豊かな創作世界へ誘う「柚木沙弥郎 永遠のいま」が、12月21日まで『東京オペラシティ アートギャラリー』で開催中
東京都新宿区の『東京オペラシティ アートギャラリー』で、「柚木沙弥郎 永遠のいま」が2025年12月21日(日)まで開催されている。挿絵やコラージュなど、ジャンルの垣根を超えて豊かな創作活動を75年に渡って続けてきた染色家、柚木沙弥郎(ゆのきさみろう)の全貌に迫る。TOP画像=《まゆ玉 白》2013年 型染、木綿 『岩手県立美術館』蔵(部分)。
日々の暮らしに見出した、喜びあふれる作品群
2024年に101歳の生涯を閉じた染色家、柚木沙弥郎。型染の世界に新風を吹き込んだ柚木の作品は、自由でユーモラスな形態と美しい色彩が心地よく調和し、生命力にあふれている。
柳宗悦(やなぎむねよし)らによる民藝運動に出会い、芹沢銈介(せりざわけいすけ)のもとで染色家としての道を歩みはじめた柚木は、挿絵やコラージュなどジャンルの垣根を超え、創作世界を豊かに広げていった。
本展では75年にわたる活動を振り返るとともに、ゆかりのあった都市や地域をテーマに加えて柚木をめぐる旅へと誘うもの。身の回りの「もの」に対する愛着や、日々のくらしに見出した喜びから作品を紡ぎだす柚木の仕事が、変化の時代に大切に慈しみたい「いま」を提示してみせる。
国内外のゆかりの都市をめぐる旅へ
4章にわたって、柚木の創作活動に迫る本展。1章では芹沢銈介に憧れて染色の道に進み、型染の一種である注染(ちゅうせん)技法に取り組んだ作品を紹介する。浴衣や手ぬぐいなど小幅の布を染める技法だった注染を、試行錯誤の末に広幅の布地へと応用することに成功し、生活の洋風化にも対応できる染めもの作品が登場する。
2章では1980年代、版画やガラス絵、立体造形など新たな表現手法に活路を求め、絵本の制作にも取り組むなど、ますます豊かに広がった創作世界が展開される。
3章では「柚木を巡る旅」をテーマに、作家ゆかりの地や柚木の国内外への旅にまつわる作品や資料が紹介される。民藝との出合いの地である岡山県、青春を過ごした長野県、染色修業の起点となった静岡県、憧れの詩人・宮沢賢治の故郷である岩手県、また、制作に大いに影響を与えたインドや、憧れの地パリへの旅を巡る制作などが登場する。
4章では2000年代以降、インテリアショップ『イデー』での展示や、カフェやホテルなど商業空間のための制作など、若い世代との協働に励んだ頃の作品に肉薄。
100歳を超えてもなお、人生を愛し、楽しんだ作家による自由な造形と豊かな色彩が、観る者に元気を与えてくれそうだ。
開催概要
「柚木沙弥郎 永遠のいま」
開催期間:2025年10月24日(金)~12月21日(日)
開催時間:11:00~19:00(入館は閉館30分前まで)
休館日:月(ただし11月3・24日は開館)・11月4・25日
会場:東京オペラシティ アートギャラリー(ギャラリー1・2)(東京都新宿区西新宿3-20-2)
アクセス:京王電鉄京王新線初台駅から徒歩5分
入場料:一般1600円、大学・高校生1000円、中学生以下無料
※障害者手帳をお持ちの人と、その介護者1名は無料。
【問い合わせ先】
ハローダイヤル☏050-5541-8600
公式HP https://www.operacity.jp/ag/exh291/
取材・文=前田真紀 画像提供=東京オペラシティ アートギャラリー
前田真紀
ライター
『散歩の達人』『JR時刻表』ほか雑誌・Webで旅・グルメ・イベントなどさまざまなテーマで取材・執筆。10年以上住んだ栃木県那須塩原界隈のおいしいものや作家さんなどを紹介するブログ「那須・塩原いいとこ、みっけ」を運営。美術に興味があり、美術評論家で東京藝術大学教授・布施英利氏の「布施アカデミア」受講4年目に突入。