特性のある息子への接し方に難ありな夫。どんな風に伝えたらいい?専門家アドバイスも【読者体験談】
監修:井上雅彦
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授/LITALICO研究所 スペシャルアドバイザー
DQ(発達指数)が境界域の息子は何につけても「ママがいい!」。パパは……?
わが家には特別支援学級に通っている小学校1年生の息子がいます。息子は全領域DQ(発達指数)が境界域で、医療機関での診断はまだ受けていませんが、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)の特性があると感じています。
もうすぐ7歳になりますが、何につけても「ママがいい!」と言いがちです。そして夫は、それをいいことに、息子と積極的に関わりたがらない傾向があります。こういうことは子どもの発達に関係なく多いだろうとは思いますが、わが家の場合は、そこに息子のこだわりの強さも加わり、夫、私、息子のそれぞれの関係性や役割が固定化されてしまっているのが悩みです。
関心がないわけじゃないけれど……夫は息子との絡み方が絶望的に下手
夫は息子に関心がないわけではなく、「お風呂に入れてやって」「宿題をみてあげて」など、こちらが頼んだことはやってくれます。特別支援学級の先生と私とのやり取りが書かれた連絡帳を読んでいたり、私が息子の様子について話すと真面目に耳を傾けてくれていたりもします。
ただ、残念ながら、息子との絡み方が絶望的に苦手なんです。
息子が機嫌良くしゃべっている時に、小さな子どもには分かりづらい皮肉っぽい言い回しでコメントしたり、息子の言い間違いのあげ足を取ったり……。息子がごっこ遊びをしているとき、夫がクスクス笑いながらその様子をのぞき見していることがあるのですが、息子はそれを非常に嫌がり、「ごっこ遊びは絶対にママとしかしない!」と決めてしまっています。
「笑われる=バカにされている」と思ってしまう息子
息子は、非言語コミュニケーションが苦手なので、「笑い」を誤解しがちな傾向があります。彼の中では「笑われる=バカにされている」という図式が強固なので、こちらが息子の発想のユニークさに笑ったり、息子の行動がほほえましくて笑ったりしたとき「今、僕のことバカにしたでしょ」と言って怒ることもしばしば。
私は、「違うよ、○○くんが面白いことを上手に言ったから、思わず笑っちゃったんだよ」「その踊りがかわいくて、すてきだなぁと思って、ニコニコせずにはいられなかったの!」などと、人が笑うのはバカにしているときだけじゃないことを、そのつど説明していますが、夫との距離は開くばかり……。
もっと息子に寄り添った接し方をできないの?批判に弱い夫にどう言えばいいか……
夫に対して「もっと息子に寄り添った接し方はできないのかな~」と思いはしますが、そこを突くとまずい予感がして、何も言えていません。夫は物腰が柔らかく、一見聞く耳を持っているようにみえるのですが、実はプライドが高く、批判にかなり弱いタイプだからです。
会話が弾まないなら弾まないで、一緒にどこかに出かけたり、外遊びをしたりしながら仲良くできればいいのですが、息子はかなりの外出嫌い。知らない所へ行くことや、長時間の移動が苦手です。なので、外出先は近場の公園やショッピングモールに限定されがちです。
また、夫は休日の仕事が多く、息子はじいじ(私の実父)に遊んでもらうこともよくあるのですが、じいじは根っからの子ども好きなので、結果、息子はじいじになつき、夫とはさらに距離が生まれている感もあります。
今はこれでいいのですが、本当は私ももっと仕事がしたいので、夫にも積極的に息子への関り方を学んでほしいです。それに、父も私も今は健康ですが、人生、先のことはわかりません。夫だけになったら、息子はどうなるのか……。
こうしたことを考えると、夫と息子の心の距離がもっと近づいていてくれると助かるのになぁと思わずにはいられません。
夫へどのように声がけをしていくか……これが今の課題です。
イラスト/keiko
エピソード参考/苗
(監修:井上先生より)
お父さんは育児にまったく無関心なわけではなく、連絡帳を読んだり、頼まれたことに協力などはしているので、ご自分では「できることは頑張っている」という認識なのかなと思います。それだけにお子さんへの接し方についてはプライドを傷つけないように伝えてみてはどうでしょうか。例えば「最近、友達や先生に皮肉っぽく言われたことをすごく気にしているから、ストレートにいいところを褒めてあげてほしい」のように「最近〇〇な感じだから××のようにしてくれると助かる」といった言い方などです。また、子育ての方針について違いがある場合には、主治医や専門機関に相談するときに夫婦で一緒に行って話を聞いたりするとお父さんも納得しやすいかと思います。
心の距離についても今はもどかしい気持ちもあると思いますが、子どもも日々成長し、どこかのタイミングでお父さんと共通の趣味ができ、急に距離が縮まる場合もありますので、育児に協力してもらいながら長い目で見守っていきましょう。
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
ADHD(注意欠如多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。