セカンドハウスに居住することに…住宅ローン控除の対象になる?
今回の「FPに聞きたいお金のこと」は、60代女性Yさんから住宅ローン控除についての相談です。住宅ローン控除は税額控除の一つで、年末時点のローン残高の一定割合が所得税や住民税から控除されます。ただし、居住用が前提となるほか様々な条件があります。セカンドハウスや別荘は控除の対象には該当しませんが、セカンドハウスに移住する場合はどうなるのでしょうか。
60代女性Yさんの相談内容
昨年セカンドハウスを建てました。10年間のローンを組みましたが、セカンドハウスは所得税のローン控除の対象とならないとのことでした。今年、今住んでいる家を処分してセカンドハウスに移住する予定です。今年度分から住宅ローン控除は受けられますか?
既存のセカンドハウスには住宅ローン控除は適用されない
住宅ローン控除は居住用に適用されるため、移住後にセカンドハウスが「居住用」となる場合でも、既存のローンには控除が適用されません。住宅ローン控除を受けるためには様々な要件があり、主な要件は以下となります。
<住宅ローン控除の主な要件>
・住宅ローン等を利用してマイホームの新築等をした場合
・6カ月以内に居住の用に供していること
・年末時点で居住していること
・住宅ローンの返済期間が10年以上であること
・原則床面積が50㎡以上
・合計所得金額が2000万円以下
※住宅取得時期によって要件は異なります
※詳細は国税庁のHP等でご確認ください
今回のケースの場合、購入当初が居住用ではなくセカンドハウスであったことから、現在組んでいるローンは住宅ローン控除に該当しないと思われます。また「昨年セカンドハウスを建てました」とありますので、現時点で「6カ月以内に居住の用に供していること」という要件も満たすことができないと思われます。
住み替えなら適用の可能性も
これまで住宅ローン控除を適用してきた住宅を売却し、新たに別の住宅を購入した場合は、条件を満たせば住宅ローン控除を受けることができます。
また仕事の都合で転居した場合、家族全員が転居するとなるとその期間中は住宅ローン控除を使うことができませんが、再び戻ってきて居住することになれば、残りの期間に住宅ローン控除を再度適用することができます。
今回のようにセカンドハウスや別荘をどこかのタイミングで主たる居住用として利用し始めた場合は対象にはなりません。税制は私たちの生活の負担感などを意識しています。例えば、家族が多い人はその分、生活費がかかるため人数や年齢に応じた扶養控除があり、世帯主の税負担が軽減されます。よって、住宅ローン控除においても生活の基盤である住宅は対象になりますが、別荘やセカンドハウスは「余裕がある人が保有するもの」という位置づけで対象になっていないのです。
住宅売却時の税制メリットをしっかり活用
「昨年セカンドハウスを購入せず、今の家を売る際に新しい家を買えばよかった」と後悔されているかもしれません。こういったことがファイナンシャルプランであり、あらかじめ色んな制度を踏まえておくと、効率よく税金などと付き合うことができます。ただし、予定通り物事が進まないこともあります。価値観も変わり、世の中も変わり、大きく方向転換することも少なくありません。
今回、セカンドハウスは住宅ローン控除の対象にはなりそうにありませんが、現在の自宅を売却する際は「居住用財産の譲渡の特例」が適用されると思います。通常、不動産を売却すると売却時の利益である譲渡益に対して税金がかかるのですが、住宅の場合は一定の条件を満たせば、売却時に3000万円まで税金を課さないといった特例があります。「マイホームを売ったときの特例」といわれており、国税庁のHP等で確認できます。
なお、この特例を利用して新たな住宅を取得した場合、次に購入した新しい住宅に対して住宅ローン減税は利用できません。たとえ、昨年セカンドハウスを購入せず住宅の買い換えをしていた場合でも、この「マイホームを売ったときの特例」と「新規住宅ローン控除」はどちらか一つしか選べないことになっています。
昨今は不動産価格の上昇に伴い、売却時に譲渡益が発生して課税されるケースが多くあります。そのため、譲渡益に対して「マイホームを売ったときの特例」を利用し、新たに購入した住宅では住宅ローン控除は使わないという選択をした方が税制上のメリットを最大化できる可能性もあります。
「もしこうしていたら…」とつい考えたくなる事例ではあります。今回はセカンドハウスを居住用として転用した場合の住宅ローン控除適用は難しいものの、「マイホームを売ったときの特例」を上手に適用し、ぜひ前向きにセカンドハウスでの新生活を楽しんでください。