“幻の道道”チョボチナイロード 通れるのは1年に1か月だけの「未知の世界」
1年のほとんどが通行止めという「開かずの道道」が人気スポットになっています。
北海道東川町の道道1116号線。
何が人を惹きつけるのでしょうか。
作業員の「開けます」の声とともにゲートが開き、11か月間続いた通行止めが解除されました。
東川町の道道1116号線、通称『チョボチナイロード』です。
10分ほど山道を走ると、目の前に大雪山系の樹海と、秋色の上川盆地が広がります。
利用者からは「通行期間の短いプレミア感。チョボります」と喜びの声が聞かれました。
1年のうち、通行できるのはわずか1か月ほど。
「幻の道道」に魅せられた人たちを深掘りします。
東川町にあるゲストハウスに、朝から続々とライダーたちが訪れました。
「ちゃんと着ていますよ!」と話すライダーの皆さんは、道道の標識がプリントされた、おそろいのTシャツを着ていました。
彼らは「道道1116号線」を愛する道路ファンたちです。
道道1116号線は、旭岳のふもとの忠別ダムと東川町の郊外を結ぶ、全長12キロの道路です。
観光地を通るわけでもない、普通の道道ですが、ユニフォームを作るほど「推し活」される理由は何なのでしょうか。
1年に1か月…そのワケは
道内外から訪れる利用者たちは「開いてる期間が短い」「期間限定っていうのに弱い」「未知の世界ですね」と口々に話します。
実はこの道路…「道道」なのに1年に1か月しか通行できない、つまり裏を返せば1年に11か月間は通行止めという「開かずの道路」なのです。
旭岳の麓とあって冬は積雪が多く、春から夏にかけては、大量の雪解け水で、地すべりが起きやすくなります。
そのため、地下水の水位が下がる秋の1か月間だけ開通する「幻の道道」なのです。
このレアさに着目したのが、ゲストハウスのオーナー岡本淳さんと、北海道旭川市の写真家、小原信好さんです。
旅人宿「ゆう」の岡本淳さんは「『チョボチナイ』という変わった地名で、生活道路でもすごい道路でもないが、無駄さ加減もよさのひとつ」と話します。
4年前、小原さんが撮影した写真がガイドマップに掲載されると、「幻の絶景」として評判に。
毎年、開通期間には全国から観光客が訪れるようになりました。
8月22日、実に318日ぶりに開通し、待ちかねたライダーや道路ファンが「走り初め」しました。
愛知県から訪れた利用者は「すごくいい景色。1~2か月しか開かない道に来られるなんて、すごい幸運」と嬉しそうです。
「道道」は北海道の道路。地元の人にも親しまれています。
「今年は「朝チョボ」をがんばる。朝チョボチナイ!」
美瑛町で看護師として働いている女性は、毎朝この道路を走って通勤する「朝チョボ」が、とっておきのルーティンです。
「結婚して子どもを産んで子育て中はバイクから離れたが、6年前にスーパーカブにたどり着いた。楽しみな道、元気をくれる道なんです」
北海道の担当者は、「旭岳や天人峡温泉、美瑛町の白金温泉などにアクセスできることで、新たな観光ルートを作ることが目的。この道路はその路線の一部です」と説明しています。
旅人宿「ゆう」の岡本淳さんは「何かを惹きつける場所。ゆるゆると集まって景色を楽しんで、事故が起きなければ僕は何より」と話します。
大雪山系は、例年9月後半に初雪が降るので、10月上旬にはこの道は閉鎖されています。
2024年は8月22日に開通して10月10日に閉鎖、2023年は9月7日に開通して10月12日に通行止めでした。
2025年も10月上旬までとみられています。
文:HBC報道部
編集:Sitakke編集部あい
※掲載の内容は「今日ドキッ!」放送時(2025年8月28日)の情報に基づきます。