【産後ケア】すこやかな心とからだで子育てを 先輩ママに体験談を聞きました!
出産を終え、ようやく会えた愛らしいわが子の姿を目の前にすると、妊娠期間に感じたさまざまな不安や悩み、想像を超えた陣痛、出産の大変さは吹き飛んで、よろこびが湧き上がってきます。
とはいえ「出産」という大仕事を終えたママのからだは、ママ本人が感じる以上にダメージを受けており、心身ともに不安定な状態です。
公益社団法人 日本産婦人科医会では、産後3週間以内に10〜15%の産後ママが「気分の落ち込み」「楽しみの喪失」「自責感」「自己評価の低下」といった症状があらわれる「産後うつ」に罹患するというデータのもと、産後ケアでメンタルヘルスを保つことが重要だと提唱しています。(※1)
そんな中、産後ケア事業を実施する自治体数は年々増加傾向にあります。こども家庭庁の調査によると、令和4年度は1462もの自治体が産後ケア事業を実施するなど、出産直後のママと子どもに対する心身のケアや育児サポートや支援の大切さが見直されている状況です。(※2)
ママが心身ともにすこやかな状態で育児ができることが大切だと考えるミキハウスでは、産後ケアの実態を知るために、お子さまがいる女性と第二子以降を妊娠中の「ミキハウスクラブ」メンバーを対象にアンケートを実施しました。先輩ママたちの生の声から見えてくる産後ケアの現状と、その必要性を考えていきたいと思います。
目次「産後ケア」ってなあに?先輩ママの「産後ケア」の利用状況出産後のママのからだとすごし方親子ですこやかにすごすために
「産後ケア」ってなあに?
産後ケアは、保健師や看護師、助産師、臨床心理士などの専門家によって、ママの身体的・精神的なケアをすることで育児をサポートするもの。産後の心身の回復だけでなく、赤ちゃんとの触れ合い方のアドバイスを通じて親子の愛着形成を図る目的もあります。
産後ケア事業は各市区町村が地域の医療機関と連携して行っており、利用料金や期間、回数はそれぞれの自治体によって定められています。
提供されるサービスの内容はさまざまありますが、大きく分けると以下の3タイプに分かれています。
・宿泊型(ショートステイ)――1日を通して母子の様子を見てもらえる。ゆっくり睡眠が取れるのもメリット
・日帰り型(デイケア)――個別もしくは集団でサービスが提供される。集団の場合はママ友とのコミュニティ形成にもつながる
・訪問型(アウトリーチ)――相談したい内容に合わせて専門家が自宅を訪問してくれる
また、おおむね以下のようなサポート・支援が「産後ケア」として提供されています。
・ママの身体的ケア(睡眠時間の確保、食事の提供、マッサージ、骨盤ケア)
・ママの心理的ケア(カウンセリング)
・授乳指導(授乳や搾乳の指導・アドバイス、乳房マッサージなど)
・育児相談・指導(沐浴・オムツ替え・だっこなどのアドバイス)
・生活相談・指導(栄養管理、体操やエクササイズなど)
都市部近郊には有名人の利用で話題になるような民間の産後ケア専門施設などもありますが、身近で気軽に利用できるのはやはり自治体が行う産後ケア。だれもが等しく利用できる「ユニバーサルサービス」なので、産後ママであれば気兼ねなく利用してほしいものです。
先輩ママたちの「産後ケア」の利用状況
では、先輩ママたちはどのように産後ケアを利用しているのか、その実情を見てみましょう。
アンケートによると、産後ケアを「受けた」または「受ける予定」「次回は受ける」と回答した方は、全体の35%程度。「受けなかった」「受ける予定はない」と回答した方が半数を超え、産後ケアの利用率は思いのほか低いことがわかります。
回答者のコメントから見えてくるのは、産後ケアサービスの周知不足や申し込みや予約の煩わしさ。サービス内容や金額の地域差についてのコメントも多く寄せられました。
“産後ケアについて知る機会がなかったので、自分から探すのではなく発信されてくるシステムだといいなと思う”“利用までの手続きがいろいろあって大変だなと思った。もう少し気軽に利用できるといいなと思いました”“自治体によってサービスの充実具合や補助金等も変わってくるので、全国で統一してもらえたら利用しやすいのにと思いました”“市町村の補助もあったが「半日すごすのに5000円か…」と思うと踏み込めなかった。金額が安ければ必ず利用したと思う”“住民票のある場所だけでなく、里帰り先でも自治体の援助を受けながら利用できたら理想的だと思う”“首都圏にあるような産後ケア専門施設が地方にはない。デイユースでもいいので月齢が大きくなっても利用できる施設が増えて欲しい”
