柴咲コウ『兄を持ち運べるサイズに』インタビュー。思いは人それぞれ、だからこそ——いろんな家族の形に寄り添う作品です
最近、家族に会っている人もそうでない人もつい家族を思い出し、愛しくなる……。映画『兄を持ち運べるサイズに』は話題作。ここでは主演の柴咲コウさんにこの映画で伝えたい思いを詳しく伺いました。
柴咲コウ
8月5日生まれ、東京都出身。俳優として、近年では映画『蛇の道』(24年)、映画『でっちあげ』(25年)など数多くの作品に出演。2018年には環境省より「環境特別広報大使」に任命されるなど、多岐にわたり活躍している。
家族に対して何らかの思いを抱えている人にこそ見てほしい
——映画『兄を持ち運べるサイズに』に主演された柴咲さん。タイトルからインパクトのある作品でしたが、最初に出演のお話があったときどのように感じられましたか。
柴咲 『湯を沸かすほどの熱い愛』などで知られる中野量太監督の作品。タイトルも長くて中野監督らしいなと思いました(笑)。脚本を読んでみると家族の深い物語で、どんな方でも共感したり、考えさせられたりする部分があるのではと思いました。兄を失った主人公家族の4日間の物語ですが、肩肘張らない実直な日々が描かれているなと感じました。
——今作は人気エッセイストの村井理子さんの作品が原作で、柴咲さんが演じた理子は村井さんがモデルでした。実在する人を演じるにあたり意識したことはありますか?
柴咲 村井さんご本人から話を伺える機会を作っていただいたことが大きかったです。それ以外にも監督が出演者や村井家の方々と話すお茶会の場を作ってくれていて。きちっと役作りして役にハマるというよりは、自分の中から出てくるナチュラルさを大切にした方が良い作品なのだと感じて演じました。
——皆さんの自然体の演技が印象的でした。共演者の方との思い出はありますか。
柴咲 日常の延長線のような感覚で穏やかな時間を過ごせる現場でしたね。兄役のオダギリジョーさんはやはり存在感があり、演技には「あ、そうきたか」という驚きがありました。ひさびさの共演で、とても刺激がありましたね。兄の元妻・加奈子ちゃんを演じた満島ひかりさんとは、役の話というよりはプライベートの話で盛り上がったのが印象的です。私より年下だけどとってもしっかりしている方で、自己管理能力が高いなと感じました。いろいろと相談を聞いてもらったりもしましたね。
——家族がテーマであり、人をどう看取(みと)るかという大きな問題も感じさせられる作品。作品を通して、どんなことを伝えたいでしょうか?
柴咲 まとめるのはなかなか難しいですね。家族の在り方は人それぞれ。すごく仲の良い人もいれば、疎遠な人もいるでしょう。でも、だからこそ見る人、それぞれの「家族感」を映し出してくれる作品なんだと思います。自分の家族について他人には触れられたくない、見せたくないという人ほどこの作品は刺さるかもしれませんね。そういう人にも寄り添う作品で、家族に対して何らかの思いを抱えている人にこそ見ていただけるとうれしいです。
料理のアイテム探しで、合羽橋を歩きます!
——今回の映画はロードムービー的な描写も多く、舞台となった多賀城市などが印象的に映し出されていました。柴咲さんは東京ご出身ですが、東京で好きな街はありますか?
柴咲 私の地元は池袋の方なんですが、最近は全然行ってないので、どんな風になってるのかなというのは気になります。昔から大きく変わっていますよね。あと、東京の街というと合羽橋ですね。
——合羽橋!
柴咲 年末におせち料理を作る前などに、アイテムを探しに行きます。合羽橋は街自体を歩くのも楽しいですよね。
——調理器具のお店がたくさんあって、面白いですよね。
柴咲 そうですね、調理器具を買うのが好きなんです。合羽橋はやはりお店がいっぱい並んでいるのが魅力的。あの中から掘り出し物を探すのが楽しいんです。
——どんなものを購入されましたか?
柴咲 鬼おろしを買いました! “普段買わないけれどあったらいいな”が揃うんです。今は忙しくて以前より料理ができないのですが、合羽橋を歩くのはいいですよね。かなりの距離を歩くし。
——料理好きにとってはたまらない街ですよね。柴咲さんのプライベートな一面が垣間見れてよかったです。素敵な合羽橋情報があればぜひ教えてください!
2025年11月28日(金)公開 『兄を持ち運べるサイズに』
兄(オダギリジョー)の死を機に、理子(柴咲コウ)と兄の元嫁・加奈子(満島ひかり)、その娘・満里奈(青山姫乃)、兄と暮らしていた息子・良一(味元耀大)が再会。もう一度家族の絆を思い直す、4人のてんてこまいな4日間が始まる。
脚本・監督:中野量太 配給:カルチュア・パブリッシャーズ
取材・文=半澤則吉 撮影=佐藤侑治
スタイリスト=柴田 圭 ヘアメイク=SHIGE(AVGVST)
『散歩の達人』2025年12月号より
ピアス 2万2000円(JUSTINE CLENQUET / THE WALL SHOWROOM)
半澤則吉
ライター
1983年福島県生まれ。ライター、朝ドラ批評家。町中華探検隊隊員。高校時代より音楽活動を続けており、40歳を迎えた今もライブハウス、野外フェスに足を向けることも多い。