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高野寛は「虹の都へ」だけじゃない!こだわり抜いた「AWAKENING」に宿る過激さとは?

Re:minder

1991年06月14日 高野寛のアルバム「AWAKENING」発売日

豪華ゲストミュージャンを迎えたアルバム「AWAKENING」


1990年にリリースされたシングル「虹の都へ」の大ヒットで、高野寛は人気シンガーソングライターとしての地位を確立した。また、同曲が収録されたサードアルバム『CUE』はトッド・ラングレンをプロデューサーに迎え、一筋縄ではいかないポップ・マエストロぶりを発揮する。勢いに乗った高野は、半年ちょっとのインターバルで新たなシングル「ベステン ダンク」をリリースし、こちらも大ヒット。かなりテンションの高い状態で『CUE』に続く4枚目のアルバム『AWAKENING』を1991年にリリースした。

アルバム『AWAKENING』は、前作に引き続き、トッド・ラングレンをプロデューサーに迎えたことから前作踏襲の作風と思われたが、完成したアルバムは大きく変化していた。今回はその変化について考えてみたい。

本作『AWAKENING』では多くのゲストミュージシャンを起用し、前作の高野自身によるマルチレコーディングとは真逆の制作方法が採用されている。そのため、演奏は躍動感に溢れたもので、その演奏に負けじと高野のボーカルも力強く、そして生々しい。

こうしたサウンドを支えたレコーディングメンバーは、日本からは高橋幸宏、小原礼、大村憲司らが参加。また、海外のミュージシャンは、トッド関連の人脈を活かし、ジェリー・マロッタ、マイケル・アーバーノ、トニー・レヴィン、ラリー・タッグ、そして、もちろんトッド・ラングレンも参加し、錚々たる凄腕が世界最高水準の演奏を聴かせてくれる。

自信満々✕捻くれ者✕過激=高野寛(26歳)


この時、高野は弱冠26歳。これだけの大物たちに囲まれてのレコーディングに普通の20代の若者であればビビってしまい、思うような仕事ができないのではないかと思うのだが、出来上がった音源からは全く萎縮することなく、自分の信念を貫き通す自信満々の高野寛が聴こえてくる。

また、前作『CUE』でシンガーソングライターとして、そしてマルチミュージャンとしての確固たる評価を獲得したにも関わらず、本作では大幅にインストゥルメンタル曲を収録し、前述のとおりゲストミュージャンによるバンドサウンドを導入するという真逆の制作方法を採用したことからは、高野の捻くれ者の一面が垣間見れる。きっと高野は、ひとつのキャラクターやイメージが定着してしまうことに居心地の悪さを感じてたのではないか。

このように本作『AWAKENING』からは、高野寛という表現者の強いエゴを感じることができるのだが、そのエゴはバッキングを固める凄腕ミュージシャンたちの見事な演奏と高野が作り出すポップなメロディーでコーティングされており、サラッと流して聴くだけではなかなか感じることが難しい魅力なのだ。温厚そうなルックスや柔らかな物腰から品の良いイメージで見られがちなアーティストだが、その内面は実は過激で、それこそが高野寛の本質なのかもしれない。

高野の一般的な認知は、 “「虹の都へ」でお馴染みの90年代のJ-POPのヒットシンガー” といったものかもしれない。しかし、そんなイメージは高野寛の魅力のほんの一部でしかない。パブリックイメージに隠されて見えにくくなっている彼の過激な本質に触れることで、高野寛というアーティストの多面性と奥行きを確認し、その魅力にハマって頂けたら幸いだ。

トッド・ラングレンとのただならぬ師弟関係


高野は『AWAKENING』以降、オリジナル・ラブの田島貴男とのコラボレーションやナタリー・ワイズ、GANGA ZUMBA、pupaといったバンド活動が目立ってくる。そして、高野が影響を受けたトッド・ラングレンもソロ活動とバンド=ユートピアを使い分けて作品を発表しているではないか。また、高野は京都精華大学のポピュラーカルチャー学部で、トッドはアメリカの大学でそれぞれ教鞭を振るっており、音楽を志す若者の育成にも努めている。

このように、日米の偏狂ポップマエストロの姿はどうしたって重なって見えてしまう。そして、これは単なる偶然に思えないのは私だけではないはずだ。

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