24時間体制の赤ちゃんのお世話がはじまると、ママは自分の疲れや心やからだの不調はつい二の次にしてしまいがちです。ですが、専門家のサポートを受けることは決して贅沢や甘えではないと思います。
続いて、どのような産後ケアを受けたかをお尋ねしました。
この結果からは、専門家による産後ケアと同時に、家族からのサポートがママを支えていることがわかります。パートナーをはじめとした家族の助けは心強いものですが、里帰りができない人、親の手助けを受けられない場合もありますし、そもそもパートナーが満足いく育児休暇が取得できるとも限りません。
核家族化が進んだ現代の育児では、ママは孤独になりがちです。赤ちゃんのすこやかな成長・発達のためにも家族をはじめ、医療スタッフや地域の保健師など、専門家の手を上手に借りながら、ママが産後ケアにしっかりと向き合うことが大切でしょう。
出産後のママのからだとすごし方
出産後のママのからだは大きなダメージを受けています。特に出産後からおよそ6〜8週間を産褥期(さんじょくき)と呼びますが、これは、ママのからだが妊娠前の元の状態に戻るまでの期間。そんな時こそ産後ケアを活用すれば、ママの肉体的・精神的な負担も少しは軽減できそうです。
「産後ケアで最も重視するポイント」についての質問でも、「肉体的回復」「精神的サポート」をあげるママが圧倒的でした。
子宮収縮の痛みが強かったり、悪露(おろ)が続いたり、会陰切開や帝王切開の痛みや便秘、腰痛などに悩まされるなど、とにかく肉体的なつらさが重なる産後直後は、できるだけからだの回復を優先したい。とはいえ赤ちゃんから目が離せないこの時期は、果てしなく続くお世話で精神的な負担も相当なものです。
「もっと充実していてほしいと思う産後ケアのサービス」について尋ねた質問へのコメントからは、肉体的・精神的なつらさを抱えながら子育てをする産後ママの切実な状況が見えてきます。
“睡眠不足と肉体的にボロボロだったので、ゆっくり寝られる時間やマッサージや骨盤矯正など産後の体を労わるサービスが欲しいと思いました”“とにかくゆっくり休ませてくれて食事も栄養満点のものを出してもらいたい。育児の不安なことを相談したい”“睡眠をとることができ、活動と休息のバランスをしっかり取り、これからの育児へのメンタルを整えられるといいと思う”“体力を回復させることに専念できる場があればうれしい。値段も安く、赤ちゃんを預けられて衣食住が整っている施設があればいい”“食事の用意や家事全般をやってくれるサービスがあったらいい”“兄弟がいても利用でき、泊まれる施設があると、ゆっくりできていいなと思う”“ケアを受けられる期間や回数が増えたらいいと思う”
慢性的な睡眠不足に加えて慣れない育児に対する不安、小さな命を守らなければならないという責任の重さや湧き上がる孤独感に、弱音を吐いてしまいたい気分になることも珍しくないと思います。さらに上のお子さんがいる場合にはその子のお世話も加わります。ママの“がんばり”だけでは乗り越えられないしんどさを感じるのは当然なのです。
親子ですこやかにすごすために
今回のアンケート結果からは、産後ケアを利用率は決して高くはないものの、利用した人は「利用してよかった」と感じていることが見えてきます。また、これから出産を迎える人にも「絶対に使ってほしい」というコメントがたくさん寄せられました。
一方、「自身の産後ケアについて、十分な内容・サポートだった」と感じていない人の割合は、どちらともいえないという人を含めると約41%。実際の産後ママにとってはまだまだ足りていない面もあるのが実態かもしれません。
先輩ママたちからはこのような意見が。
“生まれた赤ちゃんと一緒に産婦人科に数日泊まれるサービスがありますが、何かに困っている人しか利用できないのかなと思い、利用しませんでした。リフレッシュのために泊まれるシステムがあればうれしいし、ぜひ利用したいです”“宿泊型の産後ケア施設をもっと気軽に使えるようになって欲しい。 預けると「そんなに大変?」みたいな目でみられることが辛い”“子連れで宿泊できる施設がもっとリーズナブルな金額で利用できるとうれしい”
