【大相撲】横綱同時昇進はわずか5例、「柏鵬時代」と「北玉時代」の幕開けを回顧
綱取りに挑む琴櫻と豊昇龍
大相撲初場所で琴櫻(27=佐渡ケ嶽)と豊昇龍(25=立浪)が綱取りに挑んでいる。
琴櫻は2日目に土がついたが、豊昇龍は2連勝。横綱昇進の内規は「2場所連続優勝か、それに準ずる好成績」と定められており、先場所優勝の琴櫻は連続優勝、13勝2敗で優勝を逃した豊昇龍はより高いレベルでの優勝が必要となる。
2人とも先々場所は8勝どまりだったこともあり、今場所後に横綱昇進を果たすには説得力のある成績が必要になることは間違いない。
ただ、長らく一人横綱を張っている照ノ富士がケガで休みがちなため、そろそろ新しい「角界の顔」が欲しいことも確か。2人同時昇進なら話題性は抜群だろう。
1人で昇進するのも大変な横綱が、一気に2人同時に誕生することは滅多にない。過去に5例しかなく、最初はなんと江戸時代の1789(寛政元)年、谷風と小野川までさかのぼる。
最も新しい例でも今から55年前、1970年の北の富士と玉の海。その前は1961年の大鵬と柏戸となっている。この2例を詳しく見てみよう。
連覇した大鵬と3場所33勝で昇進した柏戸
1961年5月場所以降の大鵬と柏戸の成績は以下の通りだった。
当時の横綱は3代目朝潮と初代若乃花。2人とも晩年に差し掛かっていた。
大関・大鵬は5月場所で11勝すると、7月場所を13勝2敗、9月場所を12勝3敗で連続優勝し、横綱昇進。横綱初場所となった11月場所も13勝2敗で制し、翌1962年1月場所まで4連覇を果たした。その後32回優勝の大横綱となった。
一方、大関・柏戸は1961年1月場所で初優勝していたが、5月場所は10勝5敗、7月場所も11勝4敗、9月場所も12勝3敗と直前3場所は優勝していない。しかし、9月場所は大鵬、明武谷との優勝決定巴戦に進出したこともあり、大鵬と力量差はないとの判断で横綱昇進が決まった。
22歳9カ月で横綱昇進し、21歳3カ月の大鵬とともに当時の最年少記録を更新。以降、2人で「柏鵬時代」を築き、相撲人気を牽引した。
優勝決定戦の末に同時昇進した北の富士と玉の海
1969年9月場所以降の北の富士と玉の海(大関時代は玉乃島)の成績は以下の通りだった。
当時は大鵬の一人横綱時代。大関・北の富士は9月場所で12勝3敗の後、11月場所を13勝2敗で制し、翌1970年1月場所も13勝2敗で優勝決定戦の末、玉乃島を下して連覇を果たした。
横綱昇進後も計10回優勝する活躍を見せ、引退後は九重親方として千代の富士、北勝海の両横綱を育成。近年は解説者として歯に衣着せぬ物言いで人気だったが、2024年11月12日、82歳で死去した。
一方、大関・玉乃島は1969年9月に13勝2敗で優勝。11月場所は10勝5敗だったが、翌1970年1月場所は13勝を挙げ、優勝決定戦で北の富士に敗れたものの横綱昇進が決まった。
玉の海に改名した横綱昇進後は1971年7月場所で全勝優勝するなど、在位10場所で4度優勝し、横綱通算130勝20敗と高い勝率を誇った。
しかし、1971年10月に虫垂炎の手術で入院し、そのまま帰らぬ人となった。享年27歳。巡業先で訃報を聞いたライバル北の富士は号泣したという。「北玉時代」の突然の幕切れだった。
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記事:SPAIA編集部