気密性を高めた高性能住宅は、防音性能も高くなります。気密性を高めた部屋では電車や車など、周囲の騒音がほとんど聞こえません。
また高気密・高断熱の高性能住宅は遮音性も高く、室内の音や声が外に漏れにくくなります。泣き声や遊ぶときの物音が気になる小さい子どものいる家庭や、ピアノやギターなど楽器を演奏する人にもうれしいメリットです。
災害に強い
地震や台風、豪雨など自然災害が多い日本では、災害に耐える住宅性能を高める取り組みが欠かせません。劣化しにくい構造で家全体の耐震性と耐久性を高めれば、災害時の被害を最小限にできます。
長く暮らせる
雨漏りや結露、シロアリによる被害なども、住宅の劣化を早める大きな原因です。品質や耐久性の高い部材を使った高性能住宅は、メンテナンスの手間や費用を減らせるのはもちろん、長持ちします。
住宅の寿命が延びれば建て替えの必要もなく、安心して長く暮らせます。高品質で寿命が長い家は資産価値も下がりにくく、売却の際にも有利です。
高性能住宅のデメリットと解消のポイント
ここからは、高性能住宅のデメリットもご紹介します。
建築費用が高くつく
高性能住宅は質の良い基礎や構造材、気密性や断熱性の高い資材を活用して住宅の性能を高めます。そのほか、設計や工法にも高い技術が必要です。そのため、高性能住宅の建築費用は一般的な住宅と比べて高くなります。
しかし初期コストが高くなったとしても、性能を高めることで、光熱費や修繕費用などのランニングコストは抑えられます。初期費用のみで考えず、高性能住宅を検討する際はトータルコストにも目を向けましょう。
高気密とシックハウス症候群
住宅の高気密化が進み、建材などから発生する化学物質、ダニやカビによる室内の空気汚染を原因としたシックハウス症候群が問題となりました。
2003年の建築基準法改正で、住宅には24時間換気システムの設置が義務化されました。計画的な換気によって新鮮な空気の循環が可能になり、シックハウスのリスクは大幅に軽減されたといえます。
気密性を高めて計画換気を行うとともに、ダニやカビの発生原因となるホコリなどの汚れを掃除できれいにするのも、重要な対策です。
高性能住宅建築に活用できる補助金制度や税制優遇措置
国が進めているゼロエネ住宅や長期優良住宅の普及政策の基準を満たせば、補助金や税制上の優遇措置を受けることができます。高性能住宅の建築やリフォーム・リノベーションに活用できる制度もたくさんあります。
高性能住宅を建てる際は、どのような優遇措置や補助金があるのか事前に確認することが大切です。
ゼロエネ住宅補助金
ゼロエネ住宅(ZEH)とは、断熱性能を高めて消費エネルギーを抑えつつ、太陽光発電システムによる創エネルギーを組み合わせ、年間の実質的なエネルギー収支をゼロにした住宅です。
ゼロエネ住宅の条件を満たす新築や、ゼロエネ住宅の改修などに対して、補助金が支給されています。補助金の受給により設備導入にかかる初期コストを抑えることもできます。
エネファーム設置補助金
エネファームとは、都市ガスやLPガスの水素と酸素を使って発電し、発電の際に発生した熱で給湯できる家庭用燃料電池です。シャワーや床暖房、浴室暖房乾燥機などに使うことで日常的な省エネや創エネによる光熱費の削減のほか、災害時にも役立ちます。
導入コストがかかるため、指定されたエネファームの導入に対して、国による普及のための補助金制度があります。
長期優良住宅なら税金の優遇も
住宅が長期優良住宅の基準を満たす場合、住宅ローンの金利引き下げや税制上の優遇、地震保険料の値引きといったメリットがあります。 この税制上の優遇とは、所得税の住宅ローン減税や不動産所得税の控除額の増額のほか、登録免許税の引き下げや固定資産税の減額措置の延長のことです。
高性能住宅に明確な基準はないものの、長期優良住宅の性能とは共通点も多いため、関心がある人は長期優良住宅の認定を受けることも検討してみてはいかがでしょうか。
各自治体の補助金制度もチェック
省エネリフォームや断熱改修、耐震診断・改修などに対し、独自の補助金を設けている自治体も多数あります。新築で家を建てるときはもちろん、断熱性や耐震性を高めるリノベーションの際にもお住まいの地域の補助金制度をチェックしましょう。
まとめ:高性能住宅のポイントや制度を押さえて、安心・快適な家づくりを!
今回は、安全・快適な家づくりや暮らしを支える性能がそろった高性能住宅についてご紹介しました。高性能住宅を建てるためには、どんな性能が必要か、どの程度満たすことで安心感や快適さを得られるかを指標で押さえることが大切です。
性能を高めることはコストアップにつながりますが、価格を抑えるために役立つ補助金などもあります。記事を参考に、安心・快適な家づくりをしていきましょう。