46回目の開催 ― 西宮市大谷記念美術館「2024イタリアボローニャ国際絵本原画展」(読者レポート)
1964年に始まった世界で唯一のこどもの本専門の国際見本市「ボローニャ・チルドレンズ・ブックフェア」では絵本原画のコンクールが開催しています。出版歴の有無に関係なく誰でも5点1組のイラストを応募できるこのコンクールには世界各地から多くのイラストレーターが参加し、入選を機に絵本を出版するなど絵本作家の登竜門としても知られています。 西宮市大谷記念美術館では、1978年より毎年「イタリア・ボローニャ国際絵本原画展」を開催して入選作品を広く紹介しています。
最寄り駅から美術館までのアプローチにも趣きがあり、エントランスの植栽や庭園の佇まいが展覧会への期待を高めてくれます。
エントランス
エントランスロビーから中庭の風景
今年は81カ国・地域から3520組の応募があり、日本人4人を含む32ヵ国・地域の78作家の入選作品の全てを展示しています。
パロマ・バルディビア/チリ 《2024ボローニャ展カタログ表紙原画》
子どものみならず、老若男女を問わず5枚のイラストの前で立ち止まり、それぞれの物語をつむぐように見入っている姿が印象的です。
アレクサンドラ・ケネゼヴィッチ/ボスニアヘルツェゴビナ 《すばらしい世界》
5枚とも精緻に描き込まれていて、見つめていると知らぬ間に絵の世界に入り込んでしまう面白い作品。イラスト1枚目がポストカードとしてミュージアムショップで販売中。
エリーナ・ブラスリニャ/ラトビア 《いっしょに描こうよ》
コロナ禍以降2021年よりオンライン応募となり、郵便事情があまり良くない国からの応募も増えたため、より多くの国の作品が入選を果たすようになりました。
小さな5枚のイラストに込められた思いを受け止め、去り難かった作品。
オクサーナ・ドマーシィチ/ウクライナ 《わたしは》
ここに描かれている子どもたちは、きっと大人になっても博物館好きでいることでしょうと微笑ましく心温まる作品。
ルビィ・ライト/イギリス 《博物館で》
大好きなドラマ「名建築で昼食を 大阪編」にも登場した船場ビルディング。5枚目のイラストは、このビルの特徴でもある4階まで吹き抜けになっているパティオ風の中庭、物語の舞台も素敵な作品です。1枚目がポストカードになっています。
西岡 秀樹/日本 《おとどけもの》
展示室はスペースにゆとりがあり、じっくり鑑賞できます。最終コーナーには絵本展示があり、座って原画を思い出しながら、お楽しみいただけます。一部の絵本は、ミュージアムショップで購入できます。
展示室風景
入選作品の絵本展示(2024年)
毎年「ボローニャ展」を楽しみにしています。必ず推しの作家さんに出合えるので、その方のSNSがあればフォローして応援しています。また、どの展覧会でも「一枚どうぞ、と言われたら?」と想定します。本展では、のどかに手を振るマティス、この作品でしょうか。
美術館の庭園の景色も含めて温かい気持ちになれる「ボローニャ展」をお薦めします。
トン・インダ/中国 《マティスの旅》
[ 取材・撮影・文:hacoiri / 2024年9月6日 ]