おかず10品プラスごはんが1000円以下!幸せ気分になれる釜山の人気食堂【 気になる韓国、ソウルの今vol.33】
物価高や円安で韓国旅行のスタイルを見直す人が多い。旅の基点を首都ソウルから第二の都市・釜山にする人も珍しくなくなった。食費や宿泊費がソウルより安く済むし、ここ数年、観光整備が進み、釜山ならではの魅力が鮮明になってきたからだ。今回は釜山を旅する人なら誰もが訪れる魚市場の美味しい定食屋さんを紹介しよう。
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チャガルチ市場で地元民に長く愛される定食屋さん
釜山の観光エリアは大きく3つに分けられる。南側の海に面した旧市街・南浦洞(ナムポドン)。釜山駅のあるエリアを北上したところにある繁華街・西面(ソミョン)。東側の海に面したビーチリゾート海雲台(ヘウンデ)だ。
なかでも、釜山庶民の歴史が感じられるのが、日本で70年代に大ヒットした「釜山港へ帰れ」ゆかりの地、南浦洞。大ヒット映画『友へ チング』や『国際市場で逢いましょう』の舞台でもある。
その南浦洞の顔と言えるのがチャガルチ市場というフィッシュマーケットだ。市場の歴史は意外と浅く、日本の植民地支配が終わった後から朝鮮戦争(1950~1953)で全国から戦争避難民が釜山に押し寄せた頃にかけて、魚市場が形成された。
かつては路面店や露天商が東西に連なっていたのだが、1970年に3階建てのビルが誕生。2006年には地上7階・地下2階の新たなビルができ、路面店の多くがそこに移った。
今でもビルの西端から西方向500メートルの間には店先に鮮魚を並べて売る店や刺身食堂、屋台風の飲み屋などが並んでいて、散歩が楽しい。
海産物を主体にした定食が9,000ウォン
釜山駅から2駅の南浦駅から左手に海とチャガルチ市場のビルを見ながら東から西へ歩く。ビルが視界から消える辺りで右手に3階建てのビルが見えるが、これに注目する日本の旅行者はあまりいないだろう。
新東亜市場と呼ばれるこのビルもチャガルチ市場のビルと同じで、中に刺身店や乾物店がぎっしり詰まっている。地下には食堂街があるが、10年前に初めてここを訪れたとき飲食店は一軒しかなかった。それが「タミャン食堂」だ。
これだけ大きな魚市場だから、市場で働く人や仕入れに来た人が利用する安くて旨い食堂があるはずだと踏んで来たらどんぴしゃり。
この店のことを拙著『釜山の人情食堂』(双葉社)に書いて以来、ブロガーや女性誌が取材に訪れ、日本の釜山リピーターにも知られる店になったが、コロナ禍を経てもしっかり生き残ったのは、やはり地元客の胃袋をがっちりつかんでいるからだろう。
この店に来ると、ほとんどの人がペクパンと呼ばれる日替わり定食(9,000ウォン)を食べる。
4月に行ったときは、主菜はサバとダイコンの煮付け、太刀魚の揚げ焼き。それに豆腐とズッキーニの入ったテンジャンチゲ(味噌鍋)、ウニ入りワカメスープ、イカの塩辛、目玉焼き、豆腐炒め、ナムル2種と白菜キムチ、海苔が添えられた。
10年前はこれにカンジャンケジャン(カニの醤油漬け)まで付いて6,000ウォンだったので、かなり値上りしたが、ランチ一食10,000ウォンは覚悟しなければならないご時世に、9,000ウォンでこの質とボリュームなら文句はない。
チャガルチ市場で働いている人は体力勝負なので、これくらい食べないともたないのだろう。場所柄、味付けも薄くないので、ごはんが進む。
訪れたのは午前11時頃。出前注文の電話がひっきりなしに鳴っていた。大きな盆におかずが載せられ、新聞紙がかけられる。スンニュン(おこげのスープ)もペットボトルに充填され、おばさんの頭の上に載せられて市場に向かう。
大きなコの字型のカウンターの店なので一人でも利用しやすい。海側の席に座れば、潮風がふわ~っと背中を包む。港町釜山にいることを舌で、目で、肌で感じられる幸せな食堂だ。
「タミャン食堂」
住所:中区チャガルチ路42新東亜市場地下1階 営業時間:6時~16時 定休日:第2・第火曜
(うまいめし/チョン・ウンスク)