日本にいた大切な示準化石「イノセラムス・ホベツエンシス」とは?【眠れなくなるほど面白い 図解 古生物の話】
イノセラムス・ホベツエンシス
日本にいた大切な示準化石
イノセラムス・ホベツエンシスは、中生代の白亜紀後期にいた二枚貝類です。名前は、1932年に最初の化石がむかわ竜と同じ北海道の穂別町(現在のむかわ町)の地層から見つかったことに由来し、殻は直径60センチにも達します。
イノセラムス・ホベツエンシスも含まれるイノセラムス類は、おもに中生代のジュラ紀から白亜紀にかけて世界中の海で生きていたとする説もあります。殻は厚さがありムール貝とよく似た形をしており、大型で1メートル近くのものもあります。イノセラムス類が巨大化した原因は現在も不明です。殻の断面は、真珠のような特有の輝きを放っていたとされています。
イノセラムス・ホベツエンシスは、日本産イノセラムスのなかで最大になる種類(殻高約60センチ)です。
イノセラムスは「頑丈なツボ」という意味のギリシア語で、世界中の地層で見つかります。さらに種類が多く、溝の有無や大きさ、形、同心円状の肋の入りかたなども異なります。それぞれの種が生息していた年代もかなり細かく明らかになっています。
たとえばイノセラムス ・ホベツエンシスが生息していたのは、白亜紀後期の、さらにチューロニアン(約9400万年前から約9000万年前)です。ほかのイノセラムス類もそれぞれ生息していた時期がかなり絞り込めています。そのため、年代を特定する示準化石としても非常に重要な存在です。
むかわ町にある穂別博物館では、日本で産出するイノセラムス類をモチーフにした「いのせらたん」というゆるキャラを考案し、化石と層序学の普及活動をしています。
穂別町にいたイノセラムス・ホベツエンシス
イノセラムス・ホベツエンシス
中生代白亜紀後期
軟体動物 二枚貝類
直径約60センチ
殻は卵円形で左右非対称。種ごとに肋の入りかたなどには個性がある。
イノセラムスの化石層序
【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 古生物の話』代表監修:大橋 智之