三陸が誇る宝「五葉山」山開き 登山者ら四季の風景に期待! 花の季節ももうすぐ
釜石、大船渡、住田3市町にまたがる三陸沿岸最高峰の五葉山(標高1351メートル)が4月29日、山開きした。釜石、大船渡両市境、赤坂峠登山口で安全祈願祭が行われ、関係者約40人がシーズン中の無事故を祈った。「花の百名山」の一つとしても知られ、県内外の登山客に愛される五葉山。これからの季節はツツジやシャクナゲの群落が愛好家の目を楽しませる。
安全祈願祭は3市町でつくる五葉山自然保護協議会(会長=小野共釜石市長)が主催。神事に先立ち渕上清大船渡市長が、2月26日に同市で発生した大規模林野火災への消火協力、物資支援などに深く感謝。「今後の火災予防を徹底し、新たな視点で災害対策を考える起点にしたい」と決意を述べた。五葉山神社の奥山行正宮司が祝詞を奏上。自治体、警察、各関係団体の代表が玉串をささげ、登山者の安全を祈った。小野共釜石市長は三陸ジオパークのジオサイトに五葉山を登録する方向で協議が進んでいることを明かし、「五葉山が三陸の大きな魅力の一つとして数えられる日も近い。今年1年、十分に安全に留意し、四季折々の美しさを堪能していただければ」と願った。
この日朝の同登山口周辺は雨が降ったりやんだりで、一時、濃霧や強風に見舞われる時間帯も。祈願祭後には雨雲が流れて日が差すなど、「山の天気は変わりやすい」との言葉通りの天候となった。このため、頂上を目指す登山客は少なめ。例年見られるグループ登山のにぎわいもしばしお預けとなった。
装備を整え登山道に向かった釜石市の米澤英敏さん(82)は、同市の「アトラス山岳会」に所属。年に5~6回は五葉山に登るという。「季節ごとの花々や新緑、紅葉などいつ来ても楽しめる山。今年も何回か登れれば」と意欲。20代から始めた登山。年齢を重ねても「年相応に達成感、満足感がある」と魅力を語った。
祈願祭から程なくして軽い足取りで下山してきたのは、釜石市の菅野愛子さんと佐藤伯子さん(ともに78)。五葉山の山開きには毎年足を運ぶが、今年は「雨なので最初から途中までと思って…」と、3合目まで行って戻ってきたという。「釜石岳友会」のメンバーで、毎月1~2回は岩手、秋田の山を中心に登山を楽しんでいる。「てっぺんで食べるご飯は最高。何を食べてもおいしい」と菅野さん。「今年もいっぱい登りたい。あとは体力と気力次第」と笑う。2人とも登山歴は長く、「登っている時は日々の煩わしさも忘れる。何も考えずに登れて、行って帰ってくると気持ちも晴れ晴れ」と佐藤さん。今年1年の山行に期待を膨らませた。
五葉山自然保護管理員の松田陽一さん(61、釜石市)によると、例年に比べ残雪は少なめだが、8合目から上には雪があり“踏み抜き”(下の雪がやわらかく足が沈み込む現象)への注意が必要。管理員らによる整備で、赤坂峠からの登山道は歩きやすくなっていて、9合目にある山小屋「石楠花(しゃくなげ)荘」のトイレや水場も問題なく使える。松田さんは「三陸道や釜石道の開通後、登山者は増えている印象。遠くからの車のナンバーも見受けられる」とし、五葉山の認知度アップを実感する。
今の時期はヤマザクラが咲き誇り、例年5月中旬にはツツジ、6月下旬にはシャクナゲが開花。山頂付近にはヒノキアスナロの原生林が広がり、頂上からは三陸のリアス海岸や奥羽山系の山々を一望できる。野生動物も豊富。登山の際にはクマ鈴やラジオの携帯で、人間の存在を知らせることも大切だ。