【今週の『ONE PIECE』の話題は?】ドラゴンの正義が熱い……! デービー=バッカニア族の意味とは? 世界政府が憎む“血”の可能性<1160話>
海賊王を目指し海へ出た主人公モンキー・D・ルフィとその仲間たちの活躍を描く、週刊少年ジャンプで連載中の漫画『ONE PIECE』(原作:尾田栄一郎氏)。
未知の島の心躍る冒険や強敵との痛快なバトルを通して仲間たちと絆を深め強く成長していく様は、まさにジャンプの三大原則「友情・努力・勝利」のど真ん中。その一方で、消された歴史や差別・奴隷制度などをめぐる世界の闇をも緻密な伏線と壮大な世界観で描き出す本作は、最終章へ突入した連載28年目の現在も怒涛の展開で読者の心を掴んで離しません。
9月15日(月)発売の週刊少年ジャンプに掲載された『ONE PIECE』第1160話“ゴッドバレー事件”では、当時関わった人物や発生の契機などの情報が少しずつ明かされてきたゴッドバレー事件の全容がついに描かれはじめました。本記事では、SNSでの反響とともに、最新話のポイントを振り返っていきます。
 
※本記事には『ONE PIECE』最新話(第1160話)のネタバレを含みます。コミックス派やアニメ派の方等、ジャンプ未読の方はご注意ください。
ドラゴンの正義に注目! ドラゴン→シャンクス→ルフィへとつながるストーリー
前話に続き、海軍に所属していた若き日のドラゴンの姿が印象的な回でした。
混乱するゴッドバレーのなか、上の命令よりも自分の意志で行動を決めたドラゴンは、シャンクスとシャムロックの母からまだ赤子のふたりを託され「助けたい」と走り出します。
ドラゴンが己の正義に従い走り出したからこそ、いまもシャンクスとシャムロックは生きているといっても過言ではありません。ドラゴンがシャンクスの命を救い、のちにシャンクスはドラゴンの息子であるルフィの命の恩人に。まさに“受け継がれる意志”のような、運命的な連鎖が判明したシーンでした。
そして、ドラゴンがシャンクスたちを生かすため奔走する道中、なんと脱兎(ラビット)であるイワンコフやくまたちの姿を見かけていたのです。
人々が泣きながら逃げまどい、次々と殺されていく状況でも希望を失わずにいるイワンコフの言葉を聞いたドラゴンはこっそり天竜人を撃ち、陰ながら彼らを助けます。くまの過去編ではくま主観で描かれたシーンですが、じつはこのときのドラゴンの勇気ある行動があったからこそ、彼らは生き延びていたんですね。
くまの過去編で革命軍の結成が描かれた際は、ドラゴンはくまからなぜ武器を扱えるのかと尋ねられ海軍にいたとを明かしていたため、ゴッドバレーで直接顔を合わせてはいないようです。
しかし、ゴッドバレー事件は、ドラゴンが政府に疑問を持って革命を考えるきっかけのできごとだったであろうことは明らか。そこで革命軍の核となるメンバーにめぐり合えていたというのもまた運命的ですよね。
これまで私たち読者が見てきたドラゴンは、ミステリアスでどこか冷徹で、ルフィの父でありながらその印象は正反対といっても過言ではありませんでした。今回のストーリーをとおして、その心の内に秘めた熱さや世界の闇を見てきたからこそ確立した正義がわかり、なぜ彼が革命に燃えるのか見えてきた気がします。
見ず知らずの子供たちでも助けたいと強く感じたこと、そうでなければ「ここに立っていられない」と思ったこと、凄惨な状況にえずいてしまったこと。ドラゴンの優しくまっとうな心に胸を熱くせずにはいられませんでした。そして同時に、彼がルフィの父であることに大いに納得した瞬間でもありました。
そして、自身の息子がこんなにも世界の矛盾に苦しみながら任務にあたっていることをどう感じていたのだろうか? 本心では天竜人が嫌いなのに、自身の立場をどんな覚悟の強さで貫いてきたのだろうか? ……と、筆者はガープのことも考えずにはいられません。孫であるルフィと対峙することになった頂上戦争の件を振り返ってみても、その心にしまいこんで堪えてきた思いの重さはいかほどでしょうか。
ロックス、ロジャー、ガープ……伝説の集結がアツい! 神の騎士団には新メンバーも
ゴッドバレー事件といえば、凄惨なできごとの一方でやはり気になるのはロックス海賊団やロジャー海賊団をはじめとした伝説のメンバーの揃い踏みですよね。
豪華な顔ぶれで興奮することには間違いないのですが、(真の目的があるロックスはさておき)彼らが乗り込んできた実情を知ると、シャッキーで頭がいっぱいの海賊たちがなんだかのんきにすら見えてきます。
とくにシャッキーを取り合おうとする輩を尻目に「勝手にしろ」「おれはダチとして身を案じてる」なんてスカしつつ、「まァ ホレられても…悪い気はしねェが」と素直ではないニューゲートの反応が若くて可愛らしい。この件に船長特権はないと言われていただけあって、ロジャーもさっそく船長の威厳を失ってしまっています。
とはいえ、あまりに暴虐な天竜人へのモヤモヤ感や、悲惨さに鬱々とする気持ちが晴れてくるような気持ちの良い登場でした!
