「住み続けたい街1位」市電 “西線11条”エリア!住民だけが知っている人気のワケ
札幌市電沿線の「西線11条」エリアが、「SUUMO住民実感調査」の「北海道内で住み続けたい街」ランキングで1位に輝きました。また、西線11条を含め、市電沿線エリアが20位以内に8カ所もランクインしています。地下鉄沿線の方が便利そうに思えますが、なぜ市電沿線が人気なのでしょうか? 理由を探りました。
この調査は、住宅情報誌「SUUMOマガジン」が道民3万8275人に聞き、2月に発表しました。今回はその中の「住み続けたい街ランキング」に着目。「住みたい街ランキング」とは違い、「実際に住んでいる人が気に入り、離れたくないと考えている」指標といえるからです。
廣岡俊光アナウンサーが現地で取材しました。
西線11条の停留場周辺を見渡すと、特に目立った建物はありません。マンションが多く、市電通から細い通りへ一歩入ると一戸建てや小さなアパートもあります。商店がちらほら見えますが、大型商業施設は見当たりません。
「何もない…。なんで1位なんだろう?」(廣岡アナウンサー)。歩いてみても、1位の理由は分かりません。そこで、実際に住んでいる人に話を聞いてみました。
「家賃が安い」
「円山や地下鉄沿線と比べると、家賃はそこまで高くない」(西線11条エリア在住歴15年の人)
中央区のカップル・ファミリー向け賃貸の相場を見ると、地下鉄の円山公園駅やバスセンター前駅、すすきの駅などのエリアでは10万円を超えますが、西線11条エリアでは9万3000円と安いことが分かります。再開発が進んで家賃が上がっているエリアと比べ、市電沿線の家賃の相場は比較的安定している傾向があります。
「市電が便利」
「市電があるので、街なかへ出やすいのが魅力。学校へ行くのにも便利」(在住17年の人)
札幌市電は1918年に開業し、市民の足として長年活用されています。2015年にはすすきの~西4丁目間の開通でループ化され、さらに利用しやすくなりました。
平日の午前8時台には、3分に1本のペースで運行しているため、通勤や通学にとても便利です。「市電は5分も待てば来る。バスに比べて、時間を気にしなくていい」(在住20年以上の人)
隣の停留場までの間隔が短く、歩く負担が軽減されるのもポイント。家のすぐ前に市電の停留場があるような感覚です。
「静かで快適」
「大きなトラックが通らないので騒音が少ない。除雪がしっかりと入るので、冬も快適」(在住15年の人)
市電の架線があることと、停留場の横の道幅が広くないため、大型車両があまり通りません。また、市電を円滑に運行させるため、除雪が行き届いているのも特徴です。
「自然が多い」
「山や川が近くて、街なかでも自然を感じられる」(在住25年の人)
藻岩山を背景に市電が走る、のんびりと落ち着いた住環境。藻岩山だけでなく、東側に中島公園や豊平川があって自然に恵まれているのも、このエリアの人気の大きな理由です。市電の停留場にキタキツネが現れることもあるそう。
「子育てしやすい」
「小さい子が遊べる公園が多く、児童館も近い。市電で中央図書館にも行ける」(在住15年の人)
さまざまな施設が整い、中央区でありながらごちゃごちゃしておらず、穏やかな環境で子育てできるとして人気です。中学校や高校も充実しており、教育のためにこのエリアへ移住してくる人も多いようです。
「店が多く、買い物しやすい」
「スーパーやドラッグストアも近いし、銀行や郵便局もある。この辺りが大好きです」(在住22年の住民)。生活に欠かせない店や施設が、狭いエリアに密集しています。
コロッケ、きんぴら…地元で愛される総菜店
廣岡アナウンサーが見つけたのは、市電沿いの総菜店「竹内商店」。注文を受けてからほかほかのごはんを詰める弁当が人気で、「地元の人がよく、お昼にお弁当を買ってくれます」(竹内商店)。アジフライやカニクリームコロッケ、肉だんご、煮しめ、きんぴらなど、ずらりと並ぶ総菜の中から好きな物を選んで詰めてもらえるのも、地元で愛される理由の一つです。
竹内商店
住所:札幌市中央区南11条西14丁目
「個人経営の飲食店が多く、この街ならではの食事が楽しめるのも魅力」との声もあり、実際に街を歩いていると、小さな飲食店が多く、地域の人たちに親しまれていることが分かりました。
在住4年の住民は「お散歩していて小さなお店を見つける楽しみもある」と話し、定食を味わえる店「ゆのん」を薦めてくれました。
築95年の古民家で心安らぐ定食
廣岡アナウンサーが早速行ってみました。
定食の「一汁三菜」(1000円)は、新鮮野菜をふんだんに使った一品料理や、大豆などが入った日替わりの玄米、みそ汁などを楽しめます。野菜は、農家も営むオーナーが栽培した物。ゴボウはザクザク、シャキシャキとしたかみ応えで、廣岡アナウンサーは「『土の中で元気に育ちました』というエネルギーを感じます」とおいしそうに食べ進みます。
毎日食べに来る人がいるというのも納得。地元の人たちが愛してやまない定食です。
この店の飛鳥遼子さんは「『ここのごはんで生きている』と言ってくれる人も多いです」と笑顔で話します。
飛鳥さんは、子育てに専念するためにこの店を一度離れましたが、このエリアや店の居心地が良く、戻ってきて再び働いています。「住みやすく、ごちゃごちゃしたところから少し離れてホッとできる場所。長く住んでいる人が多く、人の温かさもあります」と話します。
ゆのんのオーナーが現役を退くため、飛鳥さんは4月から新オーナーになります。夫がイタリア料理のシェフで、ゆのんもイタリア料理の店に生まれ変わる予定ですが、「一汁三菜」は変わらず提供するそうです。
ゆのん
住所:札幌市中央区南14条西12丁目
じんわりと感じる「言葉にできない、居心地の良さ」
廣岡アナウンサーは「何かがあるから住みやすいということではなく、この街の雰囲気の良さ、居心地の良さが愛される理由だと思います。言葉にするのが難しいけれど、何だか分かった気がする」と、住み続けたい理由を肌で感じたようです。
ランキングを発表した「SUUMOマガジン」は49年間の歴史に幕を下ろし、今後はネットで情報提供を続けます。お部屋探しの際に、ぜひ活用してみてはいかがでしょうか。