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冷静に話し合えない…。子どもが「過去の嫌だったこと」を掘り返してくる“3つの理由”

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冷静に話し合えない…。子どもが「過去の嫌だったこと」を掘り返してくる“3つの理由”

臨床心理士・公認心理師のyukoです。思春期になると親子の衝突が増えやすくなり、喧嘩の中で昔のことを掘り返して責めてくる子もいます。「あのとき言われたことが嫌だった、傷ついた」と言われたらどう言い返せばいいのでしょうか。なぜ過去を掘り返してくるのか、どう対処すればよいのか考えていきます。

昔の嫌だったこと、いつまで言い続けるのだろう

中3の娘と衝突したときに度々、「そもそも小さい頃から習い事や塾を押し付けられて嫌だった。中学受験のとき、うまくいかなかったことを責められたのも傷ついた。」と昔のことを掘り返される。当時は親としてもいっぱいいっぱいで、一方的な言いつけや感情的な態度もあったかもしれない。でも今更掘り返されても困るし、どうすればいいの?

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親が忘れているようなことでもしっかり記憶していたり、過ぎたことをいつまでも忘れられずにいる子がいます。親としては「今更責められても困る」「さっさと忘れてくれないかな」と思うときもありますよね。

ですが、大人と子どもでは記憶の処理の仕方が異なっていたり、親子の間で認識のずれがあったりします。なので「根に持つ、しつこい子」とするのではなく、子どもの傷に向き合っていく必要もあるんです。

なぜ昔の記憶を忘れられないのか、なぜ嫌だった経験を何度も責めてくるのかを知り、対処を考えていきます。

なぜいつまでもひきずっているの?

親からすれば些細な昔の記憶を子どもがいつまでもひきずってるように見えるのは、いくつか理由があります。

1. 大人とは時間の感じ方が異なるから

よく、「年を取ればとるほど時の流れが早く感じる。1年は、5歳なら人生の5分の1だけど40歳なら40分の1のように感じる。」などと言いますよね。
時間は誰にも平等に流れていますが、その感覚は人によって異なります。親にとっては、せわしなく過ぎていく日々のやり取りの一部であっても、子どもにとっては、忘れがたい記憶として明確に残っているものがあるんですね。

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2. 行為をした側と、された側で認識が異なるから

人は自分が発した言葉よりも、他人から言われた言葉の方が記憶に残りやすいとされています。
自分が言葉を発するときは、自身の感情や発話行為にエネルギーが割かれるため記憶に残りにくい一方、人の話を聞くときは内容に集中するため、記憶に残りやすいんですね。
なので親子喧嘩においても「そんなこと言った?」というすれ違いが生じやすいんです。

3. 感情的なインパクトを伴うと記憶に強く刻まれやすいから

賞賛などの嬉しい言葉も記憶に残りやすいですが、それ以上に辛さや怒り、悲しみを伴うネガティブな記憶はより深く鮮明に記憶されやすいもの。
子どもにとって深く傷ついた、とても悲しかった言葉は、月日が流れても消えにくいんですね。

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何が引き金となっているのかを知るのが第一

記憶には貯蔵庫のようなものがあり、似た環境・似た出来事・似た感情体験などによって賦活され、当時の記憶が呼び起されます。
なので、思春期の子が幼少期に親にされて嫌だったことを思い出して怒るのには、何かしらの引き金があると考えられます。

例えば、

・進路について、自分の希望を叶えたいのに親に口を出されてイライラする。→昔、一方的に押し付けられていた嫌な感覚を思い出す。

・何かにチャレンジしようとしているとき、親に「大丈夫?」と心配されてイライラする。→昔、「あなたには無理だと思うからやめておきなさい」と言われたことを思い出す。

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思春期は周囲の言葉に敏感になる時期でもあるので、かつて感じていた嫌な感覚や昔言われた気がするネガティブな言葉も思い出しやすいんですね。引き金となっていそうな言葉や態度を見つけ、刺激しないようにするのが大切です。

親子の間だけで話し合うのが難しいときは、客観的に見てくれる専門家に頼るのもひとつ。
いくら寛容で聡明な親でも、過去の態度を責められたり、感情をぶつけられ続けると参ってしまって当然です。
冷静に話し合うのが難しい場合や、子どもの心の傷が深く対処ができない場合は、スクールカウンセラーなどの専門家に相談するのがよいでしょう。

yuko/臨床心理士・公認心理師

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