さらに、今回はロックス海賊団やロジャー海賊団と対比するように神の騎士団メンバーが並ぶカットも。ガーリング聖やソマーズ聖などお馴染みの顔ぶれのほか、初登場となるメンバーも描かれました。
シャクヤクにも劣らない黒髪美女、キリンガム聖みを感じさせるツノが生えた大柄の女性、さらには明らかな獣の姿をした者と気になる当時の神の騎士団。軍子はこのころ「神の従刃」と呼ばれており、神の騎士団よりは下の地位にあったようです。
「バベット家」という新しい天竜人の姓も登場し、新たな血筋も明らかとなりました。この当時の神の騎士団内に該当する家柄のメンバーがいるのかもしれません。
世界政府は憎む“血”? デービー一族=バッカニア族?
そして、最初のページではデービー一族への罵声が飛び交うなか、「“バッカニア”なんだろう!?お前らも!!!」と気になる声が。
これまでの情報を整理すると、デービー一族はデービー・ジョーンズの血をひく一族で、世界政府から抹消したいと思われているもののひとつ。一般の天竜人からも「お前らは嫌われの一族だ!!」と怒号が飛ぶほど、天竜人の間では悪名高いことがうかがえます。
ゴッドバレー事件当時、ロックスはデービー一族について「“闇の世界”に幅を利かせて今もまだ細々と生き長らえてる」と語りました。ゴッドバレーにはデービー一族が少なからず住んでいるようです。
一方、バッカニア族は混血の種族。巨人の血をひいており大柄で力が強く身体が丈夫なこと、代々「太陽の神ニカ」が伝承されていることなどが特徴的な一族です。
大昔に世界に対して罪を犯したと言われており、サターン聖いわく「生まれながらに奴隷階級」「奴隷になる事と死ぬ事しか許されていない」とのことで、世界政府からかなり敵視されています。
政府が徹底的に駆逐してきたためか絶滅種として扱われていますが、くまやその父・クラップがバッカニア族の血をひいていました。
わかりやすく大柄だったり、ニカの伝承があったりするバッカニアにくらべて、本作の世界基準でいえば驚くほど大きいというわけでもなく、“闇の世界”で生きているという抽象的で謎の多いデービー一族。
彼ら“も”バッカニアというのはどういう意味なのでしょうか?
SNSでは「バッカニア=ひとつの種族ではなくていくつかの種族を総称しているのか」「バッカニアは種族、デービーは氏族で、バッカニアのなかのデービーって感じかな」など、世界政府が敵とみなしたものの大きなくくりが“バッカニア”、そのなかに存在したひとつの一族が“デービー”と考える読者が多いようです。
仮定ですが、イム様はじめ世界政府が800年前に天敵と定めた“血”があり、その血が混ざっている種族であれば有無を言わさず根絶しようとしているのかもしれません。
ちなみに、“バッカニア”とは17世紀ごろのカリブ海の海賊を指す言葉なのだそう。
世界政府に対する海賊行為を行ったものを“バッカニア”とし、以降は反逆者や裏切り者をそう呼ぶようになった可能性も考えられそう。そのなかでもとくに目立っていた反乱分子が“デービー”だったとか……。
とすると、世界最初の海賊だったジョイボーイも“バッカニア”にあたるのでしょうか。そろそろ、“D”の起源にも話が繋がってきそうですね。
 
[文/まりも]