自称「占い師」が自殺教唆容疑で逮捕…偽造された遺書の中身と遺産譲渡の悪辣手口
「2人はプカプカ浮いておったぞ。おまえと両親の全財産をささげろ。私から逃げたらどうなるか分かっているな。両親の命も私がつくったんだから、どうにでもなる」
【写真】立花孝志氏が襲撃される瞬間を激写! ナタで切りつけられる一部始終
5年前、和歌山県広川町で男性2人をそそのかし、入水自殺させたとして「自殺教唆」などの疑いで逮捕された自称占い師の浜田淑恵容疑者(62)は、別の大阪市の50代男性にこう迫り、現金約8000万円を脅し取っていた。
昨年5月、8000万円を脅し取られた男性が大阪府警に駆け込み、「浜田が男性2人の自殺に関わったと話していた」と説明。男性のスマホには浜田容疑者が2人を死に追いやったことを示唆するやりとりが録音されていた。
今年1月、恐喝容疑で浜田容疑者が逮捕されたことをきっかけに、「自殺教唆」事件の捜査が動き出したという。
5年前、和歌山の海岸で亡くなったのは、いずれも神戸市北区の会社員寺本浩平さん(当時66)とアルバイトの米田一郎さん(同51)。府警は浜田容疑者と共謀したとして、信奉者の寺崎佐和子(47)と滝谷奈織(59)の両容疑者も逮捕した。
男性2人は2008年夏、ホームページで見つけたスピリチュアルカウンセリングを受けたことをきっかけに「創造主」を名乗る浜田容疑者に心酔。自身の給料や両親から相続した不動産の売却代金のほか、知人から金を借りてまで献金していた。
20年8月1日、浜田容疑者は「(私の)交際相手に悪いものがついた。命を絶って交際相手を救いたい」と男性2人に話し、寺崎を含めた4人で海に入った。手首をマイクコードで縛られた男性2人には「気が変わったら沈め合うこと」と命じたという。浜田容疑者は「自らも一緒に死ぬ」計画を立てて、2人を自殺に追い込んだとされる。
■事件性なしが一転、新事実判明
死因は溺死で、体内から鎮痛剤の成分が検出された。遺体を司法解剖した和歌山県警は「事件性が低い」と判断。遺体発見後、浜田容疑者らは2人を「自殺」に見せかけるため、寺本さんの「遺書」を提出していた。
遺書は2人が自殺した2日後の8月3日に作成されたが、日付は亡くなる前の「7月30日」と記されていた。
内容は<一郎さんと旅立つ私をどうぞお許し下さい。これからという矢先、コロナ不況で全く仕事が取れなくなり、挽回できず、私の夢は打ち砕かれました。私の死後に必要となる手続き、やりとりなどの権限を寺崎さんに一任します>というものだった。
調べに対し、浜田は「遺書があれば単なる自殺で終わると思った。関与をカムフラージュして勝手に自殺したように見える文書を作成した」と供述しているという。
「エンジニアとして大手電機メーカーに勤務していた寺本さんは定年退職後の14年、河内長野市に音響スピーカー製造会社を設立し、米田さんは従業員だった。亡くなる3年前の17年、寺本さんが死亡した場合、浜田の親族に所有する土地と建物を譲る契約が結ばれていた。実際、寺本さんが亡くなった翌月、不動産の所有権が浜田の親族に移っていました」(捜査事情通)
しかし、本当に「自殺教唆」だったのか。寺本さんの知人は疑問を持ち、捜査関係者も当初は「殺人」を視野に入れていたという。
いずれにしろ、大阪市の50代男性が被害を訴えなければ、単なる「自殺」で片づけられたまま、女3人の関与は明らかにならなかったかもしれない。