上記のコメントにも表れているように、産後ケアサービスについての情報がママに十分に届いていないこと、パートナーや家族といった周囲の人の産後ケアに対する理解が不足していること、金額面のハードルを下げることも、今後産後ケアが広く活用されていくために解決すべき課題だと考えられます。
産後ママが置かれている環境や状況はさまざまですが、こうした要望を丁寧に拾い上げながらサービスを充実させていけば、だれもが産後ケアを特別なことと感じずに、気軽に取り入れられるようになるのではないでしょうか。
最後に、これから出産を迎えるママへ向けて、先輩ママたちからの温かいアドバイスもたくさん寄せられました。その中から一部をご紹介します。
“出産前はあんなに妊婦健診に通っていたのに、産後はからだがボロボロにもかかわらず、母のからだを診てもらう機会があまりにもないです。人生でこんなに命がけで取り組むことなんてなかなかないので、お金もかかりますが「受けて当然なんだ」というくらいの気持ちで、周りに感謝して、信頼できるところに赤ちゃんを預けて産後ケアを受けるのが、育児のいいスタートにつながると思います”“産後のからだは自分が思う以上にダメージを受けています。自分には不要とは思わずに、どんどん使いましょう。私も最初緊張しながら予約の電話をかけた記憶がありますが、1回行ってみたら快適で、またすぐ行きたくなりました”“「産後は安静に」と言われますが、なかなか現実的ではありません。しかし、頼れるものには頼り、自分のからだと赤ちゃんのことだけを考えて生活するよう心掛けてほしいです”“楽をしているなどという後ろめたい気持ちはまったく持たなくていい。利用することこそが子どものため、母のため”“出産も産後の母体も育児も赤ちゃんも千差万別です。1つの情報に捉われることなく、色々な物や人に頼ることをお勧めします”
“寝られる時は寝てください。子が寝るたびにSNSで調べまくっていましたが、そうすると親は寝られません。心配なことは何か一つのもの(私の場合は本)で調べた方がいいです。睡眠不足だと何もかもにイライラしてしまいます。睡眠一番!親が元気なのが一番!”“辛くなる前にどんどん人に頼ったり、産後ケアを利用したりしてほしい。自分がやらなきゃと思い詰めないで、赤ちゃんと一緒に少しずつ頑張りすぎないで毎日をすごしてほしい”“産後うつは誰でもなりうる。精神的に追い込まれないように気分転換が大事”“助けて欲しいときは声に出すこと。周りに頼ること。助けてもらうこと”“産後ケアは身体的にも精神的にもとても救われるのでおすすめです!特に初めて出産される方は、母乳のことなど親身に相談ができる助産師さんのサポートを受けられるのでおすすめです!”“産後はボディケアと感情管理が重要です。骨盤矯正は早めにした方がいいと思います”“赤ちゃんが元気に生きていれば、それ以外の家事なんてどうでもいい。手を抜いて自分が休める時間を確保してください”“産後はからだもボロボロ、精神的にも疲れるので本当に無理しすぎず、頼れるところに頼りまくってすごしてほしい。 迷惑だからとか考えずに周りの人を巻き込んだらいいと思います。 後から思い返せばそんな事もあったなぁと思えるので、しんどい時もありますが一緒にがんばりましょう!”
現在の産後ケア事業は、それぞれの自治体によってサービス内容が異なっていたり、そもそも受け入れ施設の数も都心部と地方では格差があったりと、すべてのママにとって等しく身近なサービスとは言い難いのが現状です。
まずは産後のママのからだが労わるべき状態であることを、ママも含めすべてのひとが認知し、産後ケアが画一的なサービスではなく、柔軟に対応しながら、ママと子どもを優しくサポートするサービスへと発展していくことを願わずにはいられません。
まずはなにより、この記事を読んでくださったママ、プレママ、そしてご家族のみなさんに、産後ケアの存在と大切さを感じていただき、どういった産後ケアが受けられるのかを調べていただきたいと思います。子どものすこやかな育ちは、ママのすこやかな心とからだがあってこそ。声をあげづらいと思わず、胸を張って自分を労わってくださいね。
※1 公益社団法人 日本産婦人科医会HP
※2 こども家庭庁 産後ケア事業について