<五島列島型ゲンジボタル>五島列島の水辺でしか見ることができない不思議な光【私の好きなサカナたち】
Webメディア『サカナト』には様々な水生生物好きのライター(執筆者)が所属しています。そんなライターの皆さんが特に好きなサカナ・水生生物について自由闊達に語らう企画「私の好きなサカナたち」。今回はサカナトライター・ティガさんによる「私の好きなサカナたち」をお届けします。
私の住んでいる五島列島では、5月下旬~6月下旬にかけて、毎年多くの「ゲンジボタル」が見られます。
初めてゲンジボタルを見たのは小学1年生のとき。父と夜の川沿いを歩いていると、奥の方にぼんやり光るものが……。
近づくと、無数の蛍がふわふわと舞い、幻想的な光景が広がっていました。その美しさに息をのんだことを、今でもはっきり覚えています。
五島列島でしか見られないゲンジボタル
それからというもの、ホタルに興味を持ち始めた私は図書館で調べるうちに、私が見たのは「五島列島型ゲンジボタル」と呼ばれる五島列島でのみ確認されているゲンジボタルであること、実は独特の光り方をすることを知りました。
さらにゲンジボタルという種類自体が、他のホタルとは異なる生態を持つことにも興味が湧きました。「五島列島型ゲンジボタル」にはちょっと変わった生態があるのです。
他の種類のホタルとは違う幼虫時代の話
世界にはなんと約2000種類ものホタルが存在し、うち40種類が日本に生息しているそうです。
日本に生息しているホタルのうち、幼虫が水棲なのは「ゲンジボタル」を含む他3種類のみと世界的にもとても珍しい種類なのだそうです。
ゲンジボタルの幼虫は孵化したその日から、成虫になるまで約265日の水中生活がスタートします。
幼虫は見た目に反し肉食であり、好物は淡水生の巻貝「カワニナ」で、口から麻痺成分のある液を分泌しカワニナの体を麻痺させた後に消化液をかけ、カワニナを液状にしてから吸収するという、結構ヘビーな食事を行います。
成虫になるまでに食べるカワニナの数は約40匹と言われています。しかし、ときには大きなカワニナに逆襲されて、蓋で締め殺されてしまうこともあるのだとか。
五島列島型ゲンジボタルにしか見られない特徴
ゲンジボタルは地域ごとに光り方が異なるのですが、五島列島で発見されたゲンジボタルは、これまで確認された光り方とは全く違うパターンだったため「五島列島型ゲンジボタル」と新たに分類されました。
現在では、4秒に1回光る<東日本型>、3秒に1回光る<中間型>、2秒に1回光る<西日本型>、そして1秒に1回光る<五島列島型>が知られています。
なぜ五島列島型の光るスピードが違うのかは、まだ研究中とのこと。
忙しなく光るゲンジボタルと、それを眺めるように過ぎてゆくゆったりした五島の時間。私はその対比がたまらなく大好きなのです。
(サカナトライター:ティガ)