愛猫がこっそり『盗み食い』をしてしまう理由5つ 誤飲の危険も…取るべき対策は?
愛猫が盗み食いをする5つの主な理由
猫の盗み食いは、単なるワガママからする行動とは限りません。
実は、猫の本能的な習性や気持ちの変化など、さまざまな理由が隠されています。愛猫が食べ物を盗む背景を見てみましょう。
1.猫の本能からくる自然な探索行動
猫が持つ狩猟本能には、獲物がいそうな場所を「探索する」行動が含まれています。つまり、人間に飼われている猫が、袋や戸棚などをこじ開けて盗み食いをしてしまうのは、この本来の猫の狩猟本能から来ているといえます。
特に、人間の食べ物のなかには、ニオイや質感が猫にとっては珍しいものもあるので、猫の好奇心をますます刺激してしまうのでしょう。
また、猫が自分で戸棚や容器を開けて食べ物をみつけた成功体験があると、その行動を再発する可能性は高まります。
このような本能的行動は猫の特性なので、自然に関心が薄れるまでは、くり返す可能性があります。特に若齢のうちは、完全にやめさせることは難しいかもしれません。
2.空腹感や栄養不足
お留守番している猫が、日中お腹が空いても、お願いする飼い主さんがいません。そのため、賢い猫ほど、自分で食べ物を探して盗み食いしてしまうことがあります。
また、猫は味覚の満足度だけでなく、身体が機能的に求める栄養分を必要として食べます。そのため、普段の食事の量や質によって栄養が不足して、食べ物を欲することもあります。
たとえば、成長期の子猫や妊娠中の猫、活動的なタイプの猫は、たくさんのエネルギーと栄養を必要とするため、一般的な成猫用フードでは栄養不足になる場合があります。
ちょこちょこ食いをする猫の場合、一度にたくさん食べられません。そのため、毎回の食事を残してしまっても、一日のトータルで必要な食事量が不足してしまうと空腹感から盗み食いをしてしまう可能性もあります。
3.ストレスや退屈からの行動
目に見えないストレスや退屈が、猫の盗み食いの原因になることもあります。猫が精神的な刺激を求めた結果、食べ物に向かってしまう行動です。
野良猫や野生の猫種の場合、日に10回以上の小さな食事と休息をくり返しながら過ごします。
しかし、室内飼いの環境では、狩猟欲求を満たせる十分な刺激や運動が得られず、結果としてストレスや退屈を感じやすくなります。
このような状況下で、猫は代償行動として食べ物に興味を示し、盗み食いをはじめることがあるのです。
「飼い主が不在の時間が長い」「遊び道具がすくない」、または「ほかの同居猫やペットとの関係にストレス」がある場合などが考えられます。
これらが原因であれば、猫の生活環境を豊かにすることで盗み食い行動は軽減できる可能性があります。
4.飼い主の注目を引くため
単頭飼いの家庭や飼い主不在の時間が長い家庭、また猫自身がとても甘えん坊な場合では、飼い主の注目を引きたいという欲求から、わざと盗み食いをすることもあります。
人目を避ける野良猫とは異なり、人に飼育される猫は、飼い主と社会的な関係を構築するため人からの注目や関心を求めるようになります。
盗み食い行動をすると、飼い主が「こら!ダメ!」とすぐ反応することを学んだ猫は、飼い主の注目を集める手段として、わざと見えるところでするようになるのです。
空腹になったのに食事がないときに、わざと台所のものに手を伸ばすことで食事の時間をアピールする猫もいます。また、普段あまり構ってもらえていないと感じている猫が、ただ飼い主に見てもらいたいためにこの行動を取ることもあります。
5.過去の経験(人間の食べ物の味を覚えている)
人間の食べ物の味を覚えている猫は、その味を求めて盗み食いをくり返してしまうこともあります。
もともと野良猫歴が長い保護猫や定期的な餌やりさんがいなかった地域猫が、食事はキチンと食べているのに、どうしても習慣的にやってしまうといったケースです。
ゴミ漁りや通りすがりの人から、人の食べ物を得てなんとか生き延びてきたような過去が考えられます。
これらは空腹ではなく、空腹に対する不安感からきているかもしれません。
キッチンにある肉や魚のニオイから、過去に味わった空腹から開放されたときの安堵感を呼び起こし、盗み食いをしたくなる衝動を引き起こすでしょう。
盗み食いを防ぐための日常的な対策
猫による盗み食いを防ぐための日常的な対策は、環境管理と適切な食事提供が鍵となります。
具体的には、次のような対策が有効です。
✔食べ物は猫の手が届かないように保管
✔調理中は猫を別室に隔離するか食べ物を放置しない
✔十分な量と質の食事を与える
✔定期的な遊びでストレス解消
なかでも食品の保管場所はとても重要です。これは人の食べ物だけでなく、猫用の食事やおやつも含まれます。器用な猫は戸棚の引き戸やなどはすぐに開けてしまうので、チャイルドロックなどを活用するのもよいでしょう。密閉容器の利用も効果的です。
また、必要なカロリーと消費カロリーが噛み合わないと盗食が起きてしまう可能性があります。満たされている場合はあまり盗食は起こらないですが、カロリーが不足していたり、栄養が足りない場合は盗食が起こりやすくなります。きちんと量と栄養が足りているかを確認しましょう。
さらに、内的なストレス解消のために、定期的な運動もさせるようにしましょう。この対策は、盗み食いによる誤飲から猫を守りつつ、健康的な生活環境を築く基礎にもなります。
猫が盗み食いで誤飲してしまった時の対応
猫が盗み食いをして誤飲に気づいたら、まずは状況を把握し、何をどのくらい食べたか、いつ誤飲したのかを確認します。猫の呼吸や歩き方、嘔吐などの異常もチェックした上で、すぐに動物病院に連絡して状況を説明してください。自宅では適切な処置ができないため、様子見は危険です。
動物病院へ向かう際には、誤飲した物の包装や残りがあれば持参します。特に獣医師の指示がない限り、無理に吐かせようとしたり、水を飲ませたりするのは控えてください。
また、事態が落ちついたら、同じような事故を起こさないためにも、必ず安全対策を行うようにしましょう。盗み食いは、猫の命にかかわる危険があるため、しない・できない環境作りがとても重要なのです。
まとめ
猫の盗み食いは、ただのいたずらではなく、本能や環境、心的要因などから引き起こされる行動です。そのため、猫の行動を正しく理解して、あらかじめ対策しておくことで、愛猫の健康と安全を守ることが可能になります。
食べ物の管理の仕方や環境内の危険防止策を工夫しつつ、猫の好奇心や探索欲求を満たせるような遊びの時間を設けることもポイントです。これは、問題行動を抑制するだけでなく、猫の健康的な生活にも役立ちます。
子猫や若い猫、過去に飢えた経験のある猫は、好奇心から盗み食いをしやすい傾向にあります。しかし、飼い主がしっかりと対策を講じることで、その行動は減少させることができます。あきらめずに愛猫を危険から守ることが大切です。
(獣医師監修:平松育子)