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なぜキャベツ値上がり?なぜ極端な暑さが?いろんな暮らしの変化には、共通の背景があった

Sitakke

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キャベツの値段が平年の3倍以上!?とても手が出せない…

この冬は野菜の高騰がニュースでも話題となりましたね。私自身も必要最低限の野菜しか買うことができませんでした。小分けのカット野菜にお世話になった方も多かったのではないでしょうか?

ここまでキャベツの値段が高くなった背景には、「天気」が関係しているんです。

暮らしにさまざまな影響を及ぼしている「地球温暖化」。
HBCウェザーセンターの気象予報士・篠田勇弥が、北海道では何が起こっているのか?これから何が起こるのか?連載企画でお届けします。

より影響が身近な暮らしに迫ってきた今、何ができるのか…。一緒に考えてみませんか?

連載「気象予報士コラム・お天気を味方に」
特別企画:地球温暖化と北海道の話~「日本の気候変動2025」を紐解く~

この記事の内容
・地球温暖化、実は暮らしに大きく影響
・日本の気候の「未来予想図」
・そもそも、地球の温度って何で決まるの?
・未来は…こんなことまで起きてしまう?!

キャベツの値上がりはなぜ?北海道も例外ではない

気象予報士として日々の天気や気温と向き合う中、ここ数年は、天気や気温の移り変わりに明らかな変化が起きているのを感じています。

ことし1月のHBC「今日ドキッ!」でも、キャベツは1キログラムあたり534円と、平年比で約3.3倍の価格動向となったとお伝えしました。

キャベツの値上がりは、主要産地の愛知県や千葉県の天候不順(去年の記録的な残暑や干ばつ)の影響で、生育が順調に進まなかったことがあると言われています。

北海道も例外ではありません。
4月は北海道全体で平年の2倍近い雨が降ったことで、「畑が乾かず、農作業を進めることができない」という農家の方々の声も聞いています。

近年の気候変動は、私たちの暮らしに直結する大きな問題となりつつあります。

日本の気候の「未来予想図」

そんな中、文部科学省と気象庁は3月末に、気候変動についての報告書「日本の気候変動2025-大気と陸・海洋に関する観測・予測評価報告書-」を発表しました。(以下、「日本の気候変動2025」)

この報告書は、日本の気候の「未来予想図」とも言える内容です。

2020年12月に公表した「日本の気候変動2020」をもとに、新たな科学的知見と最新の観測データを反映し、気温や降水量、台風、海面水位からオホーツク海の流氷に至るまで、これまでの傾向と将来の予測が書かれています。

さらに、札幌管区気象台は、北海道の振興局別にこれらのことに関して、より地域に密着した資料も発行していて、ぜひ道民の皆さんにも知ってもらいたい内容になっています。

そこで、この連載企画で、北海道の地球温暖化の現状と、これからどのような変化が予想されているのかを紹介してきます。

今回は、そもそも地球温暖化がどのように、そしてなぜ進んでいるのかを確認してみましょう。

地球温暖化とは?

地球温暖化とはその名前の通り、人間の活動の影響で、二酸化炭素などの温室効果ガスが増加し、昔(工業化以前)よりも地球全体の気温が上がることです。

地球の気温は、南極の氷床の解析から判明している80万年ほど前から、およそ10万年の周期という、とても長い時間をかけて、暖かい時期と寒い時期を繰り返してきました。

それに対して現在、世界の平均気温はわずか100年程度で0.8度ほど高くなっていて、地球の長い歴史の中でも異例の速さでの気温上昇となっています。

世界平均気温の年平均気温偏差の経年変化(出典:文部科学省及び気象庁「日本の気候変動2025 — 大気と陸・海洋に関する観測・予測評価報告書 —」)

グラフの右側、1990年頃からの気温上昇がいかに速いか、わかりますね。


どうして気温が上がっているの?

そもそも地球の温度は、太陽からやってくる熱と、地球から宇宙に向けて放出される熱のバランスで決まっています。

そして、この熱が宇宙にすべて逃げてしまわないように、布団のような役割をしているのが大気中にある「温室効果ガス」(二酸化炭素やメタン、水蒸気など)です。

この温室効果ガスは、地球から放出される熱の一部を吸収し、再び熱として地表に戻す性質があります。

人間の影響で二酸化炭素が増え、地球が暖まる

ただ、近年は車や工場、発電、森林伐採など、人間の活動によって、温室効果ガスのひとつ「二酸化炭素」が大量に放出されていて、現在は過去80万年間で前例のない水準まで増加しています。

温室効果ガスが大気中に増えることで、本来宇宙に放出されるはずの熱が地球にこもってしまいます。
その結果、地球全体の気温が上がる、現在の「地球温暖化」につながります。

地球温暖化で何が起こる?

地球全体の気温が上がることで、私たちの身近なところでも、変化がすでに現れ始めています。

例えば、サクラの開花が早まってきているのもその一つです。

そして今後、さらに温暖化が進んだ場合、以下のような変化がより顕著になると予測されています。

・これまで100年に一度の高温と言われていたような極端な暑さが、より頻繁に起こる
・極端な大雨やドカ雪の発生回数が増加する
・台風が、海水温の上昇によって今まで以上に発達する
・海面水位が上がり、低地や沿岸部に影響が出る
・オホーツク海の流氷の面積が減少する

簡単に言えば、これまで私たちが経験したことがないような気象災害が、より頻繁に起こるようになるということです。

そして、急激な気候の変化は人間だけでなく、多くの動植物にとっても住みにくい環境となり、北海道が世界に誇る農業や畜産、漁業など一次産業にも大きな影響を与えるかもしれません。

実は札幌の年間の平均気温は2021年以降、毎年のように過去最高を記録し、過去100年の気温上昇ペースも日本全体に比べて早いことが分かっています。

地球温暖化は「将来の話」ではなく、「現実に起きつつある問題」なのです。

将来的に変わり続ける可能性がある気候の変化について、まずは「知ること」がとても大切だと思います。

次回からは、将来の北海道がどうなっていくのかを、もう少し具体的に掘り下げていきたいと思います。
この記事を読んで、少しでも「地球温暖化」に興味を持ってもらえるとうれしいです。

連載「気象予報士コラム・お天気を味方に」
特別企画:地球温暖化と北海道の話~「日本の気候変動2025」を紐解く~

文: HBCウェザーセンター 気象予報士 篠田勇弥
札幌生まれ札幌育ちの気象予報士、防災士、熱中症予防指導員。 気温など気象に関する記録を調べるのが得意。 趣味はドライブ。一日で数百キロ運転することもしばしば。
HBCウェザーセンターのインスタグラムでも、予報士のゆる~い日常も見られますよ。

※掲載の情報は記事執筆時(2025年5月)の情報に基づきます

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