覚醒した侍ジャパン藤平尚真は何が良くなったのか?データ分析で分かった恐るべき進化
強化試合チェコ戦から9者連続空振り三振
第3回プレミア12に出場している野球日本代表「侍ジャパン」の藤平尚真投手(26=楽天)がにわかに脚光を浴びている。
10日の強化試合チェコ戦から13日の1次ラウンド・オーストラリア戦(ともにバンテリンドーム)、15日の同・韓国戦(台北ドーム)で3試合とも3者連続空振り三振。合計で9者連続空振り三振を奪うパーフェクト投球を見せているのだ。
藤平は今回が侍ジャパン初選出。プロ入り8年が経過した右腕がようやく覚醒の時を迎えている。
横浜高時代は履正社・寺島成輝(元ヤクルト)、花咲徳栄・高橋昂也(現広島)、作新学院・今井達也(現西武)とともに「高校BIG4」と呼ばれ、2016年ドラフト1位で楽天に入団。1年目に3勝、2年目に4勝を挙げたが、その後は成績を伸ばせず、背番号は19から46に変わった。
甲子園で投げ合ったライバル・寺島はすでに引退。プロ通算10勝の藤平もそろそろ第二の人生を考えてもおかしくない状況だった。
しかし、中継ぎに転向した今季は47試合に登板して1敗1セーブ20ホールド、防御率1.75。46.1投球回で58三振を奪い、突如輝きを取り戻した。
プレミア12での活躍はシーズンの延長線上にあるだけだが、やはり楽天と侍ジャパンでは注目度が違う。SNSの投稿やメディア露出も一気に増えた。一体どこが良くなったのか、データから分析してみたい。
大幅アップした奪三振率は佐々木朗希より上
まず下の表を見てほしい。昨季は先発、今季は中継ぎだが、イニング数は昨季が50.2回、今季が46.1回とほとんど変わらないため比較しやすい。
防御率は昨季の4.44から今季は1.75、K/9(奪三振率)は7.46から11.27、BB/9(与四球率)は4.8から2.33、奪三振と与四球の比率を示すK/BBは1.56から4.83と全て良化している。
K/9(11.27)はパ・リーグの40イニング以上投げた投手でソフトバンク・ヘルナンデス(13.5)、オリックス・山下舜平大(11.67)に次いで3位。
ソフトバンクの剛腕・杉山一樹(10.91)やメジャー挑戦を表明したロッテ・佐々木朗希(10.46)、元BIG4の西武・今井達也(9.71)よりも高いのだ。
ストレートの平均球速は3.7キロアップ
変化が最も顕著に表れているのはストレート。昨季と今季を比較したのが下の表だ。
ストレートの平均球速は昨季の146.9キロから150.6キロと3.7キロもアップ。スタミナを計算して加減しないといけない先発と、目一杯投げられる中継ぎの違いはあるとはいえ、相当速くなっている。
速くて力のあるストレートは打者も打ち返すのが難しい。被打率は.348から.176、被本塁打も3本から1本に改善されている。
空振り率も8.7%から9.8%と良化しており、投球割合を49.5%から62.0%に増やしている。今の藤平にとっては、ストレートが最大の武器なのだ。
フォークの空振り率は倍近くに上昇
次に変化球も見ていこう。
大幅に改善されているのがフォーク。空振り率は昨季の12.4%から24.6%と倍近くに上昇している。
投球割合も20.0%から32.5%に増えており、今季はほぼストレートとフォークだけで勝負していたことが分かる。
逆にスライダーは16.3%から0.4%に激減、カーブも14.3%から5.1%に減少している。
やはりストレートがキレているからこそフォークも活きるのだろう。もちろん、本人の努力の賜物ではあるが、思い切り腕を振れる中継ぎへの配置転換も奏功したのかもしれない。
ストライクとボールの割合が逆転
最後に下の表を見てほしい。
昨季はストライクゾーンが44.9%、ボールゾーンが55.1%だったが、今季はそれぞれ52.1%、47.9%と割合が逆転。ストライク率も63.8%から67.8%に上昇している。
つまり今季はストライクゾーンで勝負できているのだ。だからこそ与四球も大幅に減り、安定感を増しているのだろう。
また、ゴロは49.1%から38.1%に減った一方、フライは40.4%から54.3%に増えている。カーブやスライダーの曲がり球をほとんど投げていないことも影響しているだろうが、それだけストレートが伸びているためバットがボールの下を叩いていると見ることもできる。
プレミア12は24日の決勝まで長い道のりのためブルペン陣の活躍は欠かせない。優勝に向けて、ついに覚醒した藤平の出番は今後さらに増えていきそうだ。
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記事:SPAIA